見出し画像

【翻訳】幻想作家ロード・ダンセイニ、インドを詠う ~①~

From Dream to Dream
夢から夢へ

タージ・マハルのはじまりは、
(かつて夢を、空想を求めて全てを為した)皇帝の悲哀。
三百年前に皇帝シャー・ジャハーンを襲った苦痛を
行き交う何千もの民が眺める、何も知らずして。

紺碧の夕にアクバル廟の上から目をやると、
落暉の空をこえて、地平線に見える淡い桃色。
片側に宙に浮く影を、もう片側に幽けき光を映す。
再び夢へと帰る、黄昏のタージ・マハル。




ロード・ダンセイニは、創作神話の先駆けとなる作品『ペガーナの神々』を1905年に、ファンタジー文学の名作『エルフランドの王女』を1924年に発表した作家です。また、以下の記事で紹介しましたように、東洋趣味のある人物でもあります。

自伝While The Sirens Sleptによると、この人物は妻と一緒に、1929年11月にムールタン号に乗ってインドへ出発しました。ダンセイニ男爵夫妻のこのインド旅行には、次のような理由がありました。

こういった人物――貴族が顔を合わせる人物であるがゆえに、人物の凄さが異様に桁違いです――に会う目的をともなったインド旅行で、ダンセイニ男爵夫妻は最初にインド西部の大都市のボンベイ(ムンバイ)に着くと、汽車に乗ってインド中部のボーパールへ向かいます(その汽車で、月光に照らされる西ガーツ山脈を目にし、その後、ジャージー伯爵夫人の知己であるボーパール藩王国の太守に会いました)。

ロード・ダンセイニはボーパールで狩りや、インド音楽の演奏などを満喫した後、夫人とともに、タージ・マハルのあるアーグラ経由で、デリーに向かいます。

そのアーグラで二人は、月明かりに照らされるタージ・マハルを目にします。そしてロード・ダンセイニは12月14日、ムガル帝国の皇帝アクバルの廟から見ると夕方の地平線のかなたでそびえ立つように目に映ったタージ・マハルの印象を、上掲の詩という形で記しました。

タージ・マハルに関して、ロード・ダンセイニはもう一篇の詩を残していますが、こちらの紹介はまた近いうちに致したく思います。

今回の記事を読んで下さった皆様に、深謝を申し上げます。




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?