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【母の願い】 我々なき後に我が子を護ってくださるすべての皆さまへ

 私は23年前、神さまから、いつか人の手に託さなければならない女の子を授かりました。
 アンジェルマン症候群という珍しい障害をもって生まれた娘。

 「あなたができる間はあなたが護りなさい」と。
 色が白くて茶色の目、茶色の髪、笑顔がとびきり可愛いけど一言も有意語は持たない重度重複障害を持つ娘。

 でも、神さまは、この子をどうやって置いて逝けばいいかは教えて下さらなかった。
 私たち夫婦、人生を折り返したとはいえまだまだしばらくは生きられると思っているけれども、それでも、いつもいつも、この子を幸せに遺していく方法を模索しています。

 この子に少しでも痛いことがないように、辛く苦しいことがないように、人様を微塵も疑うことのないこの子が人様から意地悪されたり裏切られたりなど心の痛みをなるべく経験しないように、ただただ笑顔を守ることだけを考えて、大切に大切に護り育ててきました。

 そんな私から、私がいなくなった後に娘を護ってくださる方に、心からのお願いがいくつかございます。


 嚥下の下手な娘がものを喉に詰めないように、食べている間は決して娘から目を離すことなく、食べ物は一口大に切って食べさせてやってください。
 できれば(マンツーマンなら)何を食べているかがわかるように、食卓に出すまでは刻まず、目の前でキッチンバサミで切って小さくしてやってください。
 『よく噛んでね』と声をかけ、水分を促しながら、むせないように詰めないように、そして、熱すぎず冷たすぎず適温のご飯を美味しく食べさせてやってください。

 気温に適応できない娘が、暑い時に汗もかけずに体温上昇してしまい、顔を赤くしてしんどくてイライラして手を出したり大きな奇声を上げたりしてしまわぬように、衣服を調整してやってください。
 喉越しのいい飲み物を多めに与えて汗やおしっこで体温を下げ、調整しやすいようにしてやってください。
 それでもどうしても身体が熱い時は、背中や手足など表面積の広い部分を常温の水道水で絞った濡れタオルで拭いてやってください。
 寒い時はベストやネックウォーマーが大好きですので着せてやってください。
 可愛いよ、似合うよと言っていただければ、彼女は宝石のような笑顔で喜びを表現します。

 バランスの悪い娘が躓いて転ばないように、床には極力物を置かないでください。
 階段は手を引いて、一歩一歩よく見て足を出すようにリズムをとって声をかけてやってください。

 靴はきちんと履くまでに気が急いて駆け出してしまいますので、必ず踵が入ってしまうまでは駆け出さないように見守って声をかけてください。

 危険認知ができない娘が火傷•溺水したり転落したり車に轢かれたりしないように、危険を予測して前もって声をかけた上で、こう動くかもしれないとさらに一歩先を予測して不意な動きを止められるようご自身の身体を準備しておいてください。準備ができていないと介助者さんの怪我にもつながってしまいます。
 手を引く時は前から引かず、肩を抱くように後ろから支えてやってください。

 お風呂は少しぬるめのお湯を張り、体や頭を洗ったら、適度に満足するまで浸からせてやってください。夏場はシャワーだけで満足するかもしれません。
 足元がおぼつかず滑るかもしれないので、シャワーチェアを使って安定した状態で身体や髪を洗ってやってください。
 突然肌に触れられるとびっくりして体を硬くしてしまいます。どこを洗うよと説明しながら洗ってくだされば比較的協力的に振舞えます。

 トイレはあまり好きではありませんが、お出かけや寝る前など何か目的ごとの前であるとか、時間が経っているとか、ちゃんと説明すれば排尿に至ることができます。
 どうしても嫌な時は『出ません』と手を合わせてサインします。
 時に失敗しますが、必ずしも反抗的になって失敗しているわけではありません。
 時間排尿がうまくいかない時だけでなく、発作波があるなど脳波が乱れている時、体調が優れない時なども粗相に繋がります。

 『もうっ!さっき連れて行った時はしなかったのに!』って思うこともあると思うのですが、余裕があれば、『あれ?どこか不調なのかな?』と思ってやってください。寒さでおしっこが近くなっていることや膀胱炎などの予兆かもしれません。
 余裕なく叱りつけてしまうくらいなら濡らしてもいいように紙パンツを履かせてやってください。

 ほとんどの言葉は赤ちゃん言葉なんかじゃなく普通の言葉のまま理解しています。
 笑顔でいたとしても、うまくできないこと、苦手なことは、できないととても悔しい思いをしています。
 それを指摘することは娘の心を傷つけてしまいます。

 皆様が言われて嫌な気持ちになることは娘も傷ついていると思ってやってください。

 娘が大切にしているものは、空のリュック・小さなマスコット・壊れたキーホルダー・落書きのようなお絵かき・破れかけた写真など、たとえそれがどんなにつまらないと思うものでも大切に扱ってやってください。彼女にとってはとっても大切なものなんです。


 たくさんたくさんお願いしました。
 厚かましく、偉そうに聞こえたらごめんなさい。
 馬鹿がつくほど愚かな親心とお笑いください。

 人と人とのコミュニケーションです。
 時にうまくいかないこともあるということは愚かな親もよくわかっています。
 それは娘とだっておなじです。

 些細な失敗は恐れないでください。
 当たって砕けちゃってください。
 娘は人さまが大好きです。
 母が案ずるよりも実は素晴らしいコミュニケーション力を持っていて、娘なりの関係を築いたりすると思います。

 私たちは娘を、
 『あなたが大切よ』
 『あなたの笑顔が見たいの』
 『あなたが愛おしい』
という心からの気持ちが通じる子にだけは育てたつもりです。

 ちゃあんと人の愛がわかる子、人を愛せる子に、育てたつもりです。 

 みなさまから頂いた温かな思いや心遣いに対し、例えわかりやすい表現ではお返しできなくても彼女は必ず温かな思いの表出でお応えしていると思います。

 どうか、娘に関わってくださる皆々様。
 いつの日か先に逝く私の代わりに、娘の幸せを見守ってやってください。
 それすなわち、娘と同じくらい大切な大切な息子の幸せにも繋がります。

 どうぞどうぞ、私のありったけの祈りを込めて、よろしくお願い申し上げます。

 神さま、どうか私の大切な者たちをお守りください。


 2021/01/17 現在(彼女の成長や社会の変化と共に適宜改訂予定)


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 最後までお読みいただきありがとうございました。

 地域の保健室をしながらフリーランスとしてお仕事している笑顔大好きなつままが、重度障害であるアンジェルマン症候群の愛し娘とのキラキラ豊かな生活と、医療や福祉について思うこと、日々の小さな感動などを綴っております。

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