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【博士のこと。】研究・論文執筆は民間企業でもキャリア構築につながるのか?【ウェビナーレポ】

こんばんは、Dr. りけ子です。「理系博士のちょこっと回想録」を書こうと思ったんですが、先日ウェビナーに参加したので、簡単にその内容を共有することにします!博士学生さんの参考になれば嬉しいです!

ウェビナー概要

参加したウェビナーは「研究・論文執筆は民間企業でもキャリア構築につながるのか?」というもの。

大学院生の就活支援を行うアカリクさんと、英文校正をはじめとする研究支援を行うエナゴさんが共催。5人の登壇者がパネルディスカッション形式で1時間半、いくつかのテーマついてお話しされていました。ウェビナー参加申込の際、事前に質問も受け付けており、それらについても議題にあがりました。

登壇者はこんな感じ。
課程博士終了者3名、社会人博士終了者2名。

①大学院進学、そして民間企業というキャリア選択のきっかけ

大学院進学のきっかけも、民間企業への就職のきっかけも、みなさんバラバラ。民間企業で働いてみたいと考えた方がいる一方で、ポスドク(研究員)の座を得られず民間へ、という方もいました。

「修士で卒業して、社会人になってから博士を取りたいのなら、就活のときに社会人博士を取れる会社なのか確認しましょう!」という声も。

②大学院での経験は企業での活躍にどう活かされている?

海外とのやり取りがあると、博士号をもっていることで有利に働く場面が多い様子。自立して物事を進める力は、ビジネスでも難易度の高いスキルなので重宝するとか。また、研究を通じて培ったロジカルに文章を書く力は、稟議や申請書など、様々な場面で発揮できるようです(実際に、私も嫌と言うほど会社で書類を書く機会が多かったけど、苦ではなかったし褒められることが多かった)。

一方で、博士号そのものが給料などへ評価されていると感じる人はほぼおらず。研究で培った高いレベルでのスキルを仕事でも発揮することで、結果として評価に繋がるというのはあるみたいです。コンサルタント職では、国のプロジェクトを取りたいときに、メンバーに博士号取得者がいると有利に働く、なんてこともあるらしい。

②のテーマからは外れますが、大学院在籍時に欲しかったサポートとして、就職課がもっと機能してほしい(企業に働きかける、情報を大々的に明示する)や、キャリア選択の考え方を教えてほしかった、というのがありました。今でも博士は、個々人で情報を取得して、就活を進める雰囲気ありますもんね。

また、近年では、アカデミアから企業へ転職される方も増えているそうです。アカデミアでやってきたことに強いこだわりを示さなければ、企業のポストはいろいろあるとのこと。研究内容以外にも、給与や居住地など、自分が転職するときに「何を大事にしたいか」をきちんと棚卸しすることが大事だそうです(アカデミアに限らず、どんな転職でも大事!)。

③論文の執筆・出版と自身のキャリア形成はどう関係している?

みなさんが口を揃えて「論文の執筆・出版が直接求められているわけではないが、仕事内容にも依る」とおっしゃっていました。関わる事業・技術が直接論文に絡むものであれば評価されやすいけど、一連の業務の記録として論文執筆するのであれば評価されにくいようです。ただ、論文執筆は限られた人しか出来ない業務なので、IT系だと重宝されたり、社外的に分かりやすい評価としてみなされたり、という強みはありそう。また、会社での論文執筆は、アカデミアへ就職したい時にもそれなりに評価されるようです。

会社での論文執筆の進め方については、ちょくちょく進める方と、一気にバーっと書く方、どちらもいらっしゃいました。まとめて書く方は、比較的業務が詰まっていない日に取り組んだり、土曜日に書いたり(よく聞くんだけど、業務的にいいのか……?)しているそうです。面白いなと思ったのは「論文執筆を他者と分業できる」ということ。本文は私が、図はこの人が、というように分業して進めることがあるみたいです。

③のテーマが終わったあとの質疑応答で、育児の関係で唯一聞けたのが「博士の就活」について。大学院生のキャリア支援経験のある方曰く、博士積極採用の企業に応募したほうが選考がスムーズに進むこと、もし積極採用と明示していない企業に応募するなら、職務経歴書に研究のことやアルバイトのことなど、あらゆることを書き込むといいそうです(それでも難しい会社はありそうですが)。私も転職のときは、歳の割に業務経験が2年と短かったので、職務経歴書に大学院時代のことも含めて書きました。企業の社風や職種に合わせて、研究にこだわらず書けることはなんでも書いたほうがいいと思います。

所感

課程博士修了者と社会人博士修了者、二つの立場から議論が展開していたのが面白かったです。私は特に社会人博士の方にあまり馴染みがないので、社会人ならではの強みや考え方を知ることができて、参考になりました。

論文執筆については、今回は研究開発に従事する方が多く、直接的に活きることはないとおっしゃっていたものの、論文を書いている時点でスキルとして活かせているんじゃないかと思いました。論文執筆業務のない職業をされている博士の方にも、聞いてみたいところです。

民間企業への就職のきっかけが「ポスドクがだめで……」というのが切実だなと感じましたが、アカデミアがだめで”ドロップアウト”で企業に行く、みたいなネガティブな考え方が、特にアカデミアにはあるような気がします。アカデミアへの道、企業への道、どちらも対等なキャリア選択として考えられる雰囲気があってもいいように思いました。


博士が輝ける社会となりますように!

Dr. りけ子

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