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”フリーランス出産”の地獄。会社員とこんなに違う一産休・育休0日。それでも乗り越えるには一

定時もなければ、残業もない。働いた分だけ稼げ、場所にも縛られない働き方ーー。

それがメディアで喧伝されるフリーランスのイメージです。しかし、「自由な働き方」と言われるフリーランスには、思わぬ落とし穴があります。

それは出産育児のタイミングで訪れます。あれだけ「自由な働き方」をしていた彼女たちが、「不自由な子育て」に頭を抱えるのです。

特に産休や育休がないフリーランス女性は、子育てと仕事の両立が困難であることが少なくありません。

では、彼女たちはどのようにして稼ぎと生活を維持できるのか。

フリーランス、そして小規模経営者女性の知られざる苦悩と、その対策をこれまで1,000名以上のフリーランス、女性経営者と接してきたプロが答えます。

フリーランスは産休0日。育休、手当もない

筆者は現在、働きながらこれから出産を考えるフリーランスや女性経営者に対して、産前産後の不安を解消し乗り越えられるように、ビジネスを伸ばすためのサポートを行っています。

「子育て中だからこそ、仕事が加速する」というコンセプトのもと、具体的には、ビジネス・子育て・パートナーの知識を身につける定期的な講座、各専門家への個別相談、ビジネスディスカッションなどを開催しています。

フリーランスの女性(以後、ひとり社長など小規模での女性経営者も本記事ではフリーランスと呼ぶ)たちは、自由な「働き方」を手に入れている一方、「休み方」についてはかなりの辛酸を舐めている現状があります。

そもそも彼女たちは雇用関係にない(※)ため産休や育休が取得できません。

全国健康保険協会に入っていれば受け取れる出産手当金や、雇用保険に加入している人が受け取れる育児休業給付金もないため、定められた休みはなく、産前の収入を確保したい場合、働きながら妊娠~出産そして育児をせざるを得ないのです。

苦しいのは制度だけではありません。

会社員とフリーランス、働き方で支援が違うことは彼女たちのメンタルにも影響を与えています。

ここで紹介するのは、筆者が代表を務める会社で行ったこれから出産を考える女性たち309人を対象に行なった「不安の実態」の調査結果です。

結論を急げば、フリーランスの女性たちは会社員と同様に出産に対して不安を抱いているのです。

フリーランスの女性と、会社員の女性とでは、出産に対して不安を抱く割合に大きな差は見られなかったのです。

参照元:「働きながらこれから出産を考えている女性に対する調査」 ※株式会社ColorBranding調べ  https://mamar.my.canva.site/daf-4sf7uqq

フリーランスは、会社員を辞めたあとの不安を乗り越えて働いているため、不安を抱くことは少ないイメージを持つかもしれません。しかし、フリーランスもまた、出産に対しては会社員同様に不安を持っていたのです。

しかし、フリーランスも出産に対して不安を抱えているにも関わらず、その気持ちに寄り添った支援がないのが現状です。

では、彼女たちはどのようなことに不安を感じているのでしょうか。

ここには会社員との明白な差が生まれました。

参照元:「働きながらこれから出産を考えている女性に対する調査」
※株式会社ColorBranding調べ  https://mamar.my.canva.site/daf-4sf7uqq

どの働き方の女性も不安に感じていることの上位は下記の3つです。
①出産や子育てにかかる費用 
②出産時の痛み 
③仕事と家庭の両立

しかし、フリーランスはこれ以外に不安をいだいている点がありました。

4位以下を見てみましょう。フリーランスは、会社員と違って今の仕事の収入が下がることや、仕事が止まってしまうなど、子育てだけでなく仕事のことも不安視していることが明らかになりました。

この結果は、会社員のように何らかの制度に守られていないので「当たり前」と捉えることもできるし、自己責任で会社員にならずにフリーランスの道を選んだのだから、「収入が不安だ」という声に何を今さら、と驚く方もいるかもしれません。

