見出し画像

DRAWING AND MANUAL Local Action series vo.1 : Yuichiro Fujishiro | LOCOVISION #01 後編

DRAWING AND MANUAL所属ディレクター藤代雄一朗が企画・ナビゲートする地方創生トークイベント「LOCOVISION」。2020年7月に行われた第一回のイベント書き起こしの後編です。(前編はこちら / 中編はこちら

目次
「地域とお金」 「地域に必要な映像」
「いま地域に必要な映像とは?」
LOCOVISIONを始めたきっかけ
質疑応答

「地域とお金」 「地域に必要な映像」

藤代:ありがとうございます。時間もですがそのままいっちゃいましょうかね。この後の2つの話題ちょっと難しいかも。「地域とお金」とか「地域に必要な映像」も一応テーマであるんでちょっと話しておきたいのが、今回は多田屋さんっていう方がいらっしゃってそこの元に集まったプロジェクトっていうのでまたちょっと違うかもしれないですけれども。
自治体だったり、市だったり県からお金もらったりというのも多くあるんですけど。広告案件ほどどっさりお金がくるわけではないじゃないですか。そもそも税金だったりとか。そんなにお金使っていいの?っていうのもありながら、地方の映像とか地方の魅力を伝える何かっていうのは、お金があまりかからないやり方とかを模索せざるを得なかったりするのかな、って思ってるんですけど。
今回とか、もともとは多分43本も映像作るつもりじゃなかったと思うんで、細かいことを考えるとお金と見合ってないみたいな話にもなるかもしれないんですけど。今回、乗り越えてやれたっていうのは、つくってる面白さとか出来上がった先にあるものに惹かれて作ってたんですか?

画像1

鎌田さん:多田屋さんも、やるって決めたからやってるって感じで。地域のお金が入ってないんですよ。

藤代:そうですね。

鎌田さん:自由なんです、完全に。何の忖度も必要ないし、撮りたいものを撮って伝えたいものを伝える、というのにフォーカスできたというのはすごい、重要視されていて健太郎さんも。
行政が入った地方の仕事をしたこともあるんですけど。そうすると、この情報はマストで出さないといけないっていう大人の事情も入ってくるし。予算が毎年組まれるんで毎年やっていくのかどうかという、財布との相談も発生しちゃうし。そういうのがないんですよね。やりたいからやる、っていう。じゃないと難しいと思ってて。本当にこの土地、能登がすごい好きになったし、応援したいから、やる。それだけしか難しいんじゃないかなと思います。続かないと思う。お金は度外視、そこに巻き込んでしまってる僕の責任もあるから、とにかく楽しんでもらえるような撮影、というか旅行って思ってもらえるように頑張ったし。結果好きになってくれて、楽しんでやってもらえているとか僕は思ってるんですけど。
そこですね、要はいろんな忖度も必要ないっていう、ストレスを全部開放してあげるっていうのは、作り手としてはやりやすいじゃないですか。そこは自由にさせてくださいというところは僕が握って。自由にしてください、お金はもしかしたら他の広告案件と比べると少ないかもしれないですけど、美味しいもの食べれるし、自由にものづくりができるし、っていう。精神衛生上良い状態っていうのを保ってれば続けてやっていけるだろうとは思っています。

