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死後の世界へ途中まで行きました。臨死体験した話【1】

 唐突ですが、つい先日に臨死体験しました。

 職場で転倒して、頭は打ってなかったものの上半身を強打したせいで、突発的に血液量が変化した事による貧血が原因っぽいですが。

 転倒して起き上がり、暫く安静にしていたものの、少し立ち上がろうとしてそのまま倒れ込むようにしてその場で気絶。

 ここからが本題。

 意識はハッキリとあるものの、自分の身体を思うように動かせず、声を出す事も目を開ける事もできませんでした。

 そして、自分の意識が自分の身体から少しずつ抜けていくのが分かりました。

 その時の感覚は、とても気持ち良かったです。僕の身体は倒れているので、周囲の人が声を掛けながら僕の身体を移動させているのが分かりました。まだ意識は完全に身体から抜けきっていなかったので、声が聞こえるのも分かりましたし身体が移動されているのも分かりました。

 しかし、自分の意思で身体を動かすことはできないし、何よりも意識だけになっていく感覚が気持ち良すぎて、このままにしてくれ、と思うくらいでした。

 その時の感覚は、気持ちの良い晴れの日に干した超高級の羽毛布団に包まれながら、少しずつ自分の身体が無重力になっていく、ようなものでした。

 「このままだと、確実に死ぬ。」とどこかで分かりつつも、「このまま行けばどうなるのか?」という好奇心が勝りました。アホですね。

 目を閉じているせいか、僕の世界は真っ暗でした。本当に真っ暗。日常生活で真っ暗な世界って、夜、映画館の上映前、電気の付けていない部屋、など至る所にあるかと思います。でも、それらの場所は、常に何かしらの気配、を感じることができるかと思います。でも、そんな他の気配を一切感じる事のできない何もかもを吸収するような真っ暗な世界にいました。自分の身体も分からず、視界だけがあるだけでした。

 そして、走馬灯。

 僕は、他の臨死体験をした人と違って、本当に一瞬かつお粗末な走馬灯でした。昔の映画フィルムのような横繋がりのネガの一つ一つに小さい頃から最近までの1シーンが合計10個程度あり、それらが目の前の暗闇をスクリーン代わりに右から左に流れていました。

 しかも、映し出されたそれらの映像はセピア色で画質の荒い加工をされており、目を凝らしてもボヤけすぎてて分からないものばかりでした。

 これが走馬灯なら期待外れだな、と思いながらその映像を見ていました。

 ふと気付くと、今度は目の前に背丈の小さな草で覆い茂った一本道が現れました。

 膝下くらいの背丈の草は、常に風に吹かれているかのようにサラサラと擦れ合う音を奏でながら、前後左右に常に揺れていました。

 でも、僕自身は風が吹いているのが分かりませんでしたし、草も揺れている方向がバラバラでした。

 そして、その一本道は僕の足元からずっっっと先まで真っ直ぐ一本に伸びていて、道の終着点は分かりませんでした。

 どうして、真っ暗な世界でも道が見えたのか?その理由は、その道だけがスポットライトで照らされたように明るく照らされていたからです。足元に生い茂る草たちも太陽に照らされた時のように、風で揺れるたびにキラキラと光っていました。

 真っ暗な世界に伸びる一本道。その時の僕は、周りを見渡す事なくただ目の前の一本道を見ているだけでした。そこで、僕はこう思いました。

「よし、歩いてみるか。」

 アホですね。このまま行けば死ぬ、と確信を持っていたにもかかわらず、「面白そう」という理由だけで歩く始める事にしました。

 歩き始めてみると、この道がとてつもなく長い道である事が分かりました。この道以外は真っ暗で何も見えないし気配も無く、足元からずっと先まで続いているこの道だけしか分からない。そして、何よりも歩けども歩けども変化が無い。そして気付いたのが、歩いているのにそのスピードは小走りの時の速さでした。でも、息切れもしなければ身体は疲れない。不思議な感覚でした。

 初めは面白そうだと思って歩き始めたものの、歩き続けていくうちに孤独と恐怖が少しずつ芽生えてきました。本当に歩き続けた先にゴールがあるのか、と疑問を持つようになりました。

 真っ直ぐ長いトンネルを想像してみてください。トンネルに入って歩き続ければ、そのうち少しずつ向こう側のトンネルの先にある光が大きくなって、出口に出れば外の光を浴びる事ができます。でも、僕が今歩いているのは、歩き続けてもトンネルの先にある光は見えてこないし、足元にサラサラと揺れ動き続ける草に覆われた道しかありません。

 あー、これはヤバい。そろそろ戻るか。

 そう思いながら歩き続けていました。

 え、そんな簡単に戻れるの?と思われるかもしれませんが、自分の意識が身体から離れていく時は、簡単に自分の身体に戻る事ができました

 意識が離れつつある時に、「これが死ぬってことか。」と冷静だった自分は、戻れる方法を探りました。

 前述したように意識が離れていく時は、めちゃくちゃ気持ち良くて、だんだんと無重力になり身体が軽くなっていました。そこで、潜水する時のように自分の意識を下へ下へと向かうようにイメージしました。実際に、身体は動かしてないので、あくまで自分の意識だけの問題です。

