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俵万智『恋する伊勢物語』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2019.04.06 Saturday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

『伊勢物語』の和歌を現代語の短歌に置き換えた現代語訳(「少年少女古典文学館 第2巻」に所収)でも知られる俵万智さんですが、本書は訳ではなく、『伊勢物語』から受けた刺激から、読み取ったり考えた「余計なこと」や「付け加えたくなった話」を自由に展開して、その魅力を読み解いていこうというもので、読売新聞日曜版の一年間の連載がまとめられた一冊です。

読書とは不思議なもので、そこに書いてあることについて考えるばかりでなく、そこに書いてないことについてまで、考えがどんどん広がっていってしまうことがしばしばある。

各章の扉に乗せられた、『伊勢物語』の歌を本歌取りにした歌も、その後に取り上げられる段への興味を掻き立てます。

恋せじといふ禊ありされど吾(あ)は恋して傷つくほうを選ばむ

これは、タイトルの由来ともされている「伊勢斎宮」との恋物語が取り上げられる第六十九段が含まれる章に置かれています。

教科書に載っている『伊勢物語』のイメージを払拭したい。在原業平の一代記ではなく、「おもしろいからこそ、古典といて読みつがれてきた」恋の見本市としての『伊勢物語』にスポットを当てたい。俵万智さんの古典への愛と、恋愛観までが垣間見られる『恋する伊勢物語』です。