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「円と自然な生活」のはじまり

鳥のさえずりを聴き、風を感じ、太陽や月の存在に感謝をする。
日々移り変わる季節の彩りと共に生活をした最初の1年は、すべてが初めての体験で、私の人生で忘れることのできない時間となりました。
そんな愛おしくもあり、かけがえのない時を思い出しながら文章として綴っていくことで、大切なことを再確認したいと思っています。


2001年5月、新緑が眩しく、色とりどりの花々が咲き始める美しい季節に、イングリッシュガーデンで過ごす毎日の幕を開けました。

私が英国で一番大好きだったのが最後に働いたウエスト・ディーン・ガーデンズ

初めての海外生活というだけでもドキドキは止まりませんが、それに加えて、体を動かし、野外で仕事をするという人生初挑戦となる時間が始まると思うと、不安と期待が入り混じった気持ちでいっぱいになりました。

それまでの日々といえば、四角い温度管理された部屋の人工的な光の中で、体を動かすことなく、ほとんどの時間を机の前で椅子に座って過ごしているのが当たり前でした。
時々里山保全などの活動をしている団体へ取材に行く以外は、自然との関わりをほとんど感じることはありませんでした。
そのころ、私が働いていたのは社団法人日本ナショナル・トラスト協会という自然環境や歴史環境を守る団体でした。日本でも全国に展開されている活動で、狭山丘陵のトトロの森や知床、鎌倉などが知られています。
「一人の一万ポンドより、一万人の一ポンドを!」をスローガンに掲げたこの団体は後世まで残したい風景をみんなでお金を出し合い、土地や建物を購入し、維持し、公開・利用していくのを目的として作られたボランティア組織です。
この考え方は、今でも私の行動にも大きな影響をもたらしています。

私が渡英したのは他でもない。19世紀に始まった本家本元の英国にあるこの団体で働くためでした。
日本で建築を学び生業にしようと思っていた私は、自分が残したいと思う自然や建物を壊し、新しい物を作っていくことに魅力を感じることができず、まさにその逆を行く活動のボランティアを始めたことがきっかけでこの協会で事務局員になり、英国との共同事業を担当する中で、お声がけいただき渡英を決意したのでした。

英国で最初に働くことになったナショナル・トラストのプロパティー(保有地)はウォデスドン・マナーというロスチャイルド男爵のガーデンでした。
大きなお城のような建物と、建物の周りにある広大な庭、そして庭の先にあるさらに広がる領地に圧倒されたのは言うまでもありません。

英国生活の始まりは、このウォデスドン・マナーから

10名のフルタイムのガーデナーとたくさんのボランティアというガーデンチームに、スチューデント・ガーデナーという位置付けでお世話になることになりました。これが、生まれて初めての季節と自然と共に生きる、野外での生活でした。

ガーデナーという立場もあり、毎日外で土に触れ、お天気を感じ、四季折々の植物に触れることができ、広大な庭園の中で野生に育つ木の実やハーブを知る第一歩を踏み出したことが、現在、自然療法を仕事にすることになったきっかけでもあります。

野外での仕事はもちろん、それぞれの季節にしかない植物や食物を楽しみ、体調に合わせてハーブを摘んでは不調を改善し、自然に寄り添った日々が始まったのです。

8年半のイギリス生活は一度も都会に住まうことなく、カントリーサイドにある大きなお屋敷のガーデナーとして働き、ヒッピーなパートナーとパーマカルチャーな生き方を模索し、教会建築家のアシスタントとして自然のものから作られた何百年も自然とともにあり続けている古建築に携わる仕事に携わることができました。

古い建物の修復や改築のお仕事はとても刺激的でした

これから1年間、毎月1話ずつ、私が体験した英国と日本のナチュラルでホリスティックな生活についてお話ししていきます。

楽しみにしていてくださいね!

藤田 円