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EMOARUHITO

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stiffslackのマンスリーで連載している創作ミニ小説 納品用としても使っています。
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EMOARUHITO vol.6 アカサカ①

EMOARUHITO vol.6 アカサカ①

仕事を終え、しっかりとマスクをして、久屋大通にある会社を後にした。
去年の冬に、恋人に少し支援してもらって買った上等なカシミヤのコートを羽織っても、耳や指先に冷たさを感じる。
食品メーカーで働くアカサカは、営業も兼ねて金曜日の夜は得意先の店に飲みに行くことにしているのだった。
やはり顔を見て直接やり取りをしたり、ある程度の席間隔を取ったとしても、ガヤガヤとした空気を感じられる時間は格別だ。
去年の

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EMOARUHITO vol.5 タケル

EMOARUHITO vol.5 タケル

「誰か電話に…あ、そうか」

本格的なテレワークが始まって、5ヶ月が過ぎた。
みんなが出社する曜日は、月水と決まっていて、逆にタケルはその日はオフィスにいない。
今のグラフィックデザイン会社に就職する時、息を巻いて会社から3分のところに引っ越してしまったタケルは、紆余曲折を経て、会社の見守り番のような役回りを社長から仰せつかっている。当の社長は、実家に疎開中で、テレワークを実施中とのことだ。そのス

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