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DRAWING AND MANUAL Local Action Series: vol.1 Yuichiro Fujishiro | LOCOVISION #01 中編

DRAWING AND MANUAL所属ディレクター藤代雄一朗が企画・ナビゲートする地方創生トークイベント「LOCOVISION」。2020年7月に行われた第一回のイベント書き起こしの中編です。(前編はこちら

中編:目次
「旅シリーズ」
「ディレクターとクリエイティブ・ディレクターの出会い」
鎌田さんからみる映像ディレクターとしての柘植さん
「残る作品、感動の共有」

「旅シリーズ」

藤代:次の話題の「旅シリーズ」って書かせてもらっているところのお話も。今、柘植さんお話ししてくださったところと重複するんですけれども。以前撮っていた草津の映像とか、美濃の映像を僕も見てすごく感銘を受けて。僕とかもうそれに完全に影響を受けて映像始めたんですけれども。

藤代:その当時の話も改めてお伺いしたいなと思っていて。先ほどはああいう撮り方は一旦いいかなって思ってると仰っていたんですけど。当時はどういうきっかけであれを撮り始めてアップして。いろんなところでお話しされているかと思うんですけど。もう一回お伺いしていいでしょうか。

柘植さん:当時、Ustreamって言うライブ配信のサービスがあって。企業のプロモーションのイベントだったりとか、そういうものを配信する仕事が多かったんですね。その時にキヤノンの5D、いわゆる一眼で撮れるカメラが出始めて。もともと、そのUstreamを5Dで撮ったら綺麗なんじゃないかっていう動機で。当時所属していた会社でカメラ買ったんですね。

それで撮った映像ってどんな感じなのかなあと思って、5Dを持って旅行に行った時にいろいろ撮ってきて。で、撮ったままももったいないんで、つないで音楽つけてみたっていうものがいくつかできた、っていう感じですね。最初は江ノ島とか行った時の映像を繋いでみたら良かったので、草津を撮ってみようよっていう感じの流れだったと思いますね。全く誰かに頼まれたものでもなかったんですけど。

藤代:ほんと旅行のついでみたいな感じ。

柘植さん:そうですね。

藤代:あとは一眼レフで撮れる映像やってみようみたいな。すごい反響だったわけですよね、実際。公開してみたら。 

柘植さん:当時の僕らからしたら、突然Vimeoの再生回数すごい再生されているっていう。エラーじゃない?みたいな。青木さんていう、今MATCHAって言う会社の運用されている方ですけど、ブログで取り上げてくれて。それがみんなに読まれる記事になって。結構見てもらえた、って言う流れですかね。

藤代:ちょっと今お話でた、MATCHAの青木さん、それまではお知り合いじゃなかったんですよね?でもその後一緒に会社に入ってきましたよね、青木さん。

柘植さん:入ってきましたね(笑)

藤代:青木さんも多分めちゃくちゃ感銘を受けて。よく一緒にその後は撮りに行ったりとかしてたんですか?

柘植さん:いや、よくは行ってない。僕…1回か2回くらい?

藤代:思ったより少なかった(笑)。青木さんも今なんかすごい、今日MATCHAのなんかインバウンドイベントみたいの、僕らこのイベントやる前の時間までやってて。そっちもそっちですごい大盛況だったみたい。

柘植さん:青木さんとかに話聞いたらいいんじゃないですかね。

藤代:面白いかもしれないですね。いずれ呼びたいなぁと思いつつ。それでこの映像がすごく反響があって、こういう映像を撮って欲しいみたいな仕事は当時はいっぱい来たんですかね。

柘植さん:当時、映像業界というか広告業界のこと、全然知らないというか。本当無名の会社だったと思うんですけど。どっちかというとウェブサイトを作ったりしている会社だったので。おかげで映像色々依頼は増えて。自分としてはそこからCMとかの仕事をいただくようになったんですけど。

藤代:鎌田さんと知り合いになられたのもそのぐらいの時期なんですか?

鎌田さん:僕がお会いしたのは「のとつづり」の相談した時ですよね。

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藤代:あ、そうなんですね。

鎌田さん:のはずです。それこそ草津の映像を見て、柘植さんに頼むんだって思ってたんで。

藤代:じゃあその時に初めて会ったということだったんですね。

柘植さん:え、そうでしたっけ(笑)?

鎌田さん:違います?「のとつづり」が最初でしょ?

藤代:だいたいそのくらい?

柘植さん:あれ、「UQiYO」で一緒にやったのはその後です?

