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データサイエンス・機械学習関連の分析組織立ち上げで学んだこと

筆者はコンサルティング会社を経て事業会社での分析組織の立ち上げ・リードに携わっている。

コンサルタントとして分析・データサイエンス・機械学習関連の組織作りに関わったこともあるし、自身が事業会社の中で組織作りをしてから何年か経っていることもありここ迄の学びを振り替えてみようと思う。

数字で示せるクイックウィンをいかに作るかが大事

これは会社のフェーズやデータ分析・データサイエンス・機械学習という領域にその会社がどう投資するか?のスタンスにもよるので一概には言えないが、最初に規模は大きくなくとも明確な数字成果を作る、ということに拘るのは非常に大事だったと考えている。

これは過去に外部の支援者として組織の立ち上げサポートをしていた際も感じたことである。

特に、データ分析をこれからさらに活用していこう、というフェーズの会社において、多くの施策はデータサイエンスや機械学習など使わなくても回っていてある程度はうまくいっているのである。

よって、データを活用すると儲かるよ、ということを示さなければならない。

そうしなければ、より大きな論点に対してデータサイエンスや機械学習を適用してく、というチャンスが得られない。

別な言い方をすれば投資を獲得できない。

そこでいかにクイックウィン=短期的な成功事例を作るか?が重要になる。

このクイックウィンを作るにあたって注意したいことがいくつかある。

01.高度な技術にこだわらない

クイックウィンを作るにあたって、必ずしも高度な機械学習を活用する必要はない。
ある程度枯れた技術でもいいのでとにかくデータを使って事業貢献=何らかのKPIを明確にUPさせた、という事例を作ることに拘るべきだ。

シンプルな線形回帰や決定木などを応用した施策でも十分なのだ。

ちなみに自分は今でも比較的シンプルな手法を好んで使っているし、線形回帰系のシンプルな手法をうまく使って大きな成果を上げているシニアなデータサイエンティストも存在している。
高度な技術であればいいというわけではなく、手法の高度さに拘らず成果を出せる技術を取捨選択できることはクイックウィンに限らず大事なことである。

02. 成果を出したい数字のリードタイムに注意する

何らかの事業貢献を目指すということは、何らかの貢献目標数字があるはずだ。
この数字が実際に上がるまでのリードタイムには注意が必要である。

全社の事業戦略上重要な論点のうち、データサイエンスや機械学習がバリューを発揮できそうなポイントを組織の重点施策としてピックアップしたまでは良かった。
しかし実際に着手してみると、その数字成果が実際に上がるまでの期間が想定より長いことが判明した、という経験がある。
これは私が失敗した、と思ったことの一つだ。

例えば、顧客の平均購買頻度があまり高くないような商材を扱っているケースだと、クロスセルやアップセルなどを通じたLTVの向上などは短期的に起こらない可能性がある。

一方で、マーケティングファネルの最下層にあるようなインセンティブ施策(クーポンによる値引きなど)の場合、施策のPDCAによる改善が短期で起こりやすい。

今振り返ってみると、事業戦略と整合のとれたデータ活用のロードマップを描きつつ、数字貢献のリードタイムも意識したクイックウィン創出を最初からもっと狙っていくだろうと思う。

03. クイックウィンを「一発屋施策」と思わせないコミュニケーションを取る

先ほど書いたこととやや重複するが、クイックウィンを狙った取り組みは単発的であると捉えられる懸念がある。

アグレッシブな上級役員がいるような会社であれば、短期成果を意識しすぎた組織プランを描くと「もっとビッグピクチャーを描け!」と叱責されるだろう。

実際に大きな絵を描くこと自体は重要である。
とはいえ、事業会社の場合は特に短期的な成果も上げていかなければ、「データ分析の人たちって必要なの??」という疑念が出てきてしまうことも否めない。

クイックウィンも作りつつ、ビッグピクチャーに向かって我々は前進していますよ、というストーリーテリングをすることも分析組織のリーダーとしては注力すべきだと思う。

自分の得意分野をもっと意識すればよかった

データサイエンティストや機械学習エンジニアだからといってあらゆる分野に精通しているとは限らない。

特に組織が小さい段階では、自分がプレイヤーとしても強みを発揮できるところを起点にクイックウィンを狙う、ということをもっと強く意識すべきだったと今になって思う。

大上段の戦略的な思考からデータ活用やその戦略を練りすぎると自分のケイパビリティと乖離する部分も出てくる可能性がある。この時、ヒトモノカネがあり、適材適所を採用や外部人材の登用等で凌げる場合はそれで良い。
しかし、そうでない場合は立ち上げ間もない中で自身のケイパビリティとのギャップも埋めつつメンバーをリードしたり、組織調整をしたりしなければならないという辛い状況に陥る。
(もちろん、そもそも自分の強みが活かせるところに参画すべき、という話ではあるが・・・)

先ほども挙げた通り、立ち上げ当初はある程度のクイックウィンを作ることは、組織構築の現場においては重要な意味を持つ。

よって、ある程度自分の得意・知見が活かせるところで最初の成果を作ることができるのであればそれに越したことはないだろう。

データ分析・機械学習がビジネス成果を挙げるためのサプライチェーンを意識する

データ分析や機械学習でビジネス成果(ここでは主にマーケティングの領域を想定)を上げるには、単に分析して終わりというわけにはいかない。

何らかの意思決定のための分析であれば、人へのレポーティングを意識する必要がある。
あるいは、クーポンの配布を自動化して所定のマーケティング予算の中でCVを最大化することを目指す場合は、施策を自動的に打ち分けるようなところまでやり切らなければない。

当たり前ではあるが、データ分析・機械学習において最終的なビジネス成果を創出するところまでやり切るには、その成果創出までの一連の流れを強く意識する必要がある。

分析組織を立ち上げる者としては、データと分析技術がビジネス成果を創出するまでのサプライチェーンを俯瞰して見なければならない。
これは、なんとなく頭では意識しているというレベルではなく、一連のサプライチェーンの中でどこに障壁があるか?を明確にし、それに対して事前に打てる手はきちんと打つ、ということが必要である。

振り返ってみると、正直、この部分が疎かであったが故に「分析しただけで終わり」という結末に陥ってしまったことはあったように思う。

分析職をしていると、頑張った分析が使われずお蔵入りしてしまった、ということは決して珍しいことではない。この事象をゼロにすることは現実的には難しいだろう。しかし、組織のリーダーとして、特に立ち上げ期でデータと分析をビジネス成果に活かすためのノウハウやカルチャーが浸透していない場合は、なるべく事前に手を打つことで分析のお蔵入りを減らすことはできると思う。

ではどのようなサプライチェーンを意識するか?というと、自分は以下のように捉えることが多い。

分析のサプライチェーンのイメージ

特にハマりやすいのは、レポーティングと意思決定部分である。多くの場合、分析者自身が施策実施をすることはないので、施策実施の意思決定をするカウンターパートを納得させなければならない。

この時、本当に重要な意思決定に向き合っているか?というのは特に重要で、「(よくよく聞いてみると依頼者は)なんとなく知りたいだけだった」ということも珍しくない。

それ以外にもさまざまな落とし穴があるので、それはまた別途記載できればと思うが、このように俯瞰してどこに落とし穴があるか?を大きな分析の工数をかける前に考える、ということは(特に組織の成熟度が高くない時期は)徹底すべきである。

おわりに

より構造的に整理して示したいところではあるのだが、書き出すとキリがないので、また続編を書ければ、と思う。
何か少しでも読者の皆様に役立つ部分があれば幸いである。

以上。


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