見出し画像

『イタリア人のいとこは誰?』

東京パラリンピック2020が開会し、オリンピックに続き様ざまな国の名前やメダル授賞式では国歌を耳にする機会が増え、あまり馴染みのない国や地域がどこにあるのか思わず地図で探す人もたくさんいると思います。

画像2

※写真はスイス・ローザンヌにある『国際オリンピック委員会』本部

その中でイタリアの国歌は外国の国歌であるアメリカやフランス同様、耳に残っている人が案外多いと想像しますが、はつらつとした前奏から出だしは『Fratelli d'Italia l'Italia…』の歌詞です。そしてどんどんと盛り上がり、歌い終わるときにはなぜか、気のせいなのかテンポが速くなっているようで、せっかちイタリア人らしいところが表れているといつも思ってしまいます。
この曲の編曲を手掛けたのは日本でも知られている『ジュゼッペ・ヴェルディ』、オペラに造詣がない人でも『椿姫』や『アイーダ』の作品名を聞いたことはあると思います。
さて、その国歌の歌い出しの『フラテッリ(Fratelli)』はイタリア語で兄弟を意味し、国民を兄弟になぞらえています。

画像3

実はそのイタリア人に『いとこ』がいます。勘がいいひとは察しがつくと思いますが、タイトルどおりイタリア人のいとこは隣国『フランス』、フランス人をイタリア人はいとこと例えて言います。
イタリア人とフランス人のいとこ関係は中世にまで遡り、フランス国王は、忠誠なヨーロッパの領主、家臣、高官に称号を与えており、その信頼と友好関係を示す言葉『フランスのいとこ』、イタリア人を『アルプスの向こう側のいとこNos cousins d'outre-alpes』と呼称したことがはじまりとされているようです。それが今日にまで残り、イタリア人のフランス人呼称『我われのいとこ』に繋がります。
残念ながらフランス人がイタリア人のことを『我われのいとこ』と呼ぶのか定かではありませんが、熱いイタリア人の片思いでないことを願います。少なくともイタリアではフランスで起きた悲劇的なニュースやスポーツシーンでの栄誉を称える場合などに『我われのいとこ』の言葉をよく使っています。

画像1

少し話が逸れますが、日常生活で使われている表現がヨーロッパで育った人や歴史的な背景を知らないとわからないものがあります。
例えばイタリアの隣国『スイス連邦』、イタリア語では『コンフェデラツィオーネ・スヴィッツェラ Confederazione Svizzera』 (英語: Swiss Confederation)と呼ばれていますが、時々耳にしない『Confederazione Elvetica』の呼称が用いられることがあります。
『エルヴァティカElvetica』とは古代ローマ時代に用いられていたアルプスの一部の地域呼称です。そうなると歴史がわからない私などはチンプンカンプン状態に陥ります。

画像4

更に脱線しますが、よく使われる表現で『ヴェッキオ・コンティネンテVecchio Continente』があります。
訳すと『旧大陸』ですが、こちらは『クリストフォロ・コロンボ(イタリア語: Cristoforo Colombo/英語: クリストファー・コロンブス)』の航海時代まで遡ります。
それまでヨーロッパ人に知られていたヨーロッパ、アフリカ、アジアをこの呼称で指し、アメリカ大陸のことを『新大陸』と指します。
日本語でも使う場合もありますが、おそらくイタリアほどの頻度、または報道シーンではあまりないかもしれません。
また、イタリアでは『新大陸』の呼称より比較的耳にするのは『旧大陸』の呼称かもしれません。

当時、アジアとアフリカについてヨーロッパ人は詳しく知らない部分はたくさんありましたが、日本を含めアジアの存在を知っていたので、アジアも旧大陸として含まれているようです。
この呼称を使っていた場面で私自身が真っ先に思い出すのは、『イギリスの欧州連合離脱』のニュース番組でした。その歴史的瞬間を報道する際、『La Gran Bretagna lascia il Vecchio Continente(訳: イギリスは旧大陸を去る)』と記者がドラマティックに語っていたことでしょうか。
歴史的な出来事をより劇的に、熱く伝えるあたりはイタリアン報道かもしれませんね。

画像5

日本語もそうですが、どの言語もひとつひとつの語源、由来があり、それをひとつずつ調べてみるのも面白いと思います。

因みに2006年冬季オリンピックが開催された『トリノ』がある『ピエモンテ州』は地理的に山の麓にある州であり、イタリア語で『Ai piedi dei monti』から由来します。

画像6


自由に様ざまなことを見る、聞く、書くことができ、それに加えてとても簡単にたくさんの人に向けて発信できる時代だからこそ、言葉を選びながら上手にコミュニケーションを取りたいものです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?