鎌田さん:あれ何年だったんだろう。

藤代:あ、別のプロジェクトも一緒にやってらっしゃったんですね。

鎌田さん:UQiYOのPVっていうのは、アーティストの。柘植さんは柘植さんでやって、僕は僕で作ってみたいな感じでしたね。でも最初は「のとつづり」のはずですけどね。

藤代:ほぼ時期を同じくしてみたいな感じ。

鎌田さん:多分。

藤代:鎌田さんもあの映像を観て知って。

鎌田さん:そういう意味ではうわっ、すごい監督さんだなと思ったのは草津あたりがきっかけですね。

藤代:それがたまたま「のとつづり」って企画と合うなぁと思って。

鎌田さん:そうですね。「のとつづり」で映像っていうのはやりたいとずっと思ってたんで。

藤代:映像の企画をされる事ってよくありますか?「のとつづり」以外でもウェブの企画で映像を絡ませて。

鎌田さん:頻度が高いのかどうかわかんないですけど、あるはありますね。映像で伝えられることってやっぱり、ウェブだけで伝えられるものとは違う深さがあるじゃないですか。なんで、できれば映像があるといいなと思うことは多いです。


「ディレクターとクリエイティブ・ディレクターの出会い」

藤代:次の話題の「ディレクターとクリエイティブ・ディレクターの出会い」を2人の出会った時の話とかを伺いつつ。僕はどうしても映像のディレクターとしての目線になってしまうので。どうやってマッチングするというか。この企画はこのディレクターがいいなあって思いつくとか、決める時のきっかけとか。その時の考え方みたいのもお伺いしたいなと思って。

鎌田さん:「のとつづり」に関しては柘植さん一本で考えていたんですけど、それ以外の場合はプロデューサーの人に、柘植さんと一緒にやっている山田君に相談して。

藤代:いろいろ出してきてくれた人から選んだり。

鎌田さん:プロデューサーの山田君は当然このプロジェクトも関わってくれてて。で、やりたいことを共有すると、それを咀嚼して解釈をしてくれて、最適な、いろんなお金のことも当然含め、チーム体制を整えてくれるっていうことをしくれるので。映像を企画して作りましょうっていうのはこれが初めてかもしれないです。

藤代:ああそうだったんですね。「のとつづり」が。

鎌田さん:多分。だから柘植さんにお願いして作ってもらいたいっていうのはずっとあったっていう。

藤代:一緒に仕事がしたい、みたいな。

鎌田さん:そうですね。

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藤代:で、そこの出会いがやっぱうまくいくからこそ、プロジェクトが良くなるっていう考え方もあるのかなぁと思っていて。「のとつづり」であったら、ああいう景色って素敵だよね、とか人々の様子をああやって切り取るのがいいよね、って言う思いが一緒になるとすごくハッピーなプロジェクトだったりするけれども。なかなかそこの意思疎通が最初の段階からちょっとあってなかった、みたいな例もたまにあるとは思うんですよね。
そういう時にどうしてらっしゃるのかなぁと思って。複雑な質問ですけど。
でもやっぱり最初の段階で間違えないということ、ですね、マッチングを。

鎌田さん:そうですね。そこはやっぱり重要視しますね。チームの相性がいいというのはかなり重要だと。特にこれなんてかなり長期で一緒にやるプロジェクトは、合わないなと思ってるとできないですよね。

藤代:柘植さんもなんかそういうことってありますか?ちょっと言いづらいかもしれないけど。

鎌田さん:まあ、ありまして〜って(笑)。

藤代:ネガティブな方っていうよりかは、やっぱこの人とはすごく意思が合うなぁって思った人と積極的にいろいろ作っていく方がいいものいっぱいできますよね。

柘植さん:そうですね。そもそも僕に監督をやって欲しいって選んでくれた時点で多分マッチングしてないことはないと思うんですけど。例えばそれがいろんなクライアントさんからの意見だったりとか、いろいろな人の意見によって、その人の良さや、僕らしさみたいなものをあんまり出せなくなっちゃったなぁって言うこともあると思うんですよね。
それはクリエイティブ・ディレクターと呼ばれる人と合わなかったっていうよりも、もうちょっと大きな力でうまくいかなかったな、っていうことはあったような気がします。
でも「のとつづり」に関しては結構みんなフラットな感じというか、誰の意見が強いかはなく、(多田)健太郎さんを含めて同じ目線で話しながら作っていった感覚ですね。鎌田さんがこうしたいというものを作るっていうよりも、お互いこういう感じがいいんじゃないかと言うのを話し合いながらやっていけたような気がします。

