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十八で免許を取ってから、デートでもハンドルを握るのは私だった。私の恋人になる人はなぜか…
計画停電の夜だった。私は真っ暗な寝室でスマートフォンの画面を光らせていた。メッセージア…
私たちのアパートは洗濯物がよく乾く代わりに夏は猛烈に暑かった。去年死ぬ思いをしたので、…
恋愛で悩みがある時、私はYahoo!知恵袋で質問することにしている。みちるを相談相手にしてい…
部屋から出られるようになった。でも、他の人の中に混じって平然と生きていけるとは思えなか…
半袖シャツから出た私の腕を、太陽が容赦なく灼く。湿気がないだけましだが、気温はすでに盛…
中学に入るまで、父の仕事でわたしは日本各地を転々とした。同じ日本語なのに少しずつ違う言葉、違うブーム(引越し前の小学校ではポケモンがものすごく流行っていたのに、翌週次の場所に行くとカービィが流行っていたりした)、そして総入れ替えされるクラスメイト。わたしは、おそらくまたそう遠くないうちに別れることになるだろう子供たちの顔を、一瞬で覚えて未練なく忘れるという特技を身に付けた。顔は覚えても、一定の距離を持って付き合った。別れるときに悲しくなるから無意識に防御したというようなこと
「内閣総理大臣 ○○○○くん」 総理大臣が野党党首からの質問に対する答弁をはじめてい…
子供たちの布団から静かな寝息が立ちはじめても、文音は暗い寝室で横たわったままだった。毎…
緊急事態宣言が三大都市に出るという時期でも、ティンダーをやっている馬鹿者はうんざりする…
待ち合わせ場所として指定された表参道のカフェに着くと、広い店内の一番奥、窓際の明るいソ…
はじめに異変に気付いたのは、12月23日の追跡開始を心待ちにしていた、北米に住む男の子…
今日は一月七日。七草粥の日ですね。ご存じ、お節で贅沢な料理続きだった胃に優しいものを食…
カヤが、本当に俺を? これはウミヒコが幾度となく願い、夢にも見た未来であったはずだ。今やウミヒコの腕の中にいるカヤの体温をはっきり知覚できるのに、まるで現実味がない。それは、荒れ狂う海に囲まれているからだろうか。 ウミヒコはこのままカヤの言う通りにしようと思おうとした。しかし、黒いもやもやとしたものが消えない。ウミヒコは避けてあった木の枝を火の弱まった薪にくべた。 「海のやつらを欺くには、少しでも長く燃えていた方がいいだろう」 ウミヒコの言葉に、カヤはぱっ