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ドラム選びのコツ!スネアドラム続編

皆さんこんにちは。ご覧いただきありがとうございます!
ドラムテック・自動車ライターの齊藤優太です。

前回に引き続き「スネアドラムの選び方のコツ」続編をお届けします。
前回は、スネアドラムの口径と深さ、マテリアルの特集をしました。
(前編記事はこちら→https://note.com/drum_car_lovers/n/n99806d88fccf)

今回は、さらに深い領域に踏み込み、ドラムシェルの厚さ、ベアリングエッジ、ドラムフープ、ドラムヘッド、スナッピーについて深掘りしていきます。

ドラムシェルの厚さ

ドラムシェルがウッドやメタルで作られていることは前回取り上げた通りです。
しかし、ドラムシェルは単にドラムの形を成形しているだけではないのです。
さまざまな厚さがあり、ドラムシェルの厚さによりサウンドが変化するのです。

皆さんは、ドラムシェルの厚さに着目したことありますか?
ドラムシェルの厚さがサウンドにどのように影響するのか知っていますか?

その答えは、ここから先にあります。
ぜひ、続きをどうぞ!

【ウッドシェル】

そもそもウッドシェルは、プライ(合板)ウッドを曲げて円形に成形しています。そして、多くのドラムメーカーが採用しているプライウッドは、縦目と横目を交互に組み合わせ強度を上げています。
プライウッド1プライあたりの厚さは約1mm。
1プライだけのプライウッドは、紙のようにペラペラです。こんなにも薄いプライウッドをグルー(接着剤)で貼り合わせた後、円筒型の成型機に入れ成形しているのです。

他の成形方法としては、単板を曲げて成形しているスネアドラム、丸太をくり抜いて成形しているスネアドラム、ブロックウッドを敷き詰めて成形しているスネアドラムなどがあります。

いずれの成形方法しても、耐久性を確保しながら、それぞれのコンセプトに合った理想のサウンドを追求していることには変わりありません。

では、ウッドドラムシェルの厚さの違いを理解していきましょう。

〈シェルが厚い〉

ウッドドラムシェルが厚いと、ソリッドでストレート、かつ、パワフルなサウンド特性になり、サウンドの輪郭がハッキリします。
厚さがあることでドラムシェル自体のたわみが抑制され、輪郭のハッキリしたストレートでパワフルなサウンドを作り出すことができるのです。

〈シェルが薄い〉

ウッドドラムシェルが薄いと、オープンでマイルドな特性になり、マテリアルの特徴を活かしたナチュラルなサウンドになります。
薄いウッドドラムシェルは、ドラムシェル自体が振動することで、マテリアルの特徴を主張しながらも、どんな音楽にも溶け込むようなサウンドを作り出すことができます。
ただし、ウッドドラムシェルが薄いことによる耐久性不足は避けられません。そこで装着されたのが「レインフォースメント」です。

〈レインフォースメント〉

かつて、機械の精度が高くない時代、ウッドドラムシェルが薄いことによる強度不足が懸念されていました。
そこで、ドラムシェルのエッジ付近だけドラムシェルを厚くする補強材が装着されたのです。これが現在にも残っているレインフォースメントの原型。
もともとは、強度不足を補うために装着されていたレインフォースメントですが、機械精度などの向上により、ドラムシェルが薄くても十分な強度を得ることができるようになりました。

では、なぜ今でもレインフォースメントは残っているのか?
その理由は、「サウンドの輪郭を明確にする」ためです。
現在、レインフォースメントの役割は、強度を補うためではなく、サウンドの輪郭をハッキリとさせることへと目的が変化していったのです。

ドラムシェルが薄いことによるナチュラルサウンドの良さを活かしつつ、輪郭が明確なサウンドを発生させるため、レインフォースメントが装着されているドラムが今でも作られているということですね。

【メタルシェル】

メタルシェルは、メタル=金属で作られているため、そもそもの剛性がウッドシェルよりも高いのは明らかです。
一般的にメタルシェルの厚さは、1mm~1.5mmが主流。中には3mmや5mmといった厚めのメタルシェルを採用しているドラムもあります。