藤代:そういうのはいいですね。

鎌田さん:ま、プロですから、餅は餅屋という。あんまり口出しはしない、映像演出だったりとかそういうところに関しては。自由にやってもらえるのは一番良い作品、アウトプットにつながると思っているので。
草津とかああいうのは何の制限も縛りもなくて、自分の撮りたいものを撮ったのが結果良かったっていうのがまさにそういうことだと思うんですけど。僕は僕の役目としては、自由にやらせてくださいねっていうところだけを健太郎さんに対して握る。自由にやってくださいというのが結果一番いいものになると思ってたんで。

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鎌田さんからみる映像ディレクターとしての柘植さん

藤代:今回この企画をやるにあたって多田屋さん、多田健太郎さんにも連絡させて頂いて。資料とか出していいですかとか、映像を流していいですかみたいなお話伺って。是非ってお返事いただいたんですけど。
柘植さんっていいですよねみたいな話をしつつ。現場で柘植さん撮ってるの見ると凄さがより感じられましたみたいな返事いただいて。それ以上詳しく聞きたいんだけどメールだったんで聞けなかったんですけど。鎌田さんが見る柘植さんてどうですか?撮影のスタイルというか。

鎌田さん:すごいなと思うのは、多分監督さんされてて、映像もカメラ回すじゃないですか。多分頭の中で編集しながらなんとなくアウトプット、その最終完パケ状態をイメージしながら、欲しいカットを撮っていきながら、でインタビューもするんですよ。横でインタビュー僕がしゃべったりするし。それを聞きながら、映像の編集のことも考えながら、アングルのことを考えて、気になったワード欲しくて自分でしゃべりかけたりとか。複合的にやってるっていうのはすごいなって思いました。

藤代:なるほど。

鎌田さん:全体像が俯瞰して見えてるんだろうなっていう。最強じゃないすか、それって。

藤代:最強ですね。編集のことを考えて撮るっていうのはもちろんあるんですけど、やっぱり臨機応変に、いかに動けるかっていうのが力の差だと思うんですけどね。それがこう、研ぎ澄まされているんだろうなあという気はしています。僕まだ柘植さんの撮影してるとこ見たことないですけれども。よくまあこの時にこの引き画と寄り画があるなぁとか。
なんかそういうのすごく、見てて感じることがあるんですけど。その画のつながりのことだったり、その上でインタビューも引き出したい言葉も考えながらやってるっていうのはなかなかないなあ、できないなあって思いました。

鎌田さん:それはすごいなあって思いましたね。

藤代:柘植さんはどういうことを考えていらっしゃるんですか?いわゆるドキュメンタリー撮ってる時って。

柘植さん:「のとつづり」に関しては、企画によって撮る時に考えることで違ってくると思うんですけど、「のとつづり」ってその絵コンテってって言われるものとかシナリオとかそういうのもなくて。出たとこ勝負というか。その人に会って聞きたいことが出てきて聞く、撮りたいアングルを見つけて撮るっていう。ゴールがない感じで作っているんですよね。例えばさっきの朝市だったらこういう構成にしようみたいなものはないんですよ。さっき鎌田さん言ってくれたみたいに、編集のことを考えて撮ってはいるんですけど。思い通りに撮りたいものが撮れてるかどうかっていうのは5割、6割ぐらいだと思うんですけど。数なのかなって思います。何回かやってるとできてくることなのかもなと思う。
撮ってる最中に、この言葉に対してこの画を、この台詞にこの画を当てたいみたいなのが、多分思い浮かんでて。それをその後に撮っておくとか。逆に何かこのセリフ、こういうことを言ってもらったら、1本飽きずに見れるんじゃないかというのはその場その場で考えてやってはいます。

藤代:別の作品の話にもなっちゃうんですけどこの後ぐらいに、Hi-STANDARDのドキュメンタリームービーを撮られていたような記憶があるんですけれども。時期が前後してるかもしれないですけど。あれの撮り方も割とこの「のとつづり」に通ずるような。被写体との距離感とか話の間とかラフな感じみたいのは、やっぱこの「のとつづり」の経験が生きて、作風というかやり方が拡張された感じだったんですか?

