【アンジェルマン症候群】⑦特徴 睡眠障害
アンジェルマン症候群のかなり多くの人たちに【睡眠障害】があります。
なかなか入眠できないパターンも、少しの音や刺激ですぐ目覚めてしまうパターンも両方あります。大抵の場合両方です。
2、3日眠らないこともありますし、大抵は昼寝もしません。
乳飲み児の頃を過ぎてもなお、まとまった睡眠を取らず、寝たと思っても夜中1時2時に目覚めて危険も不潔もわからずに粗大な運動を主とする移動行動で動き回る幼児がいかに目離しできないかは想像していただけるのではないかと思います。
娘の場合診断がついたのが3歳でしたから、なぜこの子はこんなに寝ないのかと疑問を持ちつつ3年も育てました。ヘトヘトでした。
病名がわかって書物を読んだ時、【何、これ、症状なの?!】と驚愕&納得しましたっけ。
はっきりとした原因はわかりませんが、私は特徴的な脳波のせいなのかな、と思っています。
睡眠障害が生活に及ぼす影響
授乳している頃の母親はホルモンの関係で睡眠が浅くなる傾向にあります。だから赤ちゃんが泣いたらすぐに起きられるんですね。
授乳中の母親の睡眠の状態を今作りなさいと言われたら大抵の人は難しいんじゃないでしょうか。
すぐヘトヘトになります。
生物って産後・授乳期は、そういうふうにうまくできているんですね。
ところが授乳期を終えてなお眠らせてくれないとなると家族全員が睡眠不足で慢性的な疲れと闘い続けることになります。
人間、日中どれほど疲れても、美味しいものを食べ、適度に体を動かし、ぐっすり眠ることで心身の疲労を回復していきます。
眠れないと疲れやすくてイライラしますし体調も良くありません。
そこへ更にこの子たちは知的障害・行動障害・多動で、昼となく夜となく我々にとってちっともありがたくない行為をひたすら繰り返してくれますから、たいていの親御さんは虐待一歩手前の状況と気持ちを体験しているのではないかしら、と推測します。
小学校卒業頃までのアンジェルマン症候群児の子育ては、本当に本当に想像を絶する日々です。
これを言葉で非体験者にわかっていただくというのは無理だとさえ思っています。
是非1週間ほど一緒に暮らしていただきたい😅
2、3日なら耐えられても1週間は多分耐えられないと思います。
それほど過酷な日々なんです。
私なんてもう、それだけで【私は偉い】【頑張ってる】と自分を褒めて褒めて認めてあげることにしましたから。
だってそうしないと救われなかったですもんね。
自分の両親にさえ理解してもらうのは難しく、誰も褒めてくれないですし😅
それに、患児本人だって眠れないと少なからず疲れていると思うんです。
機嫌が悪かったり食欲が落ちたり、時にはてんかんの発作が増えたりすることもあります。
対処法①薬物療法
この睡眠障害に対してどう対処するかと言いますと、一つは薬物療法です。
アンジェルマン症候群の人たちの中には一定割合【メラトニン】という睡眠に大きく関係しているホルモンが不足している人がいるという研究があり、実際【メラトニン】をごくわずか与薬するだけで睡眠障害が改善する人たちがいます。
このメラトニンというのは、脳内の松果体から分泌されるホルモンで、網膜から入った光刺激により、明るい間は分泌が少なく、暗くなるとたくさん分泌される睡眠のためのホルモンです。
そのほか、体内時計にも関係あると言われています。
光による日内変動がありますので未熟児網膜症などで全盲のお子さんなども減少することが知られています。
(厚生労働省e -ヘルスネット)
娘はありがたいことにこの【メラトニン】がよく効きました。
メラトニンは催眠作用があるため日本では医薬品に分類されますが、欧米ではドラッグストアなどでも売られていて比較的簡単に手に入ります。
日本でもインターネットなどで並行輸入が可能です。
私の友人が国際線のCAなので、Los Angelesなどに行った際にドラッグストアで買ってきてくれています。
今は、医師の処方があれば国内でメラトニン受容体作動薬(ロゼレムなど)が保険で手に入りますが、我が家はずっと友人CAのお買い物に頼っています😅
催眠作用といってももともと人間の体内でつくられるはずの物質であり、寝つきが良くなる程度で催眠効果はそれほど強くありません。
ところが娘には著効したのです。
やはり、娘はメラトニン分泌不足型だったのだと思います。
メラトニンが効かない方には別の薬が処方されることもあります。
てんかんの薬が副作用で催眠作用がある場合、それを用いることもあります。
飲み続ける薬なので否定的になる人もいますが、定期的な検診をしつつ必要な薬を飲むことは生活の質に繋がります。
自分にも子どもにも体にいいものしか取り入れたくないのは山々ですが、生活・生命の質は人生を左右します。
『薬は飲みたくない、飲ませたくない』という場合は『何のために生きてるの?』『より良く生きるってどういうこと?』という問いと共に比較衡量していかれるといいのではないでしょうか。
対処法②生活リズムを整える
ふたつめは改めて言うまでもないようなことなんですが、規則正しい生活をし、早寝早起きをすること、体内時間を整えること、これが基本、という話です。
本人の興味を引く楽しい活動に幼少期から積極的に参加し、適度な運動(歩行が上手な人ならばできれば激しめの運動も!)を心がけ、日中活動を充実させることが大切です。
