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NPOこそタイムマシン経営を

こんにちは.NPO法人にいまーるの吉井と申します.

にいまーるは

• 聴こえる⼈と聴こえない⼈がお互いに⾼め合える場を作る
• 社会的少数派(マイノリティ)の⽣きづらさを解消する
• 聴覚障害者の社会資源を拡充する(ゆりかごから墓場まで)

を理念に聴覚障害者の就労支援,生活支援を主として事業を展開しています.

■NPO法人にいまーる
HP:http://niimaru.or.jp/
note:https://note.com/niimaru20

NPOで働き始めてまだ間もない立場ではありますが,この業界について調べていると,色々と物申したいことも出てくるわけです.

今回は日本のNPO法人の賃金が低いという点から一つ提言をしてみたいと思います.その提言こそがタイトルになります. 

1,タイムマシン経営とは

ソフトバンクの孫正義さんが積極的に推進して有名になった言葉ですが,
欧米など海外で成功したビジネスモデルをいち早く日本に持ち込み,事業として立ち上げる経営手法のことです.

孫さんがこれを実行していた1990年代 ~2000年代初期にかけてのインターネットバブルの時代はアメリカやヨーロッパのインターネットビジネスは日本のかなり先をいっており,
日本とのタイムラグが数年あったと言われ,タイムマシンで未来からビジネスアイデアを持ってきたかのごとく,ビジネスを成功させることができたというわけです.

ビジネスやっている方なら誰でも知っているとは思いますが,
タイムマシン経営という言葉をご存知ない方のために一応.

インターネットバブルの時期は,日本と海外で数年単位のタイムラグありましたが,2021年現在ではスマホやSNSの普及によって海外との情報格差はなくなり,
「タイムマシン経営」が曲がり角を迎えている状況です.

…が,

今も尚,情報格差がある世界があるわけで,
それが身体障害による情報格差ですが,
この辺りはご周知の通りかと思いますので割愛します.

2.アメリカはNPO先進国という事実

さて,海外の進んだ取り組みをさっさと日本に取り入れるというのがタイムマシン経営だと説明しましたが,
ここで取り入れるべき対象は「アメリカ」です.

NPOにお勤めの方は,ご存知の方も多いかと思いますが,
アメリカは「NPO先進国」です.
そもそもNPOという言葉自体アメリカで生まれたものであり,
日本ではまだまだNPOは無償のボランティアというイメージを持った人も多い中.
アメリカのNPOでは職員は専門性を持ったプロとして働き,生活していくのに十分な給料ももらっています.
(そもそもアメリカと日本でNPOの定義が少し違うので,単純に比較していいのかという論点はありますが,その点はまた後日にでも)


■給与面

一番わかりやすいので,まず給与面について比べてみると
日本では,全国のNPO法人の常勤職員の給料は平均年収231万円となっています.(引用元:内閣府「特定非営利活動法人に関する実態調査」)

対してアメリカのNPOの平均年収は、役職や立場ごとに以下のようになっています

* 事務局長…56,000ドル
* 役員補佐…49,000ドル
* プログラムマネージャー…64,000ドル
* プログラムディレクター…67,000ドル
* プログラムコーディネーター…41,000ドル
* 経理部長…51,000ドル
(引用元:Non-Profit Organization Salary | PayScale)

日本円に換算すると倍以上の差があるかと思います.

■社会的ステータス

アメリカが社会貢献の先進国と呼ばれる理由として
NPOの数や規模,寄付金額 が圧倒的に多いことや,
またNPOの社会的なステータスが企業と同等に高いということが挙げられます.
その象徴的な例として,アメリカの就職人気ランキングを以下に示します.

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2013アメリカ大学生の文系就職先の人気ランキング(★印がNPO)
(引用元:社会貢献活動の参考モデルの調査について
https://www.pref.chiba.lg.jp/kkbunka/npo/kaigai/index.html)
※ 読みやすい日本語のレポートなのでぜひ読んでみてください.

2013年と少し古いデータなのですが,NPOが名だたる有名企業と同じように,
若者か支持されており,憧れの対象となっているのがわかるかと思います.
社会貢献をしていて,なおかつ一般企業に引けを取らない給与が貰えるなら,NPOを選びたくもなると思います.

わかりやすくてキャッチーな例を挙げましたが,
ここまで見ていただければアメリカのNPOから学ぶことが何かありそうだと感じてきたのではないでしょうか.

3.助成金,補助金頼みの経営はやめよう

本題に戻しますが,
初めに申し上げた通り,本記事は経営論についての記事です.

そもそも「非営利事業」というのはお金になりません.
「お金にならないことだけど,社会的には必要だよね」ってことをやってるのがNPOです.

だから政府や財団が,補助金・助成金をNPOに割り当てており,
実際日本のNPOの財務諸表を見てみると,経常収益のほとんどが補助金・助成金で成り立っています.

もらったお金なんだから,そりゃ事業に使うべきだし,給料を高くするわけにはいかないです.

じゃあなぜアメリカのNPOはこんなに稼げているのかというと,多くのNPOが当たり前のように「営利の子会社」をもっているからです.補助金・助成金に頼るのではなく,「事業収益を上げれば良いよね」って考え方です.

非営利事業は儲かるものではないので,営利ビジネスを並行して行い,その売り上げを非営利事業の活動資金に充てるといったモデルがアメリカNPOから学ぶべき部分だと考えています.
ここが本記事の結論になります.

※子会社を作るのは,税控除団体の資格を維持するため,大きくなり過ぎた収益事業部門を,新たに営利の子会社を設立して移行させるって理由もあるみたいです

4.おわりに:なぜ日本は変わらないのか

こんなことNPOの関係者なら知ってる話かもしれないですが,
実際このモデルでやっているNPOはあまりないような気がしています.

答えは単純で,「国がお金をくれるから」.
もらったお金で事業をやるなんて,正直ビジネスマインドなんて醸成されないと思ってます.

おまけに日本NPOをやる人たちの多くは,
「目の前の人が可哀想だから」,「助けたい」なんていう
「想い」だけで突っ走ってる人が多いような気がしてます.

それも大切なことなんだけど,給料が少なかったら優秀な人材は辞めていくだろうし,
稼ぐことを諦めている組織は持続可能ではないと思います.

アメリカで子会社持った事業型NPOが主流になったのは,
1980年代にレーガン政権の発足以降,NPOへの政府補助金や委託金は大幅にカットされたからです.
国からお金が出なくなって,自分たちで活動資金を稼がざるを得なかったから,
今のモデルが出来上がりました.

日本も今すぐではないにせよ,国の一声でNPOに予算がつかなくなる可能性があるわけで…

NPOさん,ちょっと真面目にビジネスしてみませんか.

■吉井大基
Twitter:https://twitter.com/dyoshy_
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■NPO法人にいまーる
HP:http://niimaru.or.jp/


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