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ミステリー完結に向けて…過越の祭前のイエス殺害の策略

マタイ26:1-5

毎日が天国だったら、どんなことになるでしょうか。マタイの福音書は、「天国のミステリー(奥義)」をまとめたもの、とも言えそうです。その結末が、イエス・キリストの受難と復活。

「受難週」と呼ばれる、イエス・キリストが十字架で死ぬ日までの1週間。マタイは福音書の21~27章で描きます。最後の28章は復活後の話。

イエス・キリストの三十数年の地上生涯のうち受難週の記録が、福音書の約3分の1を占めています。ここには、この世の終わりはどうなるか、というイエス・キリストの長い預言説教も含まれています。この終末説教が終わったところから、次のように続きます。

イエスはこれらの言葉をすべて語り終えてから、弟子たちに言われた。「あなたがたが知っているとおり、ふつかの後には過越の祭になるが、人の子は十字架につけられるために引き渡される」。そのとき、祭司長たちや民の長老たちが、カヤパという大祭司の中庭に集まり、策略をもってイエスを捕えて殺そうと相談した。しかし彼らは言った、「祭の間はいけない。民衆の中に騒ぎが起るかも知れない」。

マタイによる福音書26章1-5節


過越の祭

ふつかの後には、とあります。

今の私たちの生活では、夜中の12時で日付が変わるので、新年のカウントダウンは必ず夜中。でもユダヤ人の暦は日没から一日が始まります。創世記で、「夕となり、また朝となった」と一日の区切りが書かれている通りです。

というわけで、「過越の祭」は、私たちのカレンダーで木曜日の日没から始まります。

また、「ふつかの後には過越の祭になる」は、会話をしているその日を含んで二日目、という数え方をしていたようです。この会話が、そういう数え方でいわれていたなら、水曜日の出来事だったかも、と考えることもできます。私たちの言う「火曜日」の日没後でもあてはまります。

そして、ここの会話は、日中、明るいところでなされたというより、日没後、暗がりの中で、室内の照明もLEDの輝かしい明りではなく、仄かなともし火がくゆっているところで交わされていたのがふさわしいと想像されます。


イエス・キリストの予告

単純明快な予告を弟子たちは聞かされます。

人の子は十字架につけられるために引き渡される。

過越の祭は、ユダヤ人にとっては、民族国家の起源となる「出エジプト」を記念する、一大イベント。世界のあちこち、遠くに「離散」しているユダヤ人も、この時にはエルサレムに巡礼に来るので、エルサレムには、ユダヤ人があふれかえっているのです。「ふつかの後」と言っているこの時も、もう人数としては頂点に近かったでしょう。

家族単位でなされる「過越の食事」には、小さな子どもも楽しく夜中まで儀式に参加できるプログラムが用意されていて、お祝い気分に満ちている時期。

その楽しさを粉砕する言葉です。弟子たちはイエスが王・キリストだと信じてここまでついてきて、民族意識高揚する祭で過越しの食事で気勢を上げるつもりでいたかもしれません。それが、完璧に吹き飛ばされたはずです。

それにしても、明日のことも何が起こるか知りえない私たちには、「ふつかの後には」という予告は、敵の計画を偵察して知り尽くしているから、と思えてしまいます。ところが、その「敵」は、まだ混乱のさなかにありました。

殺そうと相談…

世界中からユダヤ人が集まって、一年でも一番にぎやかな時期の一つ。そこで、イエスを捕らえて殺したら、どうなるか。

民衆は、イエスが「王」になる人物だ、神の預言者だ、と、本気で信じていました。だから、ユダヤ教の指導者たちといえども、イエスにうかつには手を出せなかったのです。なおさら、祭で熱狂的になっているユダヤ人が集まっているさなかには、何もできない、と考えていました。

捕らえるにしても、祭が終わって、静かになってからにしよう、と。

ですから、イエス・キリストはスパイ活動で情報を得て、「ふつかの後」に始まる過越の祭のさなかに捕らえられ、十字架にかけられる、と言ったわけではありませんでした。

そして、事はイエス・キリストの予告どおりに起こります。

全くミステリー小説を読んでいるような感じです。
旧約聖書のいろいろな「預言」の言葉をもとに作り上げた物語、神話だ、と考えたくなるのも不思議ではありません。

で、本当はどうだったのでしょうか。マタイという弟子になりすました集団が、イエス伝説をもとに創作したものか、それとも事実、イエスは事前に予告していたのか。

これこそミステリーですね。

歴史上、一度しか起きなかった、大事件。その核心部分が、ここから語られていきます。

真実は何か、何を信じるか、判断は私たちにゆだねられている記録です。

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