柘植さん:そうですね。僕ドキュメンタリーっぽい映像が得意な人というイメージ、もともとが旅の映像を作って、やってきてるんで。ドキュメンタリーが得意な人というイメージを持たれてる人多い、らしいんですけど。でも僕自身としてはあんまりドキュメンタリーを作っている感覚はなかったんですよ。ていうかドキュメンタリーって言っていいのかな、ていう。自分の作ってるものが。ていう思いがずっとあって。ただその「のとつづり」ってドキュメンタリーで言ってもいいんじゃないかなあと思うシリーズで。Hi-STANDARDの映像に関してもそうですね。両方に共通しているのはやっぱり、ゴールを決めてない、こういう構成になると思わなかったなぁ、という感じで作っているものですね。

藤代:あと柘植さんは編集めちゃくちゃ時間をかける人って聞いて。編集はやっぱり時間すごくかけますか?さっきおっしゃってた、撮影の現場でそういうことを感じながら撮るっていうのも、大事なこと、柘植さんしかできないことだなぁと思うんですけれども、それを編集でどう試行錯誤するのか、伺いたいなぁと思って。
「のとつづり」は別の方が編集されたりとかして、ある程度ゼロからつなげるっていう話ではないと思うんですけれども。どういったところに気をつけて編集していくのか、話の筋だったりとか、メインで写っている人がどうすればその人らしさが出てくるかとか、そういう観点なんだろうなあというふうに思ってるんですけど。

柘植さん:編集が時間かかる理由は、何も考えずに撮ってるから、編集で考えなきゃいけないっていう。事前に考える時間が、普通はその撮影の前に色々考えとかなきゃいけないこと、その時間を編集にあててるっていう感じなのかもしれないんですけど。撮れた素材でどういう料理にしようかなあ、みたいな感じなのかなと思います。

藤代:やっぱり編集で変わる可能性にはある程度かけているというか、それは大事にしてらっしゃるってことですよね。

柘植さん:そうですね。あと「のとつづり」、この後話すかもしれないんですけど、どこかの地方を紹介したいとか魅力を伝えたいと言う時に、やっぱりここってこんなに綺麗ですよとか、こんなにおいしいですよとか。やっぱそういうアピールするところって出てくると思うんですけど、そういうのを選んでないんですよね。そもそもそういうことを言ってもらおうとしてないんですけども。それよりも普通はカットされちゃうような言葉とか、直接能登いいですよということにつながらないかもしれないんですけど、でもその人の人生が垣間見えるというか、そういう言葉をなるべく残すようにしてて。だから時間をかけているのは言葉のつなぎ方、それはもしかしたら一番時間かかっているかもしれないです。

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「残る作品、感動の共有」

藤代:この次のテーマとも関わるようなところかなと思っていて。「残る作品」っていうのと「感動の共有」って書かせてもらったんですけれど。
まさに今おっしゃっていただいているような観点がこういうところにつながっているのかなあって。
鎌田さんも何か企画をする時に、もちろんそのクライアントの要望、課題を解決するってことが一番大事だと思うんですけれども。それであるって事はそれを作品と呼んでいいかどうかっていうのはあるかもしれないけど、やっぱりいろんな人に見てもらわなければいけないし、長く記憶に残るものを作るということが必然的に大事なことになると思うんですけど。企画されてる時に感動を観ている人に伝えるとか、ずっと残り続けてほしいって思う時、どう考えてらっしゃるかなっていうのもお伺いしたいんですよね。

鎌田さん:僕がやってる仕事、ウェブサイトが中心なんですけどけっこう色んなタイプがあって。広告、この期間中この商材を売りましょうというものであったりとか、一方で多田屋さんのサイトは2011年からずっと形変えずにやったりとか、そのサイトはどうあるべきかというのに合わせて作り方も変わってくるんですよね。短期的に局地的にインパクト「バン」て与えたいんだったら、その時でしかダメなもの、の考え方をするだろうし。長寿命というか長期的に運用していくサイトの場合は、その時じゃなくてもよくないとダメじゃないですか。なんで、多田屋のサイトに関しては「のとつづり」含め、10年経っても何も変わらず普遍的な良さ、強さみたいなものを求めて、結果今も公開できているので。その広告の局所的なところがインパクトと対局にあるんだけど、別にどっちのケースにおいても、それぞれ正しいと思うんですよね。だから、残る作品づくりというと…

