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ステロイド外用薬への不安を持つ患者さんへ医師からのメッセージ


九州大学皮膚科の古江増隆先生がHPに載せていらっしゃるメッセージが分かりやすいので、転記しますね。



患者さんは医者ではありませんので、ステロイドは怖い、副作用が強い、一度使ったら一生使わなければならない、悪魔の薬だ、などといううわさや口コミを聞いて、不安にならない人は一人もいません。

怖いですし不安になるのは当然です。

しかし、ステロイドはアトピー性皮膚炎だけに使われている薬ではありません。

アトピー性皮膚炎以外のさまざまな皮膚炎や皮膚病はもとより、リウマチや膠原病などの自己免疫性疾患、喘息や鼻炎などのアレルギー疾患、いろいろな抗癌治療、その他のさまざまな炎症性疾患のほとんどでステロイドが使用されています。

アトピー性皮膚炎と同じく、ステロイドを使用しなければならない他の病気もほとんど慢性の病気ですので、ステロイドの使用は長期になります。

ではどうしてアトピー性皮膚炎だけ、ステロイドを使いたくないという患者さんが多いのでしょうか。

誰かがいいふらしているのでしょうか?

何か目的があるのでしょうか? 

私にもわかりません。

ただうわさがうわさを呼ぶ、風評被害みたいになっているのは事実です。

もちろん、副作用がない有効薬は存在しません。

ステロイドにもいろいろな副作用があります。





ステロイドが初めて臨床に用いられたのは1949年のことです。

リウマチの患者さんに筋肉注射して劇的に効果があったことが報告されています。

外用薬として初めて用いられたのは1952年のことです。

つまりすでに60年以上の歴史がある薬で、過去の薬どころかいまだに第一線の治療薬なのです。

それだけ病気の治療には欠かせない薬ですし、一方でステロイドの副作用は医師によく知られています。

内服すると腸管から吸収されて血中濃度があがりますので、全身性の副作用(肥満、糖尿病、骨粗鬆症、胃炎など)が発現する危険性があります。

ですから、長期に内服する人は、体重、血糖、骨密度などの検査を行い、これらの副作用をある程度予防できる治療薬も一緒に内服します。




外用薬は皮膚に直接塗りますので、血中にステロイドがほとんど入らず、内服するよりもずっと全身性の副作用は少なく安全です。

しかも皮膚に直接塗るので、治療効果は高いです。そのため、塗るのはとてもめんどうだしべとべとして嫌なのですが、皮膚病の治療では内服よりも外用薬が中心となります。

内服ステロイドは全身病では1日に10錠飲んだりすることもあります。

1日に1錠を毎日飲むと、やはり3ヵ月くらいすると副作用の兆しが表れてきます。

2日間で1錠あるいは3日間で1錠になると、ほとんど副作用が認められなくなります。





皮膚からのステロイドの吸収ですが、塗ったステロイドの3%程度しか吸収されません。

ですから、ステロイドの内服1日1錠と同程度の副作用の発生には、3群のステロイド外用薬を1日およそ20g塗ることになります。

実は、20gの外用量はちょうど成人の全身の面積を塗る適量になります。

一般にアトピー性皮膚炎患者さんの重症度をみると、軽症が80%ぐらい、中等症が15%ぐらい、重症・最重症が5%ぐらいです。

重症・最重症の患者さんでは1日に20g外用することはよくありますが、軽症や中等症の患者さんではあり得ません。

このように全身性の副作用は、ほとんどの場合無視していただいてかまいません。





ステロイド外用薬でみられる副作用は皮膚局所の副作用です。

「多毛」、「皮膚が少し薄くなる」がもっとも高頻度の副作用になります。

これらの局所性副作用は、ステロイド外用量が少なくなると、6ヵ月で50%程度が再び回復することが分かっています。

もちろん、「皮膚が少し薄くなる」のを通り越して、「皮膚がとても薄くなる」患者さんもおられます。

ですから、慎重な観察が必要です。





もちろん、このような副作用ばかりを気にする前に、どれだけ治療効果があがったか、かゆみがなくなったか、の方がずっと大切です。

治療効果がはっきりでてかゆみがなくなってくると、ステロイド外用薬の使用量は少なくなり、それだけ副作用も少なくなるという好循環になるからです。

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