藤代:そうですね、それ大事ですね。

鎌田さん:少しでも損得勘定が入ってくると、たぶん無理だと思う。

藤代:そうですね。きっと行政が入らずというか、民間でやってる人の繋がりとかから生まれるような、こういう企画のほうが。

鎌田さん:本当にそれに賛同して、ガッツリ囲んでやる覚悟ができるかどうか。

藤代さん:柘植さんはどういうモチベーションで作られましたか?この企画があった時から。

画像2

柘植さん:まあそうですね。僕のモチベーションとしては、正直今までもそうなんですけど、この地域を紹介したいとかっていうモチベーションはあんまりないんですよね。もちろん能登何回もいって好きになったんですけど。ただ何回もって言っても5〜6回で。「のとつづり」の撮影で行ったのは。それぐらいの人が、この土地を紹介したいんです、みたいなのってちょっと気持ち悪いな、って思って。多分それって、僕も前つくってた旅行に行った時の映像もそうなんですけど、その地方を紹介する映像っていう感じの紹介のされ方だったんですけど。自分の中では全然紹介してるつもりなくて。ただそこすごいよかったなあって言う、いい土地だったなあ、とかいい人たちいたなあ、とかおいしかったなあって。そういうことなら伝えられる、伝えてて違和感がないというか。なんかそういうモチベーション、楽しかったなあ、いい話聞けたなあって、それをただ残しておく。という感じなんですよね。だからなんか地方を盛り上げるとかそういうモチベーションあまりなくて。その土地にこういう人がいましたよっていうのをただ、残しておきたいと言うか。なんかそんな感じですね。

画像3

藤代:そのときの自分の感覚を、そのまま切り取って残していく、っていう感じなんですね。

柘植さん:そうですね。なんかそれってどうなのかわかんないんですけど、結果的に能登っていいよねっていう、「のとつづり」にそういうものが集まったときに、能登っていいなって思ってもらえたらいいんじゃないかなと。急に能登に行く人が増えるって事はないと思うんですけど。でもあった方がいい、あっていい映像なんじゃないかなと思います。

藤代:その辺りの感覚、やっぱり面白いですね。

鎌田さん:そういう感覚だから、自然な旅っぽい仕上がりになっている。映像の役割は本当にそれで正解だったんだなって、今聞いてて思いました。セレクトしている時点で、能登の魅力を伝える、ここがありますという時点で一つ落ちているじゃないですか。そこの、場の雰囲気をリアリティ満タンで描くっていうのが多分、映像の役割としては良かったんでしょうね。

藤代:そこが噛み合ったから良かったんだ。なるほど。


「いま地域に必要な映像とは?」

藤代:最後の話題に行くか。これ難しいですね(笑)。先ほどおっしゃってた他の行政の仕事されてたりとか、割とあるんですか?

鎌田さん:能登はこの多田屋さんの仕事と、行政が入った案件もあったんですよ。それも一回ありました。あと山梨の行政、北杜市の入った仕事もやりましたけど。

藤代:仕事を通して行った場所で、すごく関係性を持ったとか好きになった場所って能登だったりします?数でいうと能登が一番行ってらっしゃいますよね。

鎌田さん:そうですね。2005〜2006年からずっと、何回も何回も行ってるんで。でもその山梨の仕事も当然山梨大好きですし、プライベートでも普通によく行きますし。地域活性系のプロジェクトとしては続かなかったと言うのはやっぱあって。

藤代:そもそも映像を観て、この場所に行きたいって思う感覚になったことってありますか?ユーザー目線というか。一般的な普段の。

鎌田さん:旅行に、ですよね。

画像4

藤代:いわゆる地域PR映像、世の中いっぱいあるじゃないですか。ネタっぽいやつだとか、景色をドローンで美しく切り取りました、とか。

鎌田さん:それを見て、ああここ行こう、って行ったことはないかもしれない。

藤代:でも柘植さんが作られた草津の映像とかいうのは、見かけて、映像自体の魅力としていいなあと思ったっていう。 

鎌田さん:そうですね。さっき柘植さんも言ってましたけど、こういう映像だったり、サイト作ったからじゃあすぐに行ってもらえるかというと、全然そういうわけではなくて。「のとつづり」の位置づけとしては、いつか能登に旅行行こうと思って、「能登・和倉」って入れた人の目に触れたらいい。そういう意味ではジワジワ、爆発的な広がりはないけど、ジワジワと旅行を検討している人の背中を押してくれるものには、なって欲しいし、なるだろうとは思ってます。

藤代:まさに今回このイベントをやりますって、「のとつづり」を題材にしますってFacebook に書いたら、僕の知り合いが能登に行こうとしたときに見てたらしくて、去年ちょうど見てましたみたいなコメントついてて、それですね。

鎌田さん:まさに、それがいい。

藤代:映像自体から、みてくれみてくれ、ってやるんじゃなくて。すっと、そこにある、みたいな。

鎌田さん:そうですね。それがさっき言ってた、長期間残る作品、ずっとあり続けられる作品みたいな。

藤代:ありがとうございます。柘植さんは何かありますか、何かありますかっていうのもあれですけど(笑)

