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Enjoy your life! から ”非人間的な世界”へ…

長い教員生活の中で、10数年前に在外教育施設へ派遣されたことがある。

在外教育施設から教育委員会へ

3年間の出向を終えて帰国した際の異動先は、学校現場ではなく教育委員会の人事担当課でした。なかなか在外教育施設からダイレクトに人事担当課というのは例がなく、実態を知る者からは「気の毒に…」という声があったことを後になって知った。

海外から引っ越したばかりで住む家もなく、家内の実家に間借りしながら、新しい職場での仕事が始まりました。当然のように4月1日からが新しい職場での仕事始め。

教育委員会人事担当 “人担”と呼ばれる世界

着任した人事を担当する課は、仕事が過酷なことで有名でした。
私が赴任する前に勤めた先達の中には、心身のバランスを崩した人も指折り数えられるような部局。土日がないとか、とにかく体力勝負だとか、そんなことが着任前から耳に入ってきました。

実際に赴任後、机を並べる先輩から、
「使う暇がないから、お金が溜まるよ!」
「私なんか、この3ヶ月で150円の豆腐しか買っていないからね!」
そんなことを聞かされた。お金が溜まると言われても何も嬉しくなかったことをよく覚えている。休む暇がないって言われても全く実感もわかなかった。
業務記録を残している先輩の記録を見せてもらって本当に唖然とした。
週休日は殆ど休めず、時間外労働も恐ろしい時間を計上していた。しかも、教員から派遣されているということで、市職員はついている時間外も上限が設けられていた。
(同じ行政職員でありながら、教員は、下に扱われていることを体感した気がする。)

Enjoy your life! の世界から非人間的な世界へ

ちょうど、前職は、派遣された在外教育施設といえども補習授業校と呼ばれるウイークエンドスクールに赴任しており、文科省からの派遣者は、私1人という3年間を過ごしていた。「学校長、指導主事から、用務員まで」みたいな負担感満載の業務だったが、上司はおらず、とにかく、良い仕事をしてさえいれば問題はなく、スケジュール管理もそれなりの裁量を与えられていた。

しかも、アメリカに設置された学校であったことから、取り巻く人々も仕事をきちんとして、人生をエンジョイするようなスタイルだった。
休みの前日には、「エンジョイ!楽しんでね!」と声がかかるような中で日々を過ごしていた。

そんな世界から、市教委人事担当課は、180度あるいはぐるっと回って540度くらい異なる世界にやってきたような世界だった。
朝の始業から全力疾走で業務が始まり、行政職だから昼休みがあっていいなあと思っていたら、全く期待外れ。

昼食は弁当を頼んで、寸暇を惜しんで仕事をしている先輩の姿を目の当たりにした。もちろん、昼時にも構わず学校現場から、電話が鳴りやまなかった。弁当を広げ、箸を片手に電話を受け時に食事を中断して対応する日々だった。

初日から、課には叙勲(ご存じでしょうか?)の申請という仕事が舞い込んでいた。(おそらく教員の世界で、そんな業務を教育委員会の人事担当者がこなしていると知っている人は極まれだと思う。)他の業務でてんてこまいの先輩たちは、叙勲申請業務に手が回らず、訳の分からない私が初日からその仕事に従事していた。

豆知識:教職員の叙位・叙勲とは?
学校長を務め、一定の条件を満たしている教員には、叙位・叙勲として国家または公共に対して功労があったこととして叙位・叙勲が行われます。

死亡した場合に、その生前最後の日(ご逝去日)にさかのぼって叙位・叙勲が行われ、同時に位階が授与されのが死亡叙勲と呼ばれるもの。その他、高齢者叙勲として、勲章を授与されていない功労者に対しては、年齢88歳に達した機会に勲章を授与する申請もありました。

こうした叙位・叙勲に伴う申請業務を教職員に関することとして人事課が担当していたのです。

教職員の叙位・叙勲について

もう着任初日から全開、全力疾走みたいなスタートだった。
通常業務も相まって、終業時間は初めから22:00、23:00…。それから、3ヶ月くらいは、真面目に土日の休みもなかった。

しばらくして引っ越した家には、船便で送った荷物が届いていたが、現場に赴任して忙しい家内と休みもない私は、荷物をほどく間もなく梅雨時を迎えていた。畳の部屋に積み重ねていた段ボール箱の下がカビはじめたほど、ただ仕事をして、生きているだけの生活だった。

アメリカで仕事はするが人生をエンジョイするスタイルから正に非人間的な生活の世界へ押し込められたことは、私の人生観を変容、歪める?ものになったことは間違いがない!

非人間的な世界で痛感した「働き方改革」「業務改善」!

それから数年の過酷な日々での経験は、様々なことを教えてくれた。しかも、そうした人事担当課には、心や身体のバランスを崩した先輩がいたことは先に述べた通りだが、課に所属しながら、1人ひとりのその後の足取りを垣間見たことが、適正な労務管理とか働き方改革の重要性に目を向けることに繋がっていった。

「人間的な生活を送ることがいかに大切か。」
「人は、豊かに暮らさなければならない!」
「仕事で、心身の健康を害したり、人生を棒に振るようなことがあってはならない。」

今もライフワークのように思える「働き方改革」や「業務改善」について多くの気づきを得ることになった。     …つづく…

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