成形方法としては、鋳型に溶かした金属を流し込んで成形する方法と金属板を曲げて成形する方法の2つがほとんどです。

どのように形作られているのかイメージできたところで、メタルシェルの厚さの違いを理解していきましょう。

〈シェルが厚い〉

メタルシェルが厚いと、タイトで抜けが良いサウンドが特徴です。メタルならではの安定感ある振動伝達により、どっしりと地に足をついたような特性を持っています。小さい音から、大きな音まで、そつなくこなしてしまうのは、シェルが厚いからこそできるサウンドキャラクターといえるでしょう。

〈シェルが薄い〉

メタルシェルが薄いと、オープンでサスティーン豊かなサウンドが特徴です。ドラムシェル自体に振動が吸収されないことから、長めのサスティーンになることがあります。マテリアル自体の剛性の高さから生み出される適度なアタック感とメロディアスなサウンドは、薄いメタルシェルならではの特性です。

ベアリングエッジ

ドラムサウンドの要となる部分であるベアリングエッジ。
ベアリングエッジが違うとサウンドにどのような影響を及ぼすのかイマイチわからないという方は多いのではないでしょうか?

ベアリングエッジは、ドラムシェルとドラムヘッドが接する唯一の部分。
音となる空気振動をコントロールする部分であり、ドラムシェル自体の振動の発生場所であることから、ドラムサウンドのキャラクターに直結する重要なポイントなのです。

一般的に多いのは「45°ベアリングエッジ」です。
ベアリングエッジの頂点部分であるエッジトップをドラムシェルアウター(外)側にし、「パンッ」とブライトでアタック感を強調するベアリングエッジがほとんどです。
ドラムシェル自体の振動が適度に伝わることから多くのメーカーが45°ベアリングエッジを基準としています。

ベアリングエッジの角度が大きくなる=ベアリングエッジが直角に近くなるほど、ウォームなサウンド特性になります。
角度が大きいと、ドラムシェル自体の振動が制限されるため、ギュッとまとまりのあるサウンドになります。

ベアリングエッジの角度が小さくなる=ベアリングエッジ部分のシェル厚が薄くなるほど、オープンでドラムシェルマテリアルの特徴を引き出すサウンド特性になります。
角度が小さいとドラムシェル自体がよく振動するため、サウンドの輪郭が少しぼやけますが、音楽への浸透力があります。

ドラムフープ

ドラムフープは大きく3つの作りに分けることができます。

・ダイキャストフープ
・プレスフープ
・ウッドフープ

「ダイキャストフープ」と「プレスフープ」は金属製。
「ウッドフープ」はプライウッド製。

〈ダイキャストフープ〉

ダイキャストフープは、近年のドラムに多く装着されているフープで、型に溶かした金属を流し込んで成形するフープです。
特徴としては、金属の密度が高く、均等な分子の並びになることから整ったサウンドになります。
さらに、フープ自体の厚さが約3mmあるため、重みのある引き締まったサウンドになる傾向があります。

〈プレスフープ〉

プレスフープは、文字のごとく金属をプレスして成形します。ヴィンテージドラムなどに装着されることが多いフープ。
オープンでトーンが低めの角が取れたサウンドになる傾向があります。

〈ウッドフープ〉

ウッドフープは、プライウッドでできたフープです。暖かみがあり、適度な振動吸収で心地よいサウンドになります。
アタック感やパワーは、金属製フープに劣るものの、クローズリムショット時のウッドならではの響きは最高。
パーカッション楽器として知られているクラベスを想像していただければ、ウッドフープとウッドスティックの相性の良さはお分かりいただけると思います。

〈ドラムフープの選び方〉

では、実際にどのドラムフープを選べば良いのか悩んだときは、次のことを自問してください。

「リムショット時にどのようなサウンドがほしいですか?」

↓答え↓

オープンリムショットは「カーン」
クローズリムショットは「カンッ」
→ダイキャストフープ

オープンリムショットは「パーン」
クローズリムショットは「カッ」
→プレスフープ

オープンリムショットは「パッ」
クローズリムショットは「コッ」
→ウッドフープ

上記の音の表現はおおよそのイメージです。
参考にしてみてください。

スネアドラムのヘッド

スネアドラムのヘッドは、タムやバスドラムのヘッド以上に種類が豊富です。
何を選べば良いのか、次のヘッド交換でどのヘッドにするか悩むことが多々あると思います。
それぞれの特徴をまとめましたので、スネアドラムヘッド選びの参考にどうぞ。

