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吉野家で伊東正明氏がおこなったマーケティング「コア&モア戦略」について

本稿において、伊東氏の不適切発言の内容は避けさせていただきました。
(発言については、絶対あってはならないものだったことはいうまでもありません)
本稿では、今回の不適切発言以前に伊東氏が吉野家でおこなったマーケティングは焦点をあてた内容です。ご理解のほどお願いいたします。

筆者より

今回は、牛丼チェーン「吉野家」が2018年から取り組み、増収増益に成功した戦略、「コア&モア」戦略について、解説していきましょう。

地方・郊外で多店舗を経営する社長さんであれば、特に役立つ内容ですので
ぜひ、最後までお付き合いください。

※参考サイト:吉野家、P&G出身役員が変えた「牛丼の売り方」



コア&モア戦略とは?

結論からいうと「コア&モア戦略」は、常連客(コア)の来店頻度を高めつつ、新たな客層(モア)を獲得する戦略です。

※牛丼(イメージ)

これに成功すれば、既存顧客の来店が増えることによる客数の増加と、新たな客層の取り込みによる客数の増加、という二重の効果がもたらされます。



「コア&モア戦略」が生まれた背景

吉野家は、かねてよりビジネスマンやドライバーなどの男性客の割合が多く
男女比は「8:2」、と男性が圧倒的でした。

その現状を打破するために、2018年1月に外部から招聘されたのが、日用品雑貨を製造・販売するP&G出身の伊東 正明氏であり、その伊東氏が掲げた戦略こそが「コア&モア戦略」でした。


「コア戦略」について

まず既存・常連客層である「コア」に対しては、コア層に多かった年配の顧客向けに、通常の4分の3サイズの「小盛」を販売。

同時に、その反対の「超特盛」をセットで販売。
この両極のプロモーションが成功して、メディアに大きく取り上げられました。

日経ビジネス(2019/7/11より)


ここで、お読みいただいているのが店舗経営者のみなさまであれば、自店のことを振り返ってみてください。

多くの飲食店が、新商品に目をつけてしまう傾向がある中で、先の「小盛」と「超特盛」は、既存商品の量を変えるだけ、というシンプルな着眼点で成功しました。


うどん(イメージ)

これは余談ですが、丸亀製麺を復活させたマーケターの森岡 毅氏も、既存商品にスポットをあてた「丸亀食感」というフレーズで成功をおさめています。


「丸亀食感」でそもそもの自社の強みを訴求して成功(2019年10月のPRより)



なお森岡氏もP&G出身


これらの成功例からも、飲食企業はもっと、既存商品を深掘りすべきなのかもしれません。


話は戻りますが、吉野家はさらにコア向けの商品として、ライザップとのコラボ商品などもリリースし、吉野家の既存客の健康志向、ダイエット需要を取り込むことにも成功しました

健康志向・ダイエットの需要に牛丼をかけあわせた


コア戦略についてのまとめ

既存・常連客の来店および利用回数を増やすために


  1. 既存商品を深掘りした

  2. 既存顧客の利用きっかけ(需要)を拡げた


上記2点によって、客数アップに成功しました。




「モア戦略」について

次に新規客として女性・ファミリー層である「モア」に対しては、狙った客層に合わせて店自体を変える、という思い切った戦略を打ちました。

商品だけではなく、店自体を客層に合わせてリニューアルしたのです。

この新たなスタイルの店を「C&C」(クッキングコンフォート、・調理と快適さ)型店と呼び、郊外をメインにリニューアルを進めました。

2022年2月期第3四半期決算補足資料 より

その内装は、一見すると既に郊外を中心にモア客層の取り込みに成功していた「すき家」に近いものだったため、事実上、郊外牛丼チェーンの覇者であった「すき家」へ挑戦状を叩きつけた形となりました。

すき家のファミリーをターゲットとしたCM(2016年)


また、女性(特に主婦層)むけに、テイクアウト利用を増やすことを狙ったテイクアウト全品80円引きを実施したり、

2019年6月6日(木)10時~6月16日(日)に実施したテイクアウト割引 ※参考

ファミリー層には、ポケモンとコラボした「ポケ盛」という商品も打ち出すことで、新たな客層の取り込みに成功しました。



モア戦略についてのまとめ

新たに女性・ファミリー層の来店および利用回数を増やすために


  1. 内装をモア客層向けにリニューアルした

  2. テイクアウトやキャラコラボで利用を促した


上記によって、新規客層の開拓に成功しました。



「コア&モア戦略」の効果

このコア&モア戦略の結果、吉野家ホールディングスの2020年2月期は

売上高2150億円(前期比6.2%増)
営業利益36億円(前期は1億円)

東洋経済オンライン 2020年2月26日

と大幅な増収増益に成功。

翌、2021年2月期はコロナの影響もあり、

売上高1703億円
営業損失53億円

流通ニュース 2022年4月19日

と落ち込むものの、

直近の2022年2月期は

2022年2月期第3四半期決算補足資料 より


売上高1527億円
営業利益27億円

吉野家ホールディングスの業績推移 | Strainer


早期でのコロナからの復活に成功しました。


まとめ

いかがだったでしょうか?

限られた地域の人口を相手にして、さまざまな需要客層を取り込まなくてはならない地方・郊外で多店舗を経営する社長さんには、特に参考になる内容だったことと思います。

また、こういった戦略をもって、すき家だけでなく、吉野家も各地の郊外へ出店していますので「敵の戦略を知る」、という意味でも、お役に立てたことと思います。

それでは、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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