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夏目漱石「明暗」を読み始める。

このところ漱石の後期の作品を読み続けてきましたが、初期の作品のうち、「二百十日」、「抗夫」、「野分」、「虞美人草」は読んでいません。
「明暗」は一度読みましたが、たぶん20歳代の頃だったろうと思います。
印象的には、暗い読後感しか記憶にありません。
初期の上記の作品を読むか、後期の作品の続きで「明暗」を再読するか迷いました。
漱石の思想を時間に沿って追うことができるかと思い、結果として「明暗」を再読することとしました。
もう50年くらい前に読んだわけですから、ほとんど初めて読むものと変わりありません。

本書は大正5年に新聞連載として188回掲載されましたが、漱石が死去したため未完の遺作となりました。
わたしは現時点で半分くらいのところを読んでいます。
本書は41回までは、主人公の津田由雄の視点で描かれていますが、42回以降90回までは妻お延の視点で描かれています。
この後の回での視点は、さらに他に展開するのか読んでいないのでまだわかりません。

90回までのあらすじを以下に記します。

津田由雄は、痔を患い手術を受けることとなった。
たまたま父からの毎月の資金援助が届かなかったため、経済的に困窮する。
これは賞与で返済するという当初の約束を履行しなかったことによる。
手術の入院のため妻のお延も一緒に病院にくるが、その日は前から岡本(お延の叔父)から芝居に誘われていた。
由雄からも芝居に行くようにすすめられたため、お延は芝居見物をすることとなったが、じつは叔父の長女継子のお見合いの席でもあった。
翌日、お延は叔父からお見合いの相手方の印象を聞かれて話すことを躊躇する。
自分の結婚は、自身が由雄を見込んで結婚したのだが、半年ほど経過した今は、由雄からの愛情に対する自信を失いかけていた。
叔父からお延の直感は的を得ているような言われ方をしたりして、逆に感情的になり泣き出してしまうこととなる。
その翌日は由雄の見舞いに出ようとすると、由雄の友人の小林が訪ねてきて由雄の外套をもらい受けにきた。
事情が分からず由雄の許可を得るため、下女のお時に電話させたが通じないために、お時は直接病院に行ってしまう。
お時が帰ってきて由雄の許可を得たことから、小林に外套を渡して帰ってもらう。
長い時間小林と一緒にいて、この癖のある男からいろいろと言われて傷つくこととなる。
お時から病院に由雄の妹お秀が訪れていることを知った。

まだ、感想をまとめることはできませんが、現時点では、この二人の視点による「世界」というか「世の中」というかが、描かれているものと思います。
登場人物の性格描写と視点の人物の心理描写によって、人間社会が描かれています。

「行人」に書かれた一節「塵労」ついての漱石の記述を思い返しています。
本書の背景には、そこに書かれていた漱石の考えが投影されているのではないかと思いますが、ここら辺は読み終わったときにあらためてわたしなりの考えをまとめたいと思います。

 今後の展開にますます興味をそそられながら、91回以降の後半へと読みすすめていきます。


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