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「人生の転機」としてのTaylor Swift

誰しも一度は「人生の転機」というものに巡り合ったことがあるのではないでしょうか。


それは、ある人にとっては一冊の本を読んだことかもしれないし、ある人にとっては一曲の歌を聴いたことかもしれません。あるいは、誰かと出逢ったことかもしれないし、逆に誰かを喪ったことかもしれない。はたまた、海外留学のような貴重な経験をしたことかもしれないし、戦争のような悲惨な経験をしたことかもしれない。

「そんなものないよ」と思っていても、後々になって振り返ってみると、「ああ、あれが転機だったのかもな」と気づくこともあると思います。

僕は、まだ24年間しか生きていませんが、それでも「人生の転機」だったと思える経験は、いくつかあります。

その中でも、最も大きかった「人生の転機」が、「東大を目指したこと」だったと思っています。



僕が東大を目指すようになったのは、高校3年生の5月、ゴールデンウィーク明けのことでした。

これは、多くの東大志望者と比較すると、かなり遅い時期だと思います。

というのも、高3の5月というと、すでに多くの東大志望者が、東大の過去問を解くなどの本格的な受験勉強を始めている時期だからです。

その意味で僕は、東大志望者としてはやや出遅れた存在でした。



なお、誤解のないように言っておくと、僕は高3の5月までずっと志望校が固まっていなかったわけではなく、むしろ高1のころから一貫してある別の大学を志望していました。

実際にその大学に足を運んで、先輩にキャンパスを案内してもらったこともありますし、高3になった時はすでにその入試問題に特化した勉強も始めていました。

むしろ順調すぎるくらい計画的に受験勉強をしていたと思います。



そんな僕が、なぜ急に東大を志望するようになった(なってしまった?)のか。

実は、僕の進路選択に大きな影響を与えてくれた人物がいます。

それが、かの有名な世界的アーティスト、Taylor Swiftです。



僕が初めてTaylorの音楽に触れたのは、中学生の時でした。

ちょうどそのころは、Taylorの4thアルバム『Red』がリリースされ、世界的に大ヒットしている時でした。もともと僕の姉がハマっており、姉に影響されて僕も聴くようになりました。Taylorは、僕が中高生時代に最も聴いた海外アーティストだったと言ってよいでしょう。


そんなTaylorは、僕が高3だった年のゴールデンウィークに、初の来日ライヴを東京ドームで行うことになりました。

当時すっかりTaylorの大ファンになっていた姉と僕は、何としても生の歌声を聴きに行こうとチケット争奪戦に参戦。見事、姉が2枚のチケットを確保してくれました。

そんなこんなで、姉と僕は、当時住んでいた北海道からはるばる、飛行機に乗って東京へ向かいました。

そしてその東京旅行が、僕の「人生の転機」となったのです。



東京に来た僕は、感動の余り言葉を失いました。

信じられないくらいの人混み、青空を四角く切り取る高層ビルの数々、黄緑色の車体で颯爽と走るJR山手線、建物の隙間からのぞく東京スカイツリー……それまで2、3回しか東京を訪れたことのない僕にとって、テレビの中にしか存在しなかった世界が目の前にありました。

当時の僕は(今もですが)、週に10数本の番組を毎週録画しているほどのテレビっ子。『月曜から夜ふかし』で東京の人が街頭インタビューを受けていたり、『マツコの知らない世界』で東京のお店が紹介されていたり(マツコばっかやんけw)するのを観ては、東京に対する羨ましさと憧れを感じていました。

東京ドームでのTaylorのライヴが破茶滅茶に楽しかったのはもちろんなのですが、東京で目にするもの、聞こえてくる音すべてが、僕にとってはすさまじい感動体験だったのです。

そして僕はこう思いました。

東京に住みたい。



東京から北海道へ帰った後、僕はすぐに親と担任の先生に志望校を変更したい旨を伝えました。東京にある大学で、僕の進学条件に最も合う大学が東大だったので、迷わず東大に決めました。その行動は、自分でも驚くほどスピーディーで、その決意は、不思議なほど固いものでした。幸い、親も先生も僕の背中を押してくれたので、僕はいよいよ本格的に東大を志望することができました。

文系で東大を受験する場合、世界史・日本史・地理から【2科目】を選択しなければなりません。しかしその時の僕は、世界史しか履修していないという状態。だから、高3の5月から慌てて日本史を独学で勉強し始めました。高1の時から着々と進めていた受験勉強の計画は、一挙に崩壊。成績も途端に伸び悩み、かなり苦しい状況でした。それでも、「東京に住みたい」という気持ちは一度も揺らぎませんでした。そして散々苦しみながらも、なんとか現役合格に滑り込むことができました。



ここまで読んでくださった方の中には、「なんてミーハーな!」と呆れた方がいるかもしれません。

あえて補足しておけば、もちろん「東京に住みたい」という理由だけで東大を目指したわけではありません。

僕が大学で学びたいと思っていたことや、希望する進路を叶えるために、最も適していた大学が、東大だったということも紛れもない事実です。

そして実際のところ、当時の僕が関心を寄せていた学問を学ぶには、少なくとも日本においては東大が最も恵まれた環境でした。

ただそれでも、僕が東大を目指すきっかけとなった「人生の転機」が、ミーハーな気持ちであったことは否定しきれません。

そしてその「人生の転機」を引き起こしてくれたのが、僕にとってはTaylor Swiftだったのです。

だから僕は、このようにさえ思っています。

Taylor Swiftと出逢っていなければ、東大に進学することはなかった。



いつ、どんな出逢いが、自分の人生に影響を与えるかは、誰にもわかりません。

もしかしたら、今、何気なく取り組んでいることやハマっているものが、10年後、いや20年後の自分に、思いがけないかたちで影響を及ぼすかもしれません。


だからこそ大切なのは、刹那的に生きること。今この瞬間の行動選択を吟味すること。たとえ悩み、苦しみ、もがいたとしても、否、だからこそ、未来の自分を支える大きな力になるはず。僕はそう信じています。

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