藤代:結果残っていく、と。

鎌田さん:耐久性の強いものづくりというのは、長期的に運用するウェブサイトにおいてはそう思いますよね。

藤代:ちょっと幼稚な質問になってしまうかもしれないんですけど。ずっとウェブを作っている。作ることが好きでそれを仕事にしてらっしゃると思うんですけど。

鎌田さん:はい。

藤代:自分が好きなものとか、表現したいものとか、なんとなく自分なりの好きなものの軸みたいなのがありつつ、お客さんの課題を解決するみたいなところで。企画が下手な人っていうのはきっとそこのバランスが上手く取れないから、自分の価値観に偏っちゃったりとか、課題のほうに寄せすぎるとそれはそれでカチカチのものになっていっちゃうとか。この話難しいですかね(笑)。

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鎌田さん:ウェブが好きで、最初趣味で作ってたくらいで。ウェブづくりそのものが好きだったりするんですよ。それは、いろんなタイプのウェブサイトがあって、別にどれも楽しいんですよね。なんでこの課題があってそれを解決するためのものが、カチカチだから面白くなくなるわけでもなく、カチカチでも面白いんですよ。課題を解決していくというのが最大の喜びだったりはするので。その中で楽しく作れるように導いていくというのは、当然します。その仕事自体が楽しめるようなエッセンスを一つ以上必ず作る。
例えば課題を解決するだけだとあまりにルーティンワークが続いて、画一的な、チャレンジングなことが盛り込めないんであれば、課題の横っちょに勝手に個人的チャレンジみたいなものを設定すれば、楽しくなるじゃないですか。ウェブサイト作るってけっこうすごい時間かかるからその時間を不毛にしないためにも、モチベーション高くやっていくためにも、チャレンジ、楽しめる要素をなにかしらつけるっていうのは、多分しています。

藤代:なるほど。

鎌田さん:好きな表現とかっていう話になってくると、無理やりはめ込もうっていうのは考えてなくて。俺が前気になってたものがマッチするかもっていうのはありますね。マッチするポイントを見つけたらそれをやる。柘植さんとかまさにそうで。いつかこういう旅系のやつが、映像コンテンツとして出せたらいいな、っていうのがあって。で、多田屋という仕事もやってたから、状況的に映像をどのタイミングでやろうかっていうのでくすぶってたんですけど。待ってられないということで提案して、作りませんかって。それは自分の好きな表現と課題がマッチしたということだったと思います。

藤代:柘植さんも企画を作る時、鎌田さんが仰っていたみたいな自分が楽しめるポイントを作るとかありますか?

柘植さん:もちろんやってる作品、お仕事に何かしら面白さを見つけたいなあと思ってますけど。残る作品って書いてあるんですけど、やっぱり個人的にはさっき言ってたように10年経っても観れるようなものを作りたいな、とは思ってますね。その時すごいバズるとか、話題になるっていうよりも、そんなに話題にならなくてもいいから、極端に言うと自分が死んだ後でも誰かが観てくれるようなものを作りたいなと思ってますね。
毎回「のとつづり」の撮影の時、多田屋さんに泊まらせてもらってるんですけど、そういうのがやりたいんだよって鎌田さんも言ってましたけどね。男子はみんな同じ部屋で寝るんですけど、なんかそんな話したなあって、今思い出しました。

鎌田さん:言ってたかも。

柘植さん:鎌田さん酔っぱらってて覚えてないかもしれないけど。

鎌田さん:死んだ後でもっていう、ああ。大体夜はお酒飲んでるんで(笑)。

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藤代:そもそもみんな同じ部屋に泊まってたんだ、って。

鎌田さん:あ、そうですね。

藤代:可愛いなあと思います(笑)。

鎌田さん:でも思ってますよ、死んだ後もいい、って。

藤代:でもやっぱり難しいテーマというか考え方だなと思いますね。

鎌田さん:ウェブサイトより映像の方が多分、作品性が高い、完パケそこで終了するじゃないですか。

藤代:はい。

鎌田さん:ウェブサイトってずっと運用していったりするので、作品と思う一方、作品というのに違和感も。

藤代:ウェブサイトは変わっていっていいものですから、継続で運用していく中で形を変えていくものですよね。

鎌田さん:完成しないものだと思ってるんですよね。永遠に完成しないというか。

藤代:確かに、映像の方がそういうのは強いかもしれませんね。

鎌田さん:継続的にお付き合いしていけるような仕事というのは大切にしていきたいとは思っていますね。

藤代:逆に10年残るものを考えるときに、どういった視点で考えればそういうものを作れるんですかね。単発じゃないものに仕上げるための考え方というか。
柘植さんはその映像の企画されている時って10年先、もっと先に残るために考えていることってあります?なんか漠然とした質問ばっかりですみません。

