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5-8 線形な変数変換、共分散、相関係数 ~ 【特集】期待値・分散・共分散・相関係数の公式

今回の統計トピック

【公式特集】期待値・分散・共分散にまつわる公式を列挙いたします。
EやVの仮面をかぶったヒーロー&ヒロインが勢ぞろい!

公式問題集の準備

「公式問題集」の問題を利用します。お手元に公式問題集をご用意ください。
公式問題集が無い場合もご安心ください!
「知る」「実践する」の章で、のんびり統計をお楽しみください!

問題を解く


📘公式問題集のカテゴリ

確率分布の分野
問8 線形な変数変換、共分散、相関係数(データなし)

試験実施年月
統計検定2級 2018年6月 問9(回答番号19)

問題

公式問題集をご参照ください。

解き方
数式が並びます。何卒、何卒。

数学者のイラスト(女性):「いらすとや」さんより

題意
2つの確率変数の線形変換と共分散・相関係数に関する問題です。
問題を要約します。

■与件
$${E[X]=2.0,\ E[Y]=3.0,\ E[XY]=6.3,\ V[X]=1.0,\ V[Y]=1.0}$$

■線形変換で生成する確率変数
$${U=3X-2,\ V=-2Y-4}$$

■求める値
共分散$${\mathrm{Cov}[U, V],\ }$$相関係数$${r[U, V] }$$

公式問題集の記述を改変

共分散・相関係数の関連公式
この問題を解くときに利用する公式を列挙いたします。

■共分散の公式
$${\mathrm{Cov}[X, Y]=E[XY]-E[X]E[Y]}$$

■相関係数の公式
$${r[X, Y]=\cfrac{\mathrm{Cov}[X, Y]}{\sqrt{V[X]V[Y]}}}$$

■線形変換の共分散の公式
$${\mathrm{Cov}[aX+b, cY+d]=ac\mathrm{Cov}[X, Y]}$$

■線形変換の相関係数の公式
$${r[aX+b, cY+d]=\cfrac{ac}{|ac|}r[X, Y]}$$

公式に当てはめる
$${U=aX+b,\ V=cY+d}$$より$${a=3,\ b=-2,\ c=-2,\ d=-4}$$です。

①共分散$${\mathrm{Cov}[X, Y]}$$
$${\mathrm{Cov}[X, Y]=E[XY]-E[X]E[Y]=6.3-2.0 \times 3.0 = 0.3}$$

②線形変換の共分散$${\mathrm{Cov}[aX+b, cY+d]}$$
$${\mathrm{Cov}[U, V]= \mathrm{Cov}[aX+b, cY+d]=ac\mathrm{Cov}[X, Y]=3 \times (-2) \times 0.3 = -1.8}$$

③相関係数$${r[X, Y]}$$
$${r[X, Y]=\cfrac{\mathrm{Cov}[X, Y]}{\sqrt{V[X]V[Y]}}=\cfrac{0.3}{\sqrt{1.0 \times 1.0}}=0.3}$$

④線形変換の相関係数$${r[aX+b, cY+d]}$$
$${r[U, V]=r[aX+b, cY+d]=\cfrac{ac}{|ac|}r[X, Y]=\cfrac{3 \times (-2)}{|3 \times (-2)|} \times 0.3=\cfrac{-6}{6} \times 0.3=-0.3}$$

答えは、共分散$${\mathrm{Cov}[U,\ V]=-1.8}$$、相関係数$${r[U,\ V]=-0.3}$$です。

解答

④ $${\mathrm{Cov}[U,\ V]=-1.8}$$、$${r[U,\ V]=-0.3}$$ です。

難易度 ややむずかしい

・知識:確率変数の1次変換と共分散・相関係数
・計算力:数式組み立て(高)、数式計算(低)
・時間目安:2分

知る


おしながき

公式問題集の問題に接近してみましょう!
今回は、確率変数の1次変換・1次結合にトライしてまいりましょう!

期待値・分散・共分散の公式

複数の確率変数$${X,Y, \cdots}$$の期待値、分散、標準偏差、共分散、相関係数について、主要な公式を列挙します。
確率変数界のヒーロー、ヒロインが勢ぞろいです!

決めポーズを取る戦隊もののキャラクターたち(集合):「いらすとや」さんより

①期待値・分散・共分散・相関係数の横のつながり

分散$${V[X]=E[X^2]-(E[X])^2}$$
共分散$${\mathrm{Cov}[X, Y]=E[XY]-E[X]E[Y]}$$
相関係数$${r[X,Y]=\cfrac{\mathrm{Cov}[X,Y]}{\sqrt{V[X]V[Y]}}}$$

②確率変数$${X}$$の変数変換$${aX+b}$$

期待値$${E[aX+b]=aE[X]+b}$$
分散$${V[aX+b]=a^2V[X]}$$
標準偏差$${SD[aX+b]=\sqrt{a^2V[X]}=|a|SD[X]}$$

