鬱は落とし穴のように
2年ぶりに鬱になった。
今回の人生で、3回目である。
27歳から31歳の女の大事な時期を
コロナと鬱に奪われている。
ふざけるな。
1回目は2020年の3月。
いわゆる、コロナ鬱というやつである。
当時営業職に従事していた私は、リモートワークがどうしても合わなかった。
顧客からのクレームも事務所でなら同僚とフォローし合えるが、リモートワークでは個人携帯にかかってきて怒鳴られるのだから、かなり気が滅入る。次第に感覚がおかしくなり、どんな難癖をつけられても「私が全部悪いんだ」と自責に切り替わる。
食欲がない。夜は眠れない。
同居していた家族とも目を合わせられない。
はじめてメンタルクリニックを受診した。
1年は薬を飲みながら仕事を続けたが、結局は退社した。薬は次第に飲まなくても大丈夫になり、フェードアウトした。
2回目は前職を辞め、次の就職先が見つかった時。
たまたま入った天ぷら屋さんに、女子大生が5人ほど。お店の雰囲気に合わない、明るい声が響く。親子で眉を顰め「まぁ若いからね…」と話していた時、「私が学生の頃はどうだったか」と考え出したのがトリガーとなった。
「あの時、私何か怪しいものに関与してなかった?」と不安になり始めた。学祭の時に勧誘を受けてヨガ教室に数回通ったのだが、毎回1000円の出費が学生には痛く、辞めたのだった。普通のヨガ教室ではあったと思うが、あまり覚えていない。変な契約等はしていないだろうか。いてもたってもいられなくなり、当時の手帳など見てみるがそれらしい記載はない(当たり前だ)
とにかくそこから昔のことを思い出せないことが怖く不安に感じ、調べ物が止まらない。
食欲がない。夜は眠れない。
手が震える。まともな思考にならない。
そして再びメンタルクリニックに向かったのだった。
勝手に投薬をやめた患者に、先生は怒らず、優しく、また薬を処方してくれた。
しかしここも半年経ったくらいにはもう飲まなくてもよくなり、先生と相談して減薬→フェードアウトとなったのだ。
そして3回目。今日である。
今の職場に前職の同僚が遊びにきたこと。
前職の上司から連絡がきたこと。
先日選考を受けた会社から最終面接の連絡がきたこと。
これら全てがトリガーとなった。
いや、もしかしたら数日前に見た友人の赤子だったり、50万円もの海外旅行の振込だったり、メガ割でリップを3つも買ってしまったこともトリガーだったのかもしれない。
とにかく、また始まってしまったのだ。
使っていなかったSNSのアカウントを消した時、自分や他人の写真を間違えて載せていないかと不安になり、背中が発火したように熱く、ジワジワと汗をかき、そのまま眠れずソルビデム(睡眠導入剤)を飲む。(余談だが、受診時に先生に間違えて「レパミドを飲みまして」とお伝えしたところ「それは胃腸薬ですが…?」と混乱させてしまった)
2日目は今度は加害妄想。過去の出来事に対して、何か法に触れるようなことはしていなかったか不安になり、何も手につかない。肘から下の手が震える感覚。肌はピリピリとして、体が硬直している。
3日目は貧困妄想。これは一昨年にも強く出ていた。自分に借金があるのではないかという妄想。借金があるならすぐにでも口座からの出金や取り立てがあるのだからありえない話なのだが、頭は借金のことしか考えられない。自分の想像力の豊かさに脱帽する。
観念して4日目にメンタルクリニックに向かう。
先生に言わせると私のは妄想ではなく、強迫観念に近いらしい。「神経質なタイプ?」と聞かれるものの、自分自身をそのように思ったことはあまりない。神経質=几帳面な人、のイメージなので、神経質と答えるのは少々烏滸がましいのではと考える。
減薬していた薬は2倍の量に増え、今日からまた治療が始まる。
まさか自分が再び鬱に悩まされることになるとは、1週間前の自分は想像もしていなかったであろう。
鬱は落とし穴のようなもの。
ルンルンと散歩していた日常が落とし穴に落ちて一変する。
そして薬を飲んで、這いつくばって、またどうにか日常に戻っていくのだ。
だから落胆しない。
人生はそういうものだと諦めて(明らめて)、また1つ1つ向き合っていくのだ。
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