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ドリアンのマタイ・ワールド

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マタイ福音書ノートの目次
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2021年3月の記事一覧

深い後悔、絶望に終わらぬために

マタイ27:1-10 事故物件の取り扱いはいろいろと限られてくるものです。2000年前に起きた一つの自殺もそうでした。 イスカリオテのユダが自殺して、ユダから投げ返されたお金をどうするかが問題となります。神殿で使うわけにはいかない。 それで、ユダヤ人にとっては、おそらく当時、すでに多く存在していた「外国人巡礼者」で巡礼のさなかで死亡した人の墓地をどうするか、という問題があったのでしょう。 神殿も、ユダヤ人男性が入ってよい区域、ユダヤ人女性が入ってよい区域、その外側にあ

自分を知る時

マタイ26:69-75 いざという時に自分がどう行動するのか。 いろいろな危機管理の想定はありますが、個人の危機管理は、なかなか難しいものです。いざという時に、自分がどうするかわからない、というところが正直なところ。 もしかしたら、その時の姿が、自分で知らなかった本当の自分かも。 そうした記録が、福音書にあります。一番弟子を自認していたと思えるペテロの失敗談が赤裸々に記されているのです。イエス・キリストの一番弟子でもそうなのか、と、安心させてくれるための物語かと思える

宗教のシンにある神の真理

マタイ26:57-68 インドネシアでは、長い間、公認宗教が五つに定められていました。(今では六つになっています。) 国民は、そのどれかの宗教に所属していることを記載しているIDカードを持っています。外国人も、必ず何の宗教か、携帯するカードに記載。 そういう国で、日本には無宗教を標榜する人がいる、と言うと、怪訝な感じをもたれます。 でも、「宗教」とは何か、という点で、一般には日本とは違った理解があるかもしれません。 インドネシア政府が言う「宗教」の要件は、唯一神の信仰

イエスの捕縛

マタイ26:47-56 聖書をドラマ仕立てで映像にしているものが多数あります。 映画だと、古くは、「十戒」。1956年のハリウッド映画で、イスラエルがエジプトから脱出する話が描かれています。圧巻は、エジプト軍に追われて逃げ場なく海岸におびえて立つ百万の群衆が、モーセが指示した杖の先の海が左右に分かれ、乾いた道となって、そこを群衆が逃げ行く場面。 マタイの福音書も、聖書の言葉通りのナレーションとセリフで作製されたドラマがあります。イエス・キリストの捕縛の場面は、そうしたド

「油しぼりの園」での祈り

マタイ26:36-46 この頃は住宅街を散歩すると庭木にオリーブをよく見かけます。瀬戸内海地方で生産されるオリーブ・オイルもけっこうでまわっています。アニメの「ポパイ」で見るオリーブくらいしか知らなかった世代にとっては、今の日本は世界の食材がすぐ手元にあるのが不思議です。 「油しぼりの園」とタイトルに書きましたが、地名は「ゲッセマネ」。ゲッセマネの意味が、「油しぼり」なのでした。オリーブ山と呼ばれる丘陵の中にある油しぼりの場所だったのでしょう。谷を挟んだ隣の丘の都市が、エ

最後の授業

マタイ26:30-36 目標を立てて、それが実現することを信じて、喜びながらなすべきことにまい進する。それができたら、こわいものはないかも。 イエス・キリストと一緒に過ごして、多くのことを学んできた弟子たちは、ちょうどそんな感じでまい進中だったかもしれません。 ところがイエス・キリストは、高価な香油を無駄に捨てるような女の行為に対して「わたしの葬りの用意」と語り、二日前には「人の子は十字架につけられるために引き渡される」と予告し、楽しいはずの過越の食事では、「わたしのか

ミステリー完結に向けて…過越の祭前のイエス殺害の策略

マタイ26:1-5 毎日が天国だったら、どんなことになるでしょうか。マタイの福音書は、「天国のミステリー(奥義)」をまとめたもの、とも言えそうです。その結末が、イエス・キリストの受難と復活。 「受難週」と呼ばれる、イエス・キリストが十字架で死ぬ日までの1週間。マタイは福音書の21~27章で描きます。最後の28章は復活後の話。 イエス・キリストの三十数年の地上生涯のうち受難週の記録が、福音書の約3分の1を占めています。ここには、この世の終わりはどうなるか、というイエス・キ

イエスの葬りの用意をしたただ一人の人マリヤ

マタイ26:6-13 生前葬というのを、今では時々話を聞きます。2000年前に、それをイエス・キリストに対して行った女性がいました。ベタニヤのマリヤです。「葬りの用意をした」、といって、生前葬だったのです。 他の弟子たちはカンカンになって怒ります。なぜだったのか。それより、マリヤはなぜ生前葬をしたのか。実際、それから1週間目にイエス・キリストは十字架にかけられ殺されたのでした。 さて、イエスがベタニヤで、重い皮膚病の人シモンの家におられたとき、ひとりの女が、高価な香油が

パンと葡萄

マタイ26:26-29 インドネシアに暮らしていると、日本の主食は何?と、時々尋ねられます。まだ「コメのご飯」でいいのでしょうね。 インド北部だったらチャパティとかナンとか。中東もそうしたパンです。 ユダヤの三大祭の一つ、過越の祭の食事では、イーストの入らないクラッカーのような「パン」や苦菜、子羊の肉を食べるように、旧約聖書では規定されていました。紀元前15世紀 (異説あり)のエジプト脱出を記念する祭です。 新約聖書に記される「過越」はギリシャ語でパスカと呼ばれ、イン