人と関わるのが大好きな人たちが多いですから、学校の先生や生徒、支援者さんやご近所さん、同病の子どもたちなどできるだけ多くの人と関わり、世の中にはいろいろな人がいるのだと知ること、自分の思いが通ることばかりじゃないと身を持って体験していくこと、そうして精神的にも疲れ適度なストレスを得ることが、ひいては夜間の良眠につながっていきます。
そして、我が家は夜9時を目処に夫が必ず娘と一緒に寝室に行くようにしてくれました。
夫はほぼ定時に帰ってきて7時台には夕食をし、8時台には入浴、そして9時前には娘を連れて寝室に行き、照明を落とします。
帰省やどこかに外泊した時であっても、年末の大晦日であっても、判で押したようにこのリズムが崩れることはありませんでした。
【眠れなくてもベッドに入る時間】というリズムを生活のパターンにしてしまったので、中学・高校になる頃には、たとえ起きていても部屋から出ることはなく、ベッドの中で布団にくるまって過ごせるようになりました。
今はiPadが中途覚醒時のいいお友達です。
対処法③危険防止
こんないろんな対策をもってしても、眠りが浅かったり目覚めて勝手にどこかに行ってしまったりという危険が、特に小さい間は常に付き纏っていました。
危険も不潔もわからない状態で娘だけが起きている危うさ。
親は疲れて眠りこけていますから、いつも危険と隣り合わせだったのです。
必然的に親は浅めの眠りになりますが、そのウトウトの時でさえ、娘には身の危険がありました。
高いところからの転落、引き出しなどでの指詰め、異食による誤嚥・窒息、部屋を出ていくことがあればお風呂やトイレも危険でした。
実際、水風呂に浸かってた、トイレの水で遊んでた、なんてこともありました😓
そこで、寝室にはほとんど物を置かないようにし、部屋にはベッドだけ。
ドアには内側からは開かない鍵を取り付けました。
窓にもダブルで鍵を取り付けました。
そう。
外からかけて【娘を部屋の中に閉じ込めることができてしまう鍵】です。
これだけ聞くと『なんて酷いこと!』とお叱りの向きもあるでしょうか。
鍵をかけて部屋の中に閉じ込めるのは【虐待】ですからね。
でも、こうしないと彼女の命は守ることができませんでした。
ただし、私たちにはこの鍵を使う時に一つだけルールがありました。
それは、
必ず誰かと一緒に中に入っている状態で鍵を使います。
娘が一人になってしまう時は鍵はかけない。
それがルールでした。
外からは一応鍵で開け閉めしますが、中から開けるにはコインなどを使います。
その鍵も中学生頃にはほとんど必要なくなりました。
今ではいろんな条件が功を奏しているのか、21時過ぎに就寝、5〜6時起床、早寝早起きのとっても健康的な娘です。
目に見えない大変さをぜひ想像してください
こんなふうに、睡眠障害って文字で書くとたった4文字なのですが、とてもとてもひと言では言い表せない大変さがあります。
こうして書いていても、読んでくださった方に本当の大変さが伝わるんだろうかと疑問に思っています。
夜の出来事ですから、大抵の場合家族が家族だけで抱えている大変さです。
学校の先生も、支援者の皆様も日中の生活からは想像することでしか寄り添えません。
睡眠が乱れることで本人のみならず家族の生活がどうなるか、親に影響があればきょうだい児の生活も影響を受けますから、寝不足で試験を受けなくてはならなかったり、親が寝坊してお弁当を用意してもらえなかったり、きょうだいたちも多かれ少なかれ『コイツのせいで!』って思った日々が必ずあるでしょう。
それを安易に『みんな頑張っているんだから頑張って』などと励ましたりなんて絶対にしないでほしいのです。
(娘が小さい頃、お役人さんと言われる人たちや【常識人】と言われるどちらかといえば偉い人たちによく言われたセリフです😓)
自分にできないことは言ってはいけません💧
嬉しいのは想像をしてただ寄り添おうとしてくださることです。
娘が高校生の時の特別支援学校の校長先生がこんなふうに言ってくださいました。
この時すでに15年以上この子を育ててきていましたが、初めて他人にわかってもらえた気がして涙が出たのを昨日のことのように思い出します。
そう、その大変さはわかりたいけどわからない、大変だろうと慮って言ってくださることが私は一番嬉しかったのです。
今渦中にある親御さんたち、ファミリーたち。
大変で大変で泣きそうだと思います。
愚痴なら聞きます、いくらでも。
ほんと、しんどいよねぇ。
できれば時には誰かに甘えたりお子をどこかに預けたりしてガス抜きをして自分の気持ちが長持ちする方法を模索してくださいね。
そして、いつか、彼ら彼女らも大きくなって少し楽になる日も来ると信じてゆーっくりのーんびり構えられればいいのだけどな、と、祈りに似た気持ちで私はここに居ます。
いつでもお声掛けください。
そして、これを読んでくださっているいろんな世界の多くの方々、【体験してみないとわからないことってきっとあるんだろうなぁ…】って思って思いを馳せていただけたら至上の喜びです😅
最後までお読みくださりありがとうございました。
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地域の保健室をしつつフリーランスとしてお仕事している笑顔大好きな【なつまま】が、重度障害であるアンジェルマン症候群のキュートな娘との豊かな生活と、医療や福祉について思うこと、日々の小さな気づき・感動などを綴っております。
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