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『実は…』な物語 2

『うさぎとかめ』

森のひろばに動物たちが集まって、なにやら話をしています。

「このなかで1番走るのが早いのは誰だろう?」
誰かが言うと、
「そりゃあ、ボクが1番だよ。ためしに競走してみるかい?」
ウサギさんがむねをはって言います。
「じゃあ ぼくとかけっこしよう!」
そう言ったのはカメさんです。
「キミがボクとかけっこだって?まあいいよ。それなら向こうの山の高い木があるところまで、どっちが早いか競争だ!」

ウサギさんとカメさんがならびます。

「よーい、どん!」
合図がきこえると、ウサギさんはものすごいスピードで走りだしました。
「カメさん。先に木の下でまってるからね!」
そういうと、あっというまに見えなくなってしまいました。

のこされたカメさんはゆっくりと走ります。
「まだ負けると決まったわけじゃない。がんばるぞ~」
谷をこえて、池の近くをとおって、お花畑まできてもウサギさんの姿は見えません。
「ゴールまであきらめないもんね」
カメさんはいっしょうけんめい走り、汗がいっぱいです。

もうすこし走るとリンゴの木の下で、誰かがねむっているのが見えました。
なんとウサギさんです。
「よーし!ウサギさんがおきる前にゴールまでいっちゃうぞ~」
カメさんは大きな木までの坂道を力いっぱい走りました。
あとすこし。あとすこし。
さいごの力をふりしぼってゴールの前まで来たときです。

「ちょっとまってー!」
という声が聞こえてきました。
カメさんがふりかえると、ウサギさんがすごい速さでのぼってきます。

先にゴールしたのはカメさんでした。
あとから来たウサギさんは汗びっしょり。
「いや~カメさんに負けちゃったよ」
「ウサギさんがあんな所でねてるからだよ」
そう言われてウサギさんはちょっと恥ずかしくなりました。
「いくらぼくがおそくても、ねるのはよくないよ」

そのときです。
ふたりの所にリスのおやこがやってきました。
「ウサギさん。さっきはこの子をたすけてくれて、ありがとうございました」
「どういうこと?」
カメさんは不思議そうな顔でたずねます。
「実はね…」

ウサギさんが先に走っているとリスの子どもがひとりで泣いていました。
「どうしたの?」と聞くと、どうやらママとはぐれてしまったようです。
「じゃあ、いっしょにさがしてあげるよ!」
そう言ってウサギさんはリスさんを背中にのせて走りました。
すると泣いていたリスさんは背中のうえでスヤスヤ。
「これは落っこちちゃうなぁ。ちょっと休もう」
とリンゴの木の下にいきました。
リスさんはまだねむっています。ひとりにするのはかわいそうなので、ウサギさんもねころびました。
ウトウト…ウトウト。ウトウト…ウトウト。

「ぼうや!そこにいたの?」
リスさんのママのこえでウサギさんがとびおきました。
高い木の方をみるとカメさんがもうすぐゴールしそうです。
これはたいへん。とウサギさんはまた走り出したのでした。

「そうだったのか。なまけてねてたんじゃなかったんだね」
とカメさん。
「ねるつもりも、負けるつもりもなかったんだけどね」
とウサギさん。
「じゃあまた競走しようよ!」
「うん。次はぜったいに負けないよ!」

ふたりはリスのおやこにサヨナラを言って、なかよく森へ帰りました。

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