柘植さん:そうですね。10年残るものが、いいっていうわけじゃない。ただ個人的にそういうものを作りたいなって思ってるだけで、企画とか目的によって、残るものじゃなければいけないわけではないけれど、自分はそういうものを作りたいなぁと思っている。
ので、例えばテクニカルな話ですけど流行っているカメラワークとかトーンとか、流行ってるっていうよりなんていうんですかね、なんかそういうものを取り入れないというか、あまり流行りの表現みたいなものを自分はあんまり使わないかもしれないですね。
あと「のとつづり」とかに関して言うと、誇張しないというか、ありのままを撮る。なんであんな風に見せちゃったんだろう、っていうことのないよう、僕らが能登に行った時はこういう感じでした、っていうのをそのまま伝えるっていうことなのかなあと思いますね。

藤代:難しい質問ですみません。ありがとうございます。僕「のとつづり」を見て、こういうのやりたいなと思って、一回やってみたことがあるんですよ。

鎌田さん:映像?

藤代:はい。旅をする人を用意する、というか結局それが敗因になったのかもしれないですけど。誰か旅する人を連れてきて、初めてそこの街を旅する様子を側から撮ってつなげよう、みたいな。ちょっと真似してやってみようとしたんですけど。なかなかこれが、「のとつづり」みたいにいかないもんで。すごい難しい、温度感だなと思いました。
僕がやってみた時はそこの土地を知らない人、バンドメンバーだったんですけども、そこに訪れて旅をさせるって感じだったんですね。僕ら何すればいいんだっけ?、みたいな感じで始まってしまって。場を用意してるんだけれど、その場に行ってあまりそこまで盛り上がらなかったりとか。お饅頭美味しいですね〜、みたいな感じで終わっちゃったりとかして。
で、なかなかその場づくりが大事、そこに呼ぶべき人もそうだし、その人を呼んだときに楽しませるというか。自然に過ごせる環境づくりみたいなのも大事だったんだなあ、とか。色々そういうのをやってみた後に思ったんですけど。

鎌田さん:健太郎さんとその取材対象の方との関係性が構築されているのもあるし、僕も前からずっと知り合いだし。誰も演技する気がないので、普通でいられるというか。さあ始めてください、じゃない。

藤代:旅好きというか、やっぱり楽しんでるのって人選もあるのかもしれないですよね。行けば楽しいとは思うんですけど、クルーの仲の良さだったりとか。

鎌田さん:そうですね、それはやっぱり重要だと思います。

藤代:それがあってこそ、その空気をそのまま伝えれば、観てる人は一緒に混じったような気になるんだなあ。

鎌田さん:だからロケ撮影と思わずに旅行っていう感覚でやってたのはよかったんだろうなと、今となっては思いますね。最初冗談で、いや仕事だから!って言ってたんですけど。旅行じゃないよって。多分旅行に行く感覚で素でやってたというのはよかったのかもしれないですね。
あと上手に撮りますしね、知らないうちにいいとこ撮っているとか。カメラを意識させないように撮るのも上手だし。逆にカメラを意識させてちょっとぎこちなくやってるところが人柄が出てきたりとかするし。

藤代:確かに、そうですね。カメラの存在、そういうのも意識して撮られてますか?意識を消すときと、出すときみたいな。

柘植さん:そうですね。あの、意識してます。カメラを向けた時に普通は照れたりするじゃないですか。でもそういうとこ使える企画か使えない企画かって分かれると思うんですけど。これはそういうのアリだなと思ってたんで積極的に、敢えてカメラの存在を意識させるような撮り方もしますし。こそっと撮っているのもありますね。いや、でも堂々と撮ってました。堂々と撮り過ぎて、ましたね。

鎌田さん:僕らが慣れてたっていうのもありますよね、多分。最初映っていいのかな?しゃべっていいの?て感じだったんですけど、途中からもう、いいんだ、みたいな。

柘植さん:例えば普通撮影で、じゃカメラ回します、というときはみんな静かにするじゃないですか。それ、やだなあと思って。それで空気が変わっちゃう。だからカメラ回してる回してないは関係ないというか。常に本番のようで本番がないみたいな、なんかそんな感じですよね。

鎌田さん:そうかも。だんだん撮影回重ねる度に、回してない時と回してる時の差がなくなっていったというか。空気は確かにピリッとしますもんね。

藤代:普通そうですよね。カメラ回ったぞ、みたいな。あれを消すの、難しいですよね。あの雰囲気を。

鎌田さん:回を重ねてるっていうのはすごい重要なんでしょうね。


(後編に続きます)

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