 すると、自分の意識が少しずつ身体に戻っていく感覚がありました。下へ下へと意識するたびに、自分の身体の痛みや倦怠感が増していきました。

 「なんだ、こんな簡単に戻れるならもう少しどうなるか行ってみよう。めっちゃ気持ち良いし。」ということで、前述した通り、僕はフカフカの羽毛布団に包まれながら極上の気持ち良さを堪能していました。

 ここで問題発生

 先程まで自分の意識が身体に簡単に戻れそうだったのは、自分の身体と意識が繋がっていたからです。極上の気持ち良さに包まれている間は、まだ意識が身体に残っており、完全に無重力を感じた時に、僕の身体の感覚は無くなっていました。

 真っ暗闇の世界に到着した時には、自分の身体は何も残っておらず、というよりは特に気にも留めていませんでした。

 僕は戻ろうと思ったものの、戻るための場所
(=自分の身体)が何処にあるか分からず、自分の意識を何処に向ければ戻れるか分かりません
でした。

 「あー、しまった。」

 歩みを止めて、その場で立ち尽くしました。

 「このまま死ぬのか、ま、それはそれで面白いかもな。」

 切り替えの早さ…さすが。とアホで楽天的なその時の僕は、自分の身体に戻ることを早々に諦めて、ひたすら歩き続ける事に決めました。再び歩き始めても景色は一向に変わらず。目の前から続く道だけが前から後ろにスクロールされているだけのようでした。

 すると、次の問題発生

 なんと、前に進めなくなったのです。まだずっと先まで道は続いているのに、歩こうとしても前に進むことができませんでした。そこには、透明の壁もなく、手を伸ばしても何かにぶつかる事もないのに。この手を伸ばしたというのも、あくまでも感覚の話で、自分の身体も一切見えていませんでしたが。

 前に進もうと歩いても前に進めず、歩いている感覚はあるのに、前から後ろへスクロールしていた道の景色も何も変化無し

 なんだこれ。どうすればいいんだ。

 自分の身体に戻ることもできず、目の前の道を進むこともできない、周りを見渡そうとしても意識を他方向へ移動できない(定点カメラのように一方向だけしか見えない)。

 ひょっとして、これが地獄?

 走馬灯の映像を見たり、真っ直ぐに続く道を歩いている時は、“何かしている”という事で不安や恐怖を感じることはなかったのですが、真っ暗な世界で何もできない、という状況は一瞬で僕を恐怖に陥れました。

 もしも、これが地獄なら納得だな。こんな真っ暗闇で、真っ直ぐ続く一本道を行けば何かあるのに、それすらできないなんて。生前に相当な極悪人であれば、この地獄は妥当かもな。

 そんなことを考えていました。

 “道の先に何かある”という一縷の希望がありながらも、そこに到達できないという絶望。この一縷の希望というのが、人を絶望に陥れるのかと思いました。

 普段の生活もそうですよね。当たるかもしれないと思うから宝くじを買ったり、叶うかもしれないと思うから夢を追い続けたり、努力しても叶う事のない夢に破れると人は絶望します。これが最初から、宝くじなんて当たらないし夢なんて叶わないと思えば、絶望を味わうことなんてないのに。

 少し脱線してしまいましたね。

 このままではどうしようもない、ただ、どうすることもできない。そう考え続けていた僕は、ずっと道の先にある真っ暗闇の何かを見つめるだけでした。

 次の瞬間。

 パアッと真っ白の閃光が、遥か彼方先まで続いている道の先から一気に走ってきました。その光は一瞬にして真っ暗闇だった世界を全て真っ白の世界に変えました

 そして、ハッと気づくとうつ伏せだった自分の身体に戻っていて、目を開けて上体を起こしました。

 ああ、戻ってきたんだ。

 そう実感すると共に、自分の身体の痛みに悶え苦しみました。

 心配そうな周りの人達に返事をしている時には、意識もハッキリしておりハキハキと喋る事ができていました。

 そして、驚くことに僕が気絶してから意識が戻るまでのこの出来事は、たった十数秒程度の間に起きたことでした。

 今も後遺症で身体の節々が痛いですが、生きている証拠なので仕方ないですね。

穏やかな死に顔だった、という表現がありますが、あれはあながち間違っていないかと思います。身体から意識が離れていく時の気持ち良さは、今までの人生で一番最高でした。苦しんで亡くなった方も、最後はあの気持ち良さを味わいながら旅立ったならば、穏やかな死に顔になるかもな、と不謹慎ながらも共感してしまいました。

 もしも、あの道を進み続ければどうなったのか?

 どうして、途中で道を進めなかったのか?

 あの白い閃光は何だったのか?

 未だに疑問は沢山ありますが、神様が生きろと言ったのだと思うので、とりあえず自らの命を断つことはせずに、もう少しだけ今まで通り生き続けようと思います。

 以上!



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