〈コーテッド系〉

コーテッド系は、表面がザラついているのが特徴。使用していると表面のザラつきがとれてしまい、部分的にプラスチックフィルムが露になった経験がある方も多いかと思います。
コーテッド系は、オープンでブライトなサウンドを作り出すことができます。
また、ヘッド表面のコーティングにより適度に倍音を吸収してくれるのもコーテッド系のポイント。
どんなジャンルの音楽にも幅広く対応、ジャズなどで使われるワイヤーブラシにも最適なスネアドラムヘッドがコーテッド系です。

〈クリア系〉

クリア系は、ブライトで弾けるようなサウンドが特徴。大きい音のなかでも埋もれにくいといったメリットもあります。
表面の加工がされていないことから、ジャズなどで使われるワイヤーブラシを擦っても音は出ません。ロックやメタルなど音が大きく、手数が多くなりがちな音楽には最適です。

〈ナチュラル系〉

ナチュラル系は、ファイバースキンヘッドに代表される動物の皮を人工的に再現したスネアドラムヘッドです。
プラスチックフィルムの表面に人工表皮を貼り付ける加工しているケースが多く、適度なミュートと暖かみのあるサウンドが特徴。
コーテッド系のように加工部分が剥げにくいのもメリットのひとつです。
センシティブな表現を得意としていて、音楽に溶け込むサウンドキャラクター。

〈スネアドラムヘッドの厚さ〉

スネアドラムヘッドにも厚さがあります。

・「エンペラー」→アンバサダーよりも厚め
・「アンバサダー」→広く普及している標準的な厚さ
・「ディプロマット」→アンバサダーよりも薄め

ヘッド厚さが厚くなる→輪郭がはっきりしてタイトなサウンド
ヘッド厚さが薄くなる→センシティブでブライトなサウンド

スナッピー

スナッピーは、スネアドラムのボトムヘッド側に装着され、スネアドラムに欠かせない重要なパーツです。
スナッピーの本数やマテリアルでスネアサウンドが変化します。
一般的には、ハイカーボン製20本タイプが多く装着されています。

ここでは、サウンドに影響しやすい本数について話を進めていきます。

〈スナッピー本数〉

標準的な20本タイプは「タンッ」とタイトでブライトなサウンド。まとまりが良くザラっとしたノイズが少なめです。

42本タイプに代表されるスナッピーの本数が多いタイプは「ザッ」とファットでノイジーなサウンド。ローピッチのスネアサウンドとの相性が良い。

10本タイプのようなスナッピー本数が少ないタイプは「パンッ」とレスポンスが良いブライトなサウンド。ハイピッチのスネアとの相性が良い。

単品のサウンドを聴いてみる

いかがでしたか?
スネアドラムひとつですが、サウンドに影響するファクターはたくさんあるのです。

サイズ、マテリアル、シェル厚、ベアリングエッジ、ドラムフープ、ドラムヘッド、スナッピーなどが合わさりスネアドラムのサウンドを作り出しています。

そして、それぞれのパーツ単品のサウンドが混ざり合ってひとつの音になっているのです。

重要なのは「パーツ単品のサウンドを聴いてみる」こと。

ドラムシェルの音、ドラムフープの音、ドラムヘッドの音、スナッピーの音をひとつずつ聴いてみてください。
それぞれの音を聴くことで、スネアドラムサウンドの要素を知ることができるのです。

最後に

2回に分けてスネアドラムの選び方のコツをお届けしてきましたが、スネアドラム選びの第一歩は「理想としているサウンドイメージを明確にする」ということ。

イメージがないことには、音作りは始まりません。
「こんなサウンドのスネアドラムを探してる」
「今持っているスネアドラムの音をもっと◯◯したい」
このようなご相談も受け付けております。
ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

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