4-4 事象間の排反・独立 ~ ベン図で独立と排反を可視化
今回の統計トピック
確率の加法定理と積事象の確率を通じて、事象の排反と独立について学びます!
ベン図が便利です。
Webサイトのベン図ツールとPythonでベン図を描きました!
公式問題集の準備
「公式問題集」の問題を利用します。お手元に公式問題集をご用意ください。
公式問題集が無い場合もご安心ください!
「知る」「実践する」の章で、のんびり統計をお楽しみください!
問題を解く
📘公式問題集のカテゴリ
確率の分野
問4 事象間の排反・独立(データ無し)
試験実施年月
統計検定2級 2019年6月 問7(回答番号13)
問題
公式問題集をご参照ください。
解き方
題意
2つの事象について、確率の加法定理を利用して、排反と独立の判定をします。
では、確率の加法定理から始めます。
確率の加法定理(公式)
$$
P(A \cup B)=P(A)+P(B)-P(A \cap B)
$$
確率の加法定理に問題文の値を当てはめて、$${P(A \cap B)}$$を求めます。
$$
\begin{align*}
P(A \cup B)&=P(A)+P(B)-P(A \cap B) \\
0.61&=0.4+0.35-P(A \cap B) \\
P(A \cap B)&=0.4+0.35-0.61=0.14
\end{align*}
$$
排反の判定
事象$${A}$$と事象$${B}$$が排反の場合、$${P(A \cap B)=P(\emptyset)=0}$$が成り立ちます。
しかし、上記の確率の加法定理の当てはめ結果は、$${P(A \cap B)=0.14\neq0}$$です。
事象$${A}$$と事象$${B}$$は排反ではありません。
独立の判定
事象$${A}$$と事象$${B}$$が独立の場合、$${P(A \cap B)=P(A)\ P(B)}$$が成り立ちます。
問題文の値を当てはめると、$${P(A)\ P(B)=0.4\times0.35=0.14}$$になります。
つまり、$${P(A \cap B)=P(A)\ P(B)=0.14}$$です。
事象$${A}$$と事象$${B}$$は独立です。
解答
② 独立だが排反ではない です。
難易度 やさしい
・知識:事象の排反と独立
・計算力:数式組み立て(低)
・時間目安:1分
知る
おしながき
公式問題集の問題に接近してみましょう!
今回は、類似問題を一緒に解いて、確率の加法定理、排反、独立を確認してまいりましょう!
お題
サイコロを1回振ります。
奇数の目が出る事象$${A}$$と3の倍数の目が出る事象$${B}$$について、確率の加法定理、排反、独立を考えます。
ベン図の作成には次のサイトのお世話になりました。
ありがとうございました!
確率の加法定理
📕公式テキスト:2.1 事象と確率(55ページ~)
奇数の目が出る事象$${A}$$の確率$${P(A)}$$は$${1/2}$$です。
3の倍数の目が出る事象$${B}$$の確率$${P(B)}$$は$${1/3}$$です。
奇数の目が出る事象$${A}$$と3の倍数の目が出る事象$${B}$$のうち、少なくとも1つが起きる和事象$${A \cup B}$$の確率$${P(A \cup B)}$$は$${2/3}$$です。
奇数の目が出る事象$${A}$$と3の倍数の目が出る事象$${B}$$が同時に起きる積事象$${A \cap B}$$の確率$${P(A \cap B)}$$は$${1/6}$$です。
和事象の確率$${P(A \cup B)}$$の図に注目します。
$${A}$$単体の確率$${P(A)}$$と$${B}$$単体の確率$${P(B)}$$を足して、積事象の確率$${P(A \cap B)}$$を引くと、和事象の確率$${P(A \cup B)}$$になります。
$$
\cfrac{1}{2}+\cfrac{1}{3}-\cfrac{1}{6}=\cfrac{3}{6}+\cfrac{2}{6}-\cfrac{1}{6}=\cfrac{4}{6}=\cfrac{2}{3}
$$
この関係が確率の加法定理です。
確率の加法定理
$$
P(A \cup B)=P(A)+P(B)-P(A \cap B)
$$
排反
📕公式テキスト:2.1 事象と確率(55ページ~)
事象$${A}$$と事象$${B}$$が排反である場合、積事象$${A \cap B}$$が空事象$${\emptyset}$$になります。
互いに排反の事象の積事象の確率は、$${P(A \cap B)=0}$$です。
ベン図で表すと、事象間が重ならない図になります。
お題の2つの事象の積事象の確率は$${P(A \cap B)=1/6\neq0}$$です。
したがって、奇数の目が出る事象$${A}$$と3の倍数の目が出る事象$${B}$$は排反ではありません。
独立
📕公式テキスト:2.2 条件付き確率(59ページ~)
概観
事象$${A}$$と事象$${B}$$が独立である場合、一方の事象の起きる/起きないが、もう一方の事象の確率に影響しません。
お題の2つの事象について考えます。
奇数の目が出る事象$${A}$$が起きる場合に3の倍数の目が出る事象$${B}$$の確率は$${1/3}$$です。
この確率は条件付き確率$${P(B \mid A)}$$と表すことができます。
一方、3の倍数の目が出る事象$${B}$$の確率$${P(B)}$$は$${1/3}$$です。
ともに確率は$${1/3}$$です。
このように、奇数の目が出る事象$${A}$$が起きても起きなくても、3の倍数が出る事象$${B}$$の確率が変わらないことが、独立であることなのです。
2つの事象の独立の定義
