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藤村忠寿・嬉野雅道『仕事論』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2020.02.01 Saturday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

6年ぶりの待望の新作が放送中で盛り上がっている、北海道テレビ(HTB)の人気バラエティ番組『水曜どうでしょうHow do you like wednesday?』。実は私も、今回の新作に喜んでいるファンの一人で、新作公開前のインタビュー記事を読んで楽しみにしていました。

1996年にスタートし2002年までレギュラー放送され、その後不定期に公開されている『水曜どうでしょう』の出演者は、現在では俳優として引っ張りだこの大泉洋さんと、ミスターこと鈴井貴之さんのタレント枠2人に、藤やんこと藤村忠寿さん&うれしーこと嬉野雅道さんの同行ディレクター2人の4人です。出演者の掛け合いや、大泉さんのボヤき、トラブルをそのままネタにするアクシデントの数々が楽しい番組で、全国で再放送されたり、DVD化されたりしています。その2人の名物ディレクターが「働き方」の本質を語ったのが『仕事論』です。オビには、「やりたいことで結果を出すための『自分勝手』な思考法」と書かれています。枠にとらわれない斬新な超人気番組を作ったディレクターが、会社員としての立場から仕事をどう語るのか、興味津々で手に取りました。

藤村さんと嬉野さんが交互に語っていく形式で進められていくのですが、ただ闇雲に頑張れという立場ではなく、安請け合いをしない、深く考えれば無茶な指示は断れる、など、番組制作体験を例に引きながら、独特の「仕事論」が展開されていきます「『自分たちが面白いと信じること』をやり続けてきた」だけで、「テレビ番組を作っているという意識がない」と言いながらも、そこでひかれる以下のたとえ話を特に興味深く読みました。

一般に、新しいグラスをつくることになった場合、普通は今の流行を考えたり、次の流行を予測して作ろうとする。しかし、二人の場合は、グラスじゃなくて皿を作ってもいいんじゃないかと考えて、自分たちが作りたい皿を作る。とはいえ、自分たちの皿の魅力を見極める必要はあって、自分たちの長けている能力を使った皿をつくらなければならない。できたものに意見を言われても、その意見の箇所に狙いはないのだから、気にする必要はない。

「世の中で求められているもの」を作り出そうってことは、一切考えたことがありません。自分たちが絶対に面白いと思うものを作れば、良いものが出来上がるんだという確信があります。(略)やれと言われたことを無視するほどの思いで作ったわけですから、おのずとクオリティも高くなるはずなんです。

「社会はどこまでいっても、人、人、人」というスタンスに立ち、「私たち人間が一番好きな対象が人間」であるからこそ、視聴者は「『他人がどんな考えをもっているか』に強い興味を抱」いてテレビに耳を傾ける。「人間が作る以上、目指しているのは他者との交流」であると言い切る本書。「『自分』の尺度でものを言」い、「成功や失敗という結果より、やってみることの方が人生には大事」という『仕事論』は、仕事にかかわらず、人生をより豊かに自分らしく生きるために背中を押してくれるような一冊でした。