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【みちらん33】波に重ねた天心の心境 ~五浦海岸六角堂~

今回の主役は那須川ではなく、岡倉天心。近代日本における美術史学研究の開拓者です。

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天心座像(部分)平櫛田中作、昭和41年

日本画に洋画の手法を取り入れ清新の画風を切り拓こうとした岡倉天心は、明治31年上野谷中に日本美術院を設立、仲間と精力的に活動しました。しかし経営に行き詰まり、明治39年志半ばで五浦海岸に活動の拠点を移します。
その象徴が、崖上でひと際目を引く朱色の六角堂。

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五浦岬公園から眺めた六角堂。2011年の東日本大震災で流失後、翌年再建

日露戦争直前の欧米的思想一辺倒だった時期に、「アジアは一つなり」と喝破した岡倉天心。六角堂は日中印の文化が融合した象徴的建物とも言われています。凡人の私は露天風呂だったらと罰当たりな空想をしてしまいました。

天心は岩にぶつかる太平洋の荒波を眺めながら、瞑想にふけったといわれています。??
ネットの紹介文はどれもこんな感じです。ただあいにく?この日は絶好のお散歩日和。眼前には穏やかな海が広がっています。なかなか天心の心境に近づけそうにありません。

日を改め、かつて日本美術院があったという谷中の小公園にも足を運んでみました。堂内には平櫛田中作の天心像。これとも対峙してみましたが、天心の心境に迫るのは難しそうです。

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台東区立岡倉天心記念公園

想像力をフル回転した結果、きっと滝行よろしく、怒涛の荒波に打たれる岩を我が身に重ねたかと、思い至った次第です。

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室戸岬の荒波(イメージ)

もっとも天心も、思索に耽ってばかりではなかったようで、自ら「五浦釣徒」と号していたように、日和さえよければ毎日沖に釣りに出かけるのが日課で、夜になると晩酌をしながら翌日の釣道具を準備していたそうです。

大津岬公園の一角にある真新しい灯台を越えて、カーブ毎に海の変化を楽しみながら大津漁港へと向かいます。大津漁港には漁協直営の食堂があって、名物はどぶ汁。アンコウ鍋よりもあん肝が濃く濁っているそうで、天心もこの味に舌鼓を打ったのであろうか(食べたかった)。

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茨城県北茨城市
距離:4km 五浦美術館前バス停~大津漁港

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[星の数] ★★(遠回りしてでも訪れる価値のある、道歩きが好きな人向けのみち)


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