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小説のおもちゃ箱

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掌編~短編のオリジナル創作小説をまとめました。
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記事一覧

掌編 マスクとハンドル

 十八で免許を取ってから、デートでもハンドルを握るのは私だった。私の恋人になる人はなぜか…

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掌編 物理的手段

 計画停電の夜だった。私は真っ暗な寝室でスマートフォンの画面を光らせていた。メッセージア…

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掌編 沖縄の粉

 私たちのアパートは洗濯物がよく乾く代わりに夏は猛烈に暑かった。去年死ぬ思いをしたので、…

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掌編 カテゴリマスター

 恋愛で悩みがある時、私はYahoo!知恵袋で質問することにしている。みちるを相談相手にしてい…

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掌編 夜のない世界

 部屋から出られるようになった。でも、他の人の中に混じって平然と生きていけるとは思えなか…

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小説 うろんな商い

 砂浜に行ける人は、社長に一人前と認められた人だ。  私が初めて「砂浜に行ってこい」と言…

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小説 ひつじ治療院

 半袖シャツから出た私の腕を、太陽が容赦なく灼く。湿気がないだけましだが、気温はすでに盛夏のそれだった。空の高いところから降り注ぐ光は信用金庫の看板も、砂利が敷き詰められた駐車場も、そこに停まる黒いAQUAをも白茶けさせる。私は目の前のビルに入るべきか入らざるべきか決めかねて、ぼうっと立っていた。脇を走る県道はそれなりに交通量があるが、土曜日なのに歩く人がいないのは幸いだった。こんな片田舎で、見慣れない顔の人間がひとところにじっとしていたら、地元の住民に怪しまれる。逆に、人目

掌編 ライカ

 中学に入るまで、父の仕事でわたしは日本各地を転々とした。同じ日本語なのに少しずつ違う言…

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掌編 マスクの下は

 「内閣総理大臣 ○○○○くん」  総理大臣が野党党首からの質問に対する答弁をはじめてい…

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小説 ビッグデータの活用事例

 子供たちの布団から静かな寝息が立ちはじめても、文音は暗い寝室で横たわったままだった。毎…

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小説 コロナ時代の

 緊急事態宣言が三大都市に出るという時期でも、ティンダーをやっている馬鹿者はうんざりする…

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小説 自転と公転の同期

 待ち合わせ場所として指定された表参道のカフェに着くと、広い店内の一番奥、窓際の明るいソ…

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掌編小説 NORAD Tracks Santa

 はじめに異変に気付いたのは、12月23日の追跡開始を心待ちにしていた、北米に住む男の子…

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小説 もう献立に悩まない

 今日は一月七日。七草粥の日ですね。ご存じ、お節で贅沢な料理続きだった胃に優しいものを食べるという習慣ですが、皆さんはもう召し上がられたでしょうか?  さて、毎日の献立があらかじめ決められるようになって半年が経ったわけですが、生産現場ではこの大変革をどう受け取っているのでしょうか。今日は県内の養鶏場にお邪魔しています! 養鶏場の経営者の横田さんです。おはようございまーす! ――おはようございます。  ここでは約一万羽の鶏を飼育しているということです。従来、養鶏といいます