柘植さん:その辺ちょっと不勉強で。

藤代:前からおっしゃってましたもんね。

柘植さん:どういうものがその地方・地域で求められているかってあまりわかってないんですけど。感覚として、映像で盛り上げようって、ないんじゃないかなと思ってて。この映像があれば人がいっぱい来てくれるとか、この地域が盛り上がるっていうのは映像じゃない気がしてて。突飛なアイディア、話題になりそうな映像を作ってどれぐらい人が来てるのかなって、全然わかんないんで、効果ありますよってことなのかもしれないですけど。
ただ僕らの作ったものはさっき鎌田さん言ってたみたいに、もうすでに行こうとしている人とか興味がある人に観てもらうためのもので、そういう役割はけっこういいんじゃないかなって、今聞いてて思いました。自分が例えば、僕がどこかに行こう、行ったことない国とかに行く前にやっぱり動画観てみたいなあと思ったり、機会はあると思うので、その時にいいなって思ってもらえる映像を作るっていうのは、意味があるのかなって思いました。

LOCOVISIONを始めたきっかけ

藤代:ありがとうございます。確かにそうですね。時間がいい感じになったので、一応質疑応答の時間も設けてはいたんですけど、そんなにきてないだろうから雑談しますか(笑)

柘植さん:藤代さんも作ってますよね。どんな感じなんですか、このテーマで話したくなったの。

藤代:僕自身も自治体から地域のPR映像の提案をして欲しいって言う案件があったりとかして。10社とか、いろんな代理店とか、私たちのような企業とかが提案書いっぱい作って。これだ!って選ばれるようなコンペとかをやってるのを見て、なんかそうじゃないんじゃないかな、っていう思いがずっとあったんですよね。1本作って解決するものでもないし。こういうのを作ってくれ、ってガチガチにされて生み出されたものにも、あんまり心を打たれたことがないし。そう思った時に、僕はすごくその柘植さんの映像を見て、その場所に行きたいなあと思った口だったので。僕が単純にそう思わされた映像ってどうやって生み出されたのかっていうのを、今一度こうやってお話聞いて、それで自分の考えを整理したい、みたいな感じで企画しました。そういう話題と関わることがたまたま多かったし、自分も昔から観光産業とか興味があったので。
さっきも言いましたけど、知人が青森の弘前市に移住していて、彼と一緒に青森の映像を作ったりとか。よくいろんな場所で、そういったものは自分の興味があるので撮ったりはしているんですけど。どういうものを作るかって考えるときに、いつも悩んでしまうというか。でもさっき、行きたいと思った人が調べた先にあるそれが、その人にとって一番いい状態に置かれているのが理想だっていうのは、お話しを伺って思いましたね。どうしても再生回数ですとか、そういう話になってしまうような気がするんだけど。そうじゃなくていい、というのは。すごく納得しました。

鎌田さん:もともとそういう風な立て付けで作ろうとしてたっていうのはあると思うんですけど。難しいですよね、一発この映像を見たらみんなが行っちゃうって。

藤代:中にはあるのかもしれないですけれども。それを狙ってやるっていうのはちょっと違うなって感じがしますよね。あ、質問きてますって。読みますね。

質疑応答

「​DSLRの登場の歴史の中で、柘植さんという存在は大きな影響を残している方のお一人だと考えています。柘植さんご自身の映像(のとつづり)を形容する時にどんな単語が選ばれると思いますか。なんとなく小林聡美さんが出られる映画のようで、ロードムービーやマンブルコアの要素もあったり。
また「のとつづり 」以降でGoogleやオロナインでも耐久度の高く柘植さんらしさを踏襲したコマーシャルを作られてると思います。おそらくプロデューサーやCDからプロデューサーらしさを期待されてきたと思いますが、どのようにその期待値を更新してきたのでしょうか。」