2つの事象$${A}$$と$${B}$$の積事象の確率$${P(A \cap B)}$$が、事象$${A}$$の確率$${P(A)}$$と事象$${B}$$の確率$${P(B)}$$の積と一致する場合、2つの事象は独立です。
$$
P(A \cap B)=P(A)\ P(B)
$$
お題の2つの事象について考えます。
確率$${P(A \cap B)=1/6}$$、$${P(A)\times P(B)=1/2 \times 1/3=1/6}$$であり、$${P(A \cap B)=P(A)\times P(B)}$$が成り立ちます。
奇数の目が出る事象$${A}$$と3の倍数の目が出る事象$${B}$$は独立です。
また概観に戻ります。
2つの事象が互いに独立の場合は、次が成り立ちます。
$$
P(B \mid A)=P(B),\quad P(A \mid B)=P(A)
$$
お題の2つの事象について考えます。
奇数の目が出る事象$${A}$$が起きる場合に3の倍数の目が出る事象$${B}$$の確率は、条件付き確率$${P(B \mid A)}$$であり、$${P(B \mid A)=1/3}$$です。
また、3の倍数の目が出る事象$${B}$$の確率$${P(B)}$$は$${1/3}$$です。
$${P(B \mid A)=P(B)}$$が成り立っています。
そして、3の倍数の目が出る事象$${B}$$が起きる場合に奇数の目が出る事象$${A}$$の確率は、条件付き確率$${P(A \mid B)}$$であり、$${P(A \mid B)=1/2}$$です。
また、奇数の目が出る事象$${A}$$の確率$${P(A)}$$は$${1/2}$$です。
$${P(A \mid B)=P(A)}$$が成り立っています。
ちなみに
奇数の目が出る事象$${A}$$と5の倍数の目が出る事象$${C}$$は、排反でも独立でもありません。
$${P(A \cap C)\ =1/6 \neq 0}$$であり、排反ではありません。
$${P(A \cap C) \neq P(A)\ P(C)}$$であり、独立ではありません。
奇数の目が出る事象との関係で、3の倍数の目が出る事象の場合は独立になり、5の倍数の目が出る事象は独立にならないのは、なんだか面白いですね!
まとめ
2つの事象の排反と独立は、2つの事象の積事象の確率$${P(A \cap B)}$$を見ることで判定できました。
排反の場合は$${P(A \cap B)=0}$$が成り立ち、独立の場合は$${P(A \cap B)=P(A)\ P(B)}$$が成り立ちました。
公式のまとめ
実践する
今回はPython でベン図を描きます!
電卓・手作業で作成してみよう!
今回はお休みです。
EXCELで作成してみよう!
今回はお休みです。
Pythonで作成してみよう!
サクッとベン図を描きましょう!
サイコロの目について、奇数が出る事象$${A=\{ 1,3,5\} }$$と3の倍数が出る事象$${B=\{3,6\}}$$を題材にします。
①準備
matplotlibのベン図描画パッケージ「matplotlib_venn」を利用します。
パッケージのインストールが必要な場合は、pipまたはcondaコマンドでインストールしてください。
condaのインストールコマンドは次のようになります。
conda install -c conda-forge matplotlib-venn
②インポート
venn2で2つの事象のベン図を描きます。
from matplotlib_venn import venn2
import matplotlib.pyplot as plt
plt.rcParams['font.family'] = 'MS Gothic'
③集合の定義と計算
venn2は集合型(set型)を扱います。
事象AとBの要素を集合型の変数に設定します。
あわせて、$${A \cap B^C,\ A \cap B,\ A^C \cap B}$$を算出します。
# 集合:set型の変数の定義
A = {1, 3, 5} # 事象A:サイコロの目の奇数
B = {3, 6} # 事象B:サイコロの目の3の倍数
# 積事象、差事象の計算
A_and_Bc = A - B # 事象A ∩ 事象Bの余事象
A_and_B = A & B # 事象A ∩ 事象B
Ac_and_B = B - A # 事象Aの余事象 ∩ 事象B
④ベン図の描画
venn2でベン図を描画します。
引数は、venn2( [ 集合A, 集合B ], set_labels=(事象Aのラベル, 事象Bのラベル))です。
# ベン図の描画
venn2([A, B], set_labels=(f'事象$A$:奇数{A}', f'事象$B$:3の倍数{B}'))
# 修飾(グラフタイトル)
plt.title(f'【ベン図】\n'
f'$A \cap B^c=${A_and_Bc}, $A \cap B =${A_and_B}, '
f'$A^c \cap B=${Ac_and_B}');
こんな感じです!
要素数に応じて円の大きさが変わります。
ベン図の中の数字は要素数です。
例えば赤い部分の2は$${A \cap B^c=\{1,5\}}$$の要素数です。
Pythonサンプルファイルのダウンロード
こちらのリンクからJupyter Notebook形式のサンプルファイルをダウンロードできます。
おわりに
ベン図が出ました!
ベン図は数学者ジョン・ベン(John Venn)さんが考案したそうです。
ヴェン図のほうが発音に近いのかもです。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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