考える人

プロダクトとUXデザインの話

先日プロダクトデザイン関連の友人と遊んでいたのですが、そこでふとプロダクトデザインについて話すことがあったので、ちょっと書いてみようと思います。決してネタ切れ起こしてきたわけではないです。そう。決して。


■プロダクトデザイン≒UXデザイン

友人と話した内容で、やっぱり驚かれたのは、現在プロダクトデザイナーはクリエィティブの範囲外にいるということでした。
技術者扱いを受けていて、クリエィティブ業界の人として扱ってもらえないということは僕も友人も首をひねったところです。

プロダクトデザイナーという職業の定義がちょっとふわっとしていることもあっての扱いですが、それではプロダクトデザインとは何をしているのかということを、改めて友人と話しました。
とりあえず友人との間では「プロダクトデザインは物理的な方法で体験をデザインしてる(UXをデザインしてる)」という結論にオチました。

画像はAmazonさんより ウォーターマン パースペクティブです

例えば、このペン(僕が社会人になった記念に買ったものです。めっちゃかっこいいです)ですが、コレは本体が真鍮でできていてとても重く、立派なものの重厚感を実際の質量で示しています。
持ち手の部分には銀の部品をあしらって、ここを持ってくれと暗に示すと同時に、見た目の締りを生んでいます。
このように、物理的なものの重さやキメ、形状、プロポーションでもってそのもののあり方を示すことが僕たちの仕事です。より一般化すると、「製造・使用前・使用後・廃棄時」までのプロダクトの体験を設計することが僕たちの仕事になります。

この仕事は今風に言えばUXデザインと言われます。巷でUXデザインというと、Webやソフトもののイメージをよく見ますが、実際はそれが物理的だろうと、サービスのように無形なものであろうと、そのスタートからゴールまでを計画・企画・実現することがUXデザインだと僕は考えています。


■形や見た目はあくまで結果

プロダクトデザインはUXデザインに近いと書いてみたものの、実際のアウトプットは形あるものですし、業務としてもモノの形状を描いて、計画して作ってもらいます。
デザイナーじゃない人からはよく「この形はかっこいい」とか「このボリュームがかっこ悪い」等の評価もよくもらいます。
しかし、声を大にして言いたいのは「形は計画の結果であって、計画の目的ではない」ということです。

もちろん形を全く考えないと言うことではありません。が、形ありきで先に走ってしまうと、狙いのユーザーやそのプロダクトで解決したい問題への筋道がブレがちです。
むしろ、狙いのユーザーや問題へのソリューションを基準に、現在の姿形は適切かどうかで「かっこいい」のか「かっこわるい」のかを判断したほうが良いと考えています。逆に上のような基準を作れないまま形だけを作ると、必ず個人の好みの話に落ちてしまい、モノとして刺さりにくくなります。

例えば、上のペンがもし100均でパッと買いたい主婦向けの商品だと言われれば、見た目は豪華でしょうが、あるべき場所に収まっていないと言う意味で「かっこわるい」でしょう。奥様方も手にとってくれないです。
不適切と言い換えても良いかもしれません。奉仕作業にタキシードで出席するようなものですね。


■最近あった残念なもの

個人的には良いUXこそが良いモノを生む秘訣だと思っています。
逆にいうと、的はずれなUXは人間側にシステムエラーやバグを引き起こし、そのフォローのためにシステムを複雑化させるなんてこともあります。

(画像:https://matome.naver.jp/odai/2140475782029730001のpbs.twimg.com出典より)

皆さん知ってますか?この画像はいっとき有名になった「セブンカフェ・テプラ事件」です。
有名アートディレクター佐藤可士和さんのプロデュースでできた、めっちゃ見た目がかっこいいコーヒーサーバーです。

が、このプロダクト、死ぬほどボタンの押し間違いが多いのです。そもそも「Regular」と「Large」を「レギュラー」と「ラージ」で覚えているわれわれ日本人としては、頭文字がRかLかをとっさに判断するのは難しいです。
加えて、右に「L」で左に「R」という罠まであります。
一応全てのボタンに案内は描いてあるのですが、見た目をとったがために文字が小さく、肝心のユーザーに届いていません。

結果、テプラが貼りまくられて見た目も悪くなってしまうという悪循環です。テプラによって文字まみれになることで、お客さんに操作の方法を読んでもらわないといけないというストレスすらかけてしまいます。

ここまでの流れ全体で見たとき、このコーヒーサーバーはカッコよかったのかと問われると、なんだか微妙な気持ちにになってしまいます。
むしろ「見た目ばかりかっこよく飾ったもの」になってしまい、長期的にはダメなプロダクトになっています。
見た目ばかりキレイで、肝心の内容が微妙というのは、むしろ上げて下がるパターンですから、はじめから安っぽく期待されていない以上にがっかりさせられます。


■まとめ

僕たちプロダクトデザイナーは、ユーザーがどのように使えば間違いを侵さずスムーズに目的を果たせるかを考えて、その実現方法やそこに付随する体験を設計する設計師です。
厳密に言えば、デザイナーさんはみんな多かれ少なかれこのようなことを考えています。
もっというと、コレさえ意識すれば明日からでも誰でもデザイナーさんになれます。
これからデザイナーを目指しているみなさんも、ちょっとやってみようかなと思っている方々も、ぜひこの考え方を頭の片隅においていただければ嬉しいです。

少しとりとめのない話になりましたが、本日はこのあたりで。
お休みですー

サポートいただけると励みになります!