藤代:柘植さんへの質問です。ひとつ目が、これ難しいですね。ご自身が映像を形容するときにどんな単語が選ばれると思いますかって。自分でいうの難しいですよね。 

柘植さん:なんでしょうね、旅の映像とかの映像に関しては、前に藤代さんに話したことがあると思うんですけど、主観的に撮る、見せるっていうのを意識してて。観光の映像って客観的な視点でその土地を紹介するということがあると思うんですけど、主観を意識して撮っているので。つまり「僕たちが見た能登」ということだと思うんですよね。僕らじゃなかったらまた違うアングルがあると思うんですけど。そういう意味で言うとそうじゃないのもいっぱいありますけど、基本的には自分が見ている、僕だけじゃないと思うんですけど、何か作ってる人はそうだと思うんですけど、その自分が見ている世界がこう見えているっていうこと、なんじゃないかなと思います。単語じゃないですけど。作っている物ってそういうことなのかなって。その人が見た世界を具現化している、作品化しているというか。そういうことじゃないかなあと。思ってます。
期待値を更新してきたのでしょうか…。必死に。裏技とかは、ないので。目の前のものをよくするために、必死にやってきましたと言う感じですね。

藤代:企画、だいぶ時間かけてやられるんでしょうか?

柘植さん:僕はあんまり企画は、すでにある企画をいただくことが多いので。そこまで時間はかけては、まあ企画の中でもたぶんいろいろ細かくあると思うんですけど。

藤代:ガラッと大きく変えることってあるんですか?根本は大事にしつつ、大きな方向転換を企画の段階でしてみる、とか。

柘植さん:ほとんどないですね、なかったと思います。基本的にはこの企画やってみたいなっていうものをやらせてもらう、受けてるって言うのもあるんですけど。ガラッと変えたっていうと、「のとつづり」は変えてます。もともと総集編的な、季節ごとの断片を集めた1本の映像を作るという企画が、43本くらいになっているので…ガラッと変わってます。

藤代:ありがとうございます。他に、お知らせありますか?今後「のとつづり」が、また続いていくとか。

鎌田さん:総集編。そもそもの用件だった、総集編は、まだ時期未定ですけど。公開される予定ですね。

藤代:だいぶ寝かし続けてはいたんですね、総集編自体は。

鎌田さん:そうですね。一番いいタイミングで出した方が、どうせならみんなが旅行を検討するぐらいの時期に出した方がいいなあ、とか、コロナきたなあとか。色々あって、ずっと延びてますけど。ほとんどできてんじゃないかぐらいまできてるんですけどね。

藤代:あともうちょい、ですね。

鎌田さん:すごいすよ、びっくりしますよ多分、全然違くて。

藤代:そうですか。へえ、楽しみ。何かやり取りとかありましたか、コロナになってしまってとか、いろいろ能登も大変だと、多田屋さんも。

鎌田さん:多田屋さんのサイトのリニューアルの話もあったんですけどそれも止まってますし。次のなんか動きが出るとしたら、多分総集編なのかなって感じはします。

藤代:柘植さんはこの4月以降とか自粛期間中とかはどう過ごされていましたか?結構忙しくされていましたか?

柘植さん:いや全く忙しく、なく。棚作ったりとか、してましたね。まったく映像を作ってなかったですね。

藤代:急にバタバタっと止まっちゃいましたもんね。

柘植さん:4月以降、何もやってないわけじゃないですけど。何もやってない時期が、やっぱりありましたね。

藤代:鎌田さんは影響なかったですか?

鎌田さん:そうですね。長期的なやつを数絞ってずっとやってたんで。それが、速度は落ちたものの、なくなったわけではないんで。あとはDentsu Craft Tokyoって言う組織に所属してるんですけど、そこで何か2プロジェクトほど立ち上げて何かやろうという話があったんで。それ仕込んでたりとかして。なんだかんだバタバタしてましたね、

藤代:柘植さんは何かお知らせありますか?

柘植さん:特に、ないんだけど、「のとつづり」観てほしいですね。

藤代:これをきっかけにというか。

鎌田さん:ちょっと数が多いですけどね。垂れ流しでもいいんで。

藤代:これ終わったら。あれ、流しておくだけでもなんか気持ちいいですよね。

柘植さん:どれから観ても、良いと思いますんで。

藤代:観ていただいて。この配信は終わりますけれども、引き続き「のとつづり」を1時間以上観ていただいて(笑)。ありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?