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壁を扉に変える唯一の方法

宿を始めると宣言して1年半、ようやく開業に漕ぎ着けて約3ヶ月が経過した。

ここまで、いろんな障壁が次々と立ち塞がり、その度に落ち込み、途方に暮れた。
それでも前に進むには、ひとつひとつ粘り強くクリアするしかなく、時間は掛かったが、立ち止まっても、また歩き始めるを繰り返してきた。いい加減に誤魔化していることもたくさんあるけれど、この歩き始めるを繰り返している内に、最近は壁にぶち当たっても、落ち込むということが少なくなってきた気がする。

・・・とうよりも、困ったことがあっても、それを壁だと捉えないようになってきたというべきだろうか。どこかで立ち向かえば解決できないことは無いと思っている。これって、自分を信じられるようになってきたということ。

障壁は壁では無く、重いけれど扉なんだと、半ば自分に暗示を掛けるように過去記事にも書いていたが、また歩き始めることを繰り返すことで、壁は扉に変えることができる。こうした心持ちの変化は、宿を立ち上げたことよりも、ずっと大きな喜びだし、結果オーライで次々と物事が好転していくように思えるのは、まさにこの自信によるものだ。

小鳴門海峡の夕日

コロナ禍で丸2年ものあいだ老人ホームに閉じ込められていた父が、ようやく外出許可を得て一時帰宅できることになった。電話では良く話してはいたが、久しぶりの対面。脂肪がついて大きく膨らんだお腹、運動不足ですっかり足腰も弱っており、歩けるには歩けるが足元がフラフラとおぼつかない様子。

まあ91才にもなれば、歩けるだけでも健康と言えるのかも知れないが、自分のカラダを嘆き、後ろ向きな発言ばかり。カラダのダルさは散歩するとか少し運動すると改善するよとアドバイスするのだが、しんどいし歩けないのに運動なんかできるか、何か良く効く薬は無いのかと半ば切れ気味で訴えてくる。

何か食べたいものはないのとか、行きたいところはないのと聞いても、反応は無し。とにかく、しんどい、だるいの一辺倒で、行き着くのは薬の話ばかりだった。

ところがスーパーに買い物に連れ出すと、久しぶりのシャバに刺激されたのか、陳列棚を端から端まで見ながら、楽しそうに気になる物をカゴに入れていく。しんどくて歩けないのでは無かったのか・・・。

人間、気分が変わると、こうも変化するものか・・・次の日から、朝起きると近所を散歩するようなった。今日は坂の上にある商店街まで一人で行って買い物してきたようだ。いつの間にか表情も随分優しくなっている。

・・・いい兆候だと思っていたら、
TVを見ていた父が通販の薬が気になり、買ってくれと言い出した。毎日大量の薬を服用し、多いと嘆いてるというのに、考え方はそう簡単には変わらないようだ。

いくら立ち止まってもいい、また歩き始め続けて欲しいものだ。



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