フリーランスの産後1カ月以内の驚きの復職割合

その不安を裏付けるデータが出ています。

出産後の仕事復帰の時期に関する調査結果がそれです。

会社員が出産後1カ月以内に仕事へ復帰することは少ないのに対し、出産を経ても働き続けているフリーランスや経営者の女性のうち、44.8%が産後1カ月以内に仕事復帰しているのです。

さらに、産後2カ月以内に仕事復帰している人は59%と、半数以上に及びます。
【プレスリリース】フリーランスと経営者の妊娠・出産・子育てに関する緊急アンケート調査 | フリーランス協会ニュース (freelance-jp.org)

筆者が定期的に開催している、フリーランスで出産経験のある母親たちの話が聞ける座談会でも、実際にこんな話がありました。

Yさん(30代・フリーランスのデザイナー)のケースです。
彼女は妊娠7カ月目の早産だったため、予定より3カ月も早い出産になったとのこと。そのため仕事の取引先にもあまり告知できておらず、出産前日はもちろんのこと、出産翌日も予定外の出産で仕事も途中になっていたため、病院でパソコンを開いて仕事をしたそうです。

生まれてくる子どもに「いま仕事が立て込んでるから、ちょっと待って」とも言えなかったYさん。子どもはもちろん悪くありません。

ただ、このYさんの話を聞いてフリーランスとはそこまで過酷なのか、と思った方も少なくないかもしれません。

そうです。フリーランスの出産後もまた、過酷なのです。

産後の時間感覚は産前の3倍のスピード

筆者が支援しているフリーランスの母親たちによると、産後は、産前の想像以上に働く時間を確保しにくく、また、思考のキャパシティが減ってしまうという声が少なくありません。

仮に働けるとしても、子どもを連れて仕事ができる環境が整っている職場を確保できていないフリーランスがほとんどでしょう。

産後からしばらくは、産前よりも感覚値で1/3程度しか時間がない」と口にするフリーランスは少なくありません。

では、Yさんのような事態に陥ることは防げないのでしょうか?

こうしてフリーランス母親は過酷さを乗り越える

実際に、フリーランスの女性が産後の困難を乗り越える方法をお伝えします。

◎仕事を任せる体制づくりをする
出産を機にチームメンバーや外注先を増やすなど、他の人に任せられるチーム体制を整えたり、常に現場にいなければならない職種の方は、体力を使わなくても良い手段を増やす必要があります。
また、自分で手を動かし続ける必要のある方は、ビジネスモデルを変える準備をするのも良いでしょう。自分が手を動かすことは絞り、仕組みを整えておくことも必要です。

◎ロールモデル見つけておく
会社員とフリーランスでは、保障の違いにより出産前後の乗り越え方は大きく異なります。さらに、フリーランスの中でも職種によって乗り越え方は多種多様。
そのため、フリーランスで乗り越えた先輩ママたちのより多くの体験談を知っておくべきです。
自分にあった乗り越え方、スタイルを見つけておくことも良いでしょう。

◎子育ては頼る、人の力を借りる
パートナーに協力を求めるべきことは会社員でも同様ですが、特にフリーランスの母親の場合、産前からパートナーと話合いを進めるべきです。
具体的には、そばに頼れる先をつくるために実家の近くに住む、子育て支援制度が充実した市区町村に引っ越すなど、事前に頼れる先を確保しておくことも必要です。
パートナーに事業をサポートしてもらう、積極的に産休・育休を取ってもらうのも良いでしょう。
ビジネスだけでなく、子育てにおいても、各分野でいざというときに頼れる専門家を見つけておくことで、迷う時間を減らすことができます。

とにかく、お金を出してでも頼れるところはすべて頼るくらいの気持ちが必要です。

(※)「産休(産前産後休業制度)」と「育休(育児休業制度)」は、出産や育児のために休める制度です。出産手当金(出産に伴う休業期間中の所得補償)は、社会保険の被保険者である会社員のみ受け取れる制度です。同様に、育児休業給付金(育児に伴う休業期間中の所得補償)は雇用保険を財源としております。


DUAL STORY
DUAL STORY|これから出産を考える 女性経営者・フリーランスの学びと心の準備の場 (dual-story.com)


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