③確率変数$${X, Y}$$の線形結合$${aX+bY+c}$$

期待値$${E[aX+bY+c]=aE[X]+bE[Y]+c}$$
分散$${V[aX+bY+c]=a^2V[X]+b^2V[Y]+2ab\mathrm{Cov}[X,Y]}$$

④確率変数$${X, Y}$$の変数変換$${U=aX+b,\ V=cY+d}$$

共分散$${\mathrm{Cov}[U,V]=\mathrm{Cov}[aX+b,\ cY+d]=ac\mathrm{Cov}[X,Y]}$$
相関係数$${r[U,V]=r[aX+B,\ cY+d]=\cfrac{ac}{|ac|}r[X,Y]}$$

⑤確率変数$${X, Y}$$が独立のとき

【確率変数の積の期待値】
$${E[XY]=E[X]E[Y]}$$

【確率変数の線形結合の分散】
$${V[aX+bY+c]=a^2V[X]+b^2V[Y]}$$

【共分散、相関係数はゼロ】
共分散$${\mathrm{Cov}[X,Y]=0}$$
相関係数$${r[X,Y]=0}$$

⑥3つ以上の確率変数$${X_1, X_2, \cdots , X_n}$$の和

【期待値】
$${E[X_1+X_2+\cdots + X_n]=E[X_1]+E[X_2]+\cdots +E[X_n]}$$

【分散】
$${V[X_1+X_2+\cdots + X_n]}$$
$${\quad =V[X_1]+V[X_2]+\cdots +V[X_n]+2\displaystyle \sum^{n-1}_{i=1} \sum^n_{j=i+1} \mathrm{Cov}[X_i,\ X_j]}$$

【3つ以上の確率変数の和の分散$${V[X_1+X_2+X_3]}$$の公式の記憶法】
例えば3つの確率変数$${X_1, X_2, X_3}$$について、分散共分散行列っぽいマトリクスを書いて、出現する分散と共分散を合計すると$${V[X_1]+V[X_2]+V[X_3]+2\mathrm{Cov}[X_1, X_2]+2\mathrm{Cov}[X_2, X_3]+2\mathrm{Cov}[X_1, X_3] }$$になります。

$$
\begin{array}{c|c|c|c}
 & X_1 & X_2 & X_3  \\
\hline
X_1 & V[X_1] & \text{Cov}[X_1, X_2] & \text{Cov}[X_1, X_3] \\
X_2 & \text{Cov}[X_1, X_2] & V[X_2] & \text{Cov}[X_2, X_3] \\
X_3 & \text{Cov}[X_1, X_3] & \text{Cov}[X_2, X_3] & V[X_3] \\
\end{array}
$$

⑦複数の確率変数が互いに独立に同一の分布(平均$${\mu}$$、分散$${\sigma^2}$$)に従うとき

【確率変数の和の期待値】
$${E[X_1+X_2+\cdots + X_n]=n\mu}$$

【確率変数の和の分散】
$${V[X_1+X_2+\cdots + X_n]=n\sigma^2}$$

【標本平均の期待値】
$${E[\bar{X}]=\mu}$$

【標本平均の分散】
$${V[\bar{X}]=\cfrac{\sigma^2}{n}}$$

⑧確率変数$${X, Y, W, Z}$$の変数変換$${U=aX+bW,\ V=cY+dZ}$$

■共分散(分配法則的な公式)

$$
\begin{align*}
&\mathrm{Cov}[U,V] \\
&=\mathrm{Cov}[aX+bW,\ cY+dZ]\\
&=ac\mathrm{Cov}[X,Y]+ad\mathrm{Cov}[X,Z]+bc\mathrm{Cov}[W,Y]+bd\mathrm{Cov}[W,Z]
\end{align*}
$$

お疲れ様でした。

ヒーローショーのイラスト:「いらすとや」さんより

統計検定2級過去問

公式問題集2018~2021年版で出題された期待値・分散の演算、および、確率変数の変換にかかわる問題を一覧にします。
ぜひ計算にチャレンジしてください!

■2021年6月
・問5(7):共分散・相関係数
・問8(10):同時確率、相関係数

■2019年6月
・問2(6):変動係数、共分散
・問3(8):平均、標準偏差
・問9(16,17):共分散、相関係数、確率変数の二乗の期待値

■2018年11月
・問8(12,13):正規分布に従う確率変数の確率
・問10(16):標本平均の期待値と分散

■2018年6月
・問8(15,16,17):記事「5-7 X-Yの確率計算」の問題
・問9(18,19):確率変数の二乗の期待値、共分散、相関係数

実践する


今回はお休みです。


電卓・手作業で作成してみよう!

今回はお休みです。


EXCELで作成してみよう!

今回はお休みです。

EXCELサンプルファイルのダウンロード
今回はファイル提供はありません。


Pythonで作成してみよう!

今回はお休みです。

Pythonサンプルファイルのダウンロード
今回はファイル提供はありません。



おわりに

確率変数の変換の公式を集めました。
別の公式がありましたら発見の都度、この記事をアップデートします。
確率変数に関連する公式を1つの記事にまとめるようにがんばります!

追伸:WBCで侍Japanが優勝しました!おめでとうございます!

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。


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