Tesla×Hertz×Uberの戦略的連携は3社の戦略ループを全て回転させる見事な戦略だ!
今回は、米レンタカー事業者大手の「Hertz(ハーツ)」が米EV大手の「Tesla(テスラ)」から10万台を受注し、そのTesla車を使って自動車を所有しない人でもUberドライバーとして収入を得られるようになる、というニュースを戦略ループで図解します。
まずはテスラがハーツからの10万台の受注を受けて、株価が爆上げしたというニュースから。
テスラは直近の四半期(2021年7〜9月期)で約24万台で生産しているので、10万台の受注がいかに大きいかわかると思います。
そしてこの爆上げ。
$900だった株価が、たったの1日で$1100近くまであげました😮 テスラ株を買っときゃよかった…。
さらにハーツ株も爆上げです。
さらにさらに! 今度はハーツがウーバーと提携して、テスラ車5万台をウーバードライバーに提供するとのニュースが!
ウーバーは以前から、車を所有しない人に向けてレンタカーでウーバードライバーになれるサービスを提供していました。そして、今回はテスラ車を使えるという話。
今回ウーバードライバーがテスラ車を使えるメリットは、「Green Future Program(グリーン・フューチャー・プログラム)」に参加できることです。
これはアメリカで、ウーバードライバーがガソリン車から電気自動車などに切り替えることで、配車1回あたり1ドル報酬が上乗せさせるプログラム。これでドライバーの報酬が最大で年間4000ドル(45万円)増加するとのこと。
…ということで3社が入り乱れた戦略ですが、例によって筆者のループ図で説明したいと思います。ループ図の読み方については、以下の記事を参照ください。
まずは、起点になる「ハーツがテスラ車10万台をレンタル可能にする」というところから。
株が爆上げしたテスラですが、当然ながら生産台数が増えれば利益が増えます。増えた利益で生産能力を強化すれば、さらに顧客が増えるという循環が存在しています。
これは製造業としては一般的な戦略ループの形です。規模の経済や経験曲線効果で利益が増えます。
テスラは今年(2021年)の半導体不足もモノともせず、生産台数を前年比で20%も上げてきてます。そこに10万台の受注ですから、株価の爆上げは言わずもがな。
次に、ハーツとウーバーのループを見てみましょう。
テスラ車のレンタカーが増加し、ウーバーのグリーンプログラムの地域が拡大すれば、車を所有しない人でも気軽にウーバードライバーになって報酬が稼げます。
だから台数と対象地域が増えるほど、レンタルのウーバードライバーが増加する。
レンタルでウーバーを営む人が増えれば、ハーツにとってはレンタル料が徴収できるので利益につながる(上図、上段)。
同様に、これまでウーバーのドライバーじゃなかった人が、グリーンプログラムの追加報酬を求めてドライバーになれば、ウーバーの利益も増える(上図、下段)。
そして両者の事業が拡大すればするほど、テスラもさらに多くのテスラ車を納品することになるかもしれません。
まさに、戦略的提携のお手本のような取り組み!
三社三様に、それぞれの主要ビジネスのループが加速する戦略です。3つのループのつながりが美しいですよね。
ちなみにレンタカー大手のハーツについては、2020年にコロナ禍の影響でレンタカー需要が減り、経営が厳しくなって事実上の破綻(チャプター11申請)をしていました。
現在は、フォードやマツダの社長を歴任したフィールズ氏がハーツの舵を取りながら再建に取り組んでいるのですが、今回の意思決定も経営再建の一環でしょう。
コロナ禍も下火になって、人々の動きが活発になればハーツの業績もV字回復するかも。テスラやウーバーだけでなく、ハーツの今後の動きにも注目です!
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