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フィルムと現像液の使い分け・組み合わせ例

過去の記事で、モノクロフィルムの銘柄による描写の違いや、現像液による特性の違いについて書きました。


今回は、より具体的に、僕が実際にどんな場合にどのフィルムと現像液を組み合わせて使っているのか、という実例のお話をしていきます。


はじめに

モノクロフィルムと現像液の組み合わせというのは無限に存在します。

フィルムのパッケージ裏にいくつかの現像液の現像時間が記載されていることがありますが、そこに載っていない現像液との組み合わせがダメかというと全くそんなことはありません。

そこに記載されていないのは、記載するときりがないから記載していないだけです。多分。

そして、現像データというのは参考になれど、参考にしかならないという事を覚えておきましょう。

どういうことかというと、ある人にとっては最良の選択でも、それがあなたにとっての最良であるかは別の話だからです。それは、あなたとあなた以外の人の好みの違いによるものです。

なので、フィルムの特性や現像液の能力を考慮して提示されている現像データも、あくまで基準であって、最終的にそれが良いかどうか、さらにそこから調整を加えるかどうかは個々の感性に委ねられるところがおおきいです。

また、アナログ写真は手作業故に、個々の環境や塩梅によって微妙な誤差が生まれます。その小さな誤差の積み重ねがトータルすると大きな誤差になり、それは癖と呼ばれます。

この、好みの違いや癖によって、同じフィルムと現像液の組み合わせでも全く違う描写の写真が生まれる可能性と言うのは大いにあり得る事です。

極端なことを言ってしまえば、アナログ写真に客観的な正解はないし失敗もないということ。


うーん、ここから先の話がなにも参考にならないような気がしてきた。


4つのパターン

ここから、僕の普段のフィルムと現像液の使い分けについて説明をしていきます。

わかりやすいように、4つのパターンに分けて説明をしていきます。

トーン重視・常用パターン

シャープネス重視・アーティスティックパターン

枚数重視・ポートレートパターン

高感度重視・スピードパターン

名前は便宜上即席でつけたものなので意味はありませんが、大体使い分けとしては4パターンに分類して使い分けをしています。

フィルムと現像液の組み合わせ、その理由をそれぞれ説明します。


トーン重視・常用パターン

これは、何も考えずにとりあえず普段使いとして過不足なく写真が撮れることを念頭においた組み合わせです。

フィルム:Fomapan400 + 現像液:Atomal49 ISO400

常用なので、一番大量に消費することを考えて、なるべくコストが安いフィルムを選んだ結果Fomapanに行きつきました。

Fomapanには100、200、400と感度別に種類がありますが、僕は400を常用にしています。

そのFomapan400と組み合わせるとトーンが滑らかで白飛び、黒潰れしにくい補正効果を発揮するAtomal49が相性が良いとの評判を聞き、この組み合わせを使っています。

画的にはくっきりはっきりとしたコントラストではないので、場合によっては全体的にグレーなネムい画になりがちですが、気合を入れた作品撮りと言うよりはきちんと写っているということが最優先なので、あまり画の質にはこだわらない場合に使っています。現場監督28WBやPen D2などに入れてスナップで使うことも多いです。


シャープネス重視・アーティスティックパターン

これは上記の常用パターンと比較して、よりコントラストの強い画が欲しい時や、シャープさに振ったかっこいい画が欲しいときに使うパターンです。

フィルム:Fomapan100 or 400 + 現像液:Rodinal ISO100~200

フィルム:Rollei Retro400s + 現像液:Silversalt ISO400

フィルム:ORWO UN54 + 現像液:Silversalt ISO100

同じFomapan400でも、Atomalと比べてRodinalで処理することで白黒のコントラストが強く出て輪郭がシャープではっきりとした描写になります。Rodinalはシャープさが強調される代わりにフィルムの感度があまり出せないようなので、一段下げたISO200で撮ります。更に強い黒が欲しいときはFomapan100を使います。

Rollei Retro400sやORWO UN54は元々のフィルムの黒の深みが好きなので、それに期待して選ぶ時があります。現像は、トーンにもシャープさにも重きを置いたSilversaltという最新の現像液を使用しています。

このパターンのときはシャープな描写をするレンズや比較的年式の新しいレンズを使用することが多いです。レトロな描写よりも、どちらかといえば現代的な描写にしたいときに選びます。


枚数重視・ポートレートパターン

これは短時間で大量のフィルムを消費するポートレート撮影のときのパターンです。

フィルム:Kentmere100 of 400 + 現像液:Silversalt ISO100,400

これはまだ暫定的な組み合わせで、現像液はRodinalも検討中。

Kentmereは100ft缶で比較的安価に入手できるため、大量に消費するポートレート撮影においてコストを抑えるために使用しています。同様に安価なFomapanに比べて描写に癖が少なく、粒状性が滑らかなのでポートレート撮影に使いやすいフィルムだと思います。

自然光や定常光で撮影するときはISO400、ストロボを使う時はISO100かISO400で使い分けます。


高感度重視・スピードパターン

これは、描写の質よりも高いISO感度で撮影することを優先にした組み合わせで、暗所での撮影や動態を撮るため速いシャッターを切りたいときなどに選びます。

フィルム:Kentmere100 or 400 + 現像液:Speedmajor ISO200~1600

Speedmajorは増感処理用の現像液で、フィルムの表記感度よりも高い感度で撮影することが可能になります。

ISO100のフィルムは400まで、ISO400のフィルムは800か1600に増感処理をして使用しています。

粒子の荒れやコントラストの上昇がでるため、繊細な描写は期待できませんが、ライブステージの撮影や、望遠レンズを使用する際のブレ防止に高速シャッターを切りたいときなど高ISO感度が必要な時に使う組み合わせです。

フィルムには増感処理に対して向き不向きがあるようで、Fomapanはあまり増感処理に向かないようなので、増感用にKentmereを用いています。


まとめ

用途別では、常用、アーティスティック、ポートレート、スピードとそれぞれに要求される条件が異なる場面別で使い分けています。

ISO感度別では、低感度(~ISO200)をRodinalで、パッケージ表記通りの感度(~ISO400)をAtomal49とSilversalt、増感処理をして高感度(~ISO1600)をSpeedmajorと言う感じで現像液を使い分けています。


3年くらい前まではFUJIのACROSS100しか使っていませんでしたが、生産終了のうわさが流れ始めた頃に常用フィルムの乗り換えを検討し始め、色々な銘柄を使い比べて自分の好みがわかるようになって、今ようやく使い分けができるようになってきました。

まだ興味のあるフィルムはほかにも沢山ありますし、現像液も使ったことのないものが多いので、これからも色々試していきたいと思っています。

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