旧共産遺産

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以前、外国を回って遺跡や廃墟の写真を撮っているカメラマンさんの個展を、大阪は日本橋にある画廊モモモグラさんで催すよ!というお知らせと共に見た写真。巨大な、なんだかよくわからない建造物の内部で撮られたであろう、そのインパクトが凄くって。その後に出版された、そのカメラマン星野藍さんの写真集
旧共産遺産
は、そん時に展示された写真が載っている本だったはずだ。あの写真、パネルで見たらもっと迫力あったんだろうなーと思いつつ。その異様な威容を放つ建物のことがずっと頭に残っていた。あの本、欲しいなあ。と思ってから暫く経って。
久しぶりに訪れた名古屋の特殊書店ビブリオマニアさんで、不意にその表紙と再会してしまった。しかも今度は画面越しではなく、目の前に新品で置かれていて、私はその本を買うお金をちゃんと持ってて、レジまで2メートルしか離れていない。両手両足すこぶる健康、このあと時間もたっぷりある。
本屋さんの片隅で読書の神様(たぶん荒俣宏さんに激似)が加藤保憲のコスプレで
読め!!!!
と言ってくれたんだと思う。ドーマンセーマンの手袋して。お前どんだけ帝都大戦好きなんだ。

で旧共産遺産。表紙になっているのはハンガリーのケレンフェルド発電所の内部。無数のパネルにスイッチや配線、メーターが並んでいる。びっしりと、キッチリと。実相寺昭雄が監督した円谷特撮みてえだな…と、ウルトラマンが好きな人なら思うんじゃないかな。私の第一印象はソレだったもん。ウルトラセブンのシブいエピソードにありそう、って。
この本に収録されているのは旧共産圏と呼ばれるバルカン半島周辺の国々で、かつて無数に建造された施設やモニュメントの現在の姿。そしてギリシャやキプロスの廃墟も。星野藍さんいわくオマケ的に収録したとのことだが、それにしたって凄まじい写真の数々。
日本の常識、様式、形式には似ても似つかない、ホントに突拍子もないモノを撮る映画監督が用意させたようなものが平然と佇み月日を経て朽ちたり錆びたり緑にうずもれたりしているのだ。
こんな場所が、この地球の何処かに存在しているんだ…
それもキャプションによれば立ち入りが困難な場所もあれば、近所の人々がフツーにジョギングや散歩に訪れていたり、定期的なイベントが開かれていたりと馴染のある場所として残っているものもある。海外の人が日本でもお城とか木造建築のお屋敷を見て思う事と近いのかも知れない。たぶん。
その国の成り立ち、歴史、プロパガンダ、事件、戦争、そこにかかわった無数の人間の念が具現化したような形と姿をしている。中にはスポメニックと呼ばれる戦争記念碑もあり、これがまた色んなものを象徴しているということで…どれもこれも、まあ不思議な形をとっている。宇宙人の顔みたいだったり、巨大な宇宙生物みたいだったり(ウルトラセブンに出てくるアイロス星人みたいなやつがある)魔法使いの家みたいだったり。
圧巻なのがマケドニアのイリンデンモニュメントと、ブルガリアの共産党ホールの廃墟。この2つと、表紙にもなっているトップバッターのハンガリーはケレンフェルド発電所が特にお気に入りだ。
この旧共産遺産という本に、どんな形のどんな建造物が載っているかを、正直ここで説明するのは不可能に近い。筆舌に尽くしがたい、という言葉をリアルに使うことになるとは。熱が出た時の夢の話をするようなもので、野暮だし無駄だと思う。興味がわいた方は、是非お買い求めになられるか、名古屋市は栄にある特殊書店ビブリオマニアさんでご覧になってみるといいと思う。このデカさ、厚さ、重さ、そして中身の迫力。良い買い物をした。この前も書いたけど、ホントに大概のマニアックなジャンルはビブリオマニアさん行けば何とかなる。少なくとも団地や建物に関しては、今回なんとかなった。そして鉄道も、なった。ホラーにオカルト宗教、映画怪獣性にエロスに文学にと。多分、私が見てもわからない棚が誰かにとっては宝の山なんだろうなって思うと。あの空間が全部愛おしくなる。その愛すべき宝箱のドアを再び開ける日が楽しみだ。

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