国策としての少子化対策ー人口減少時代で切実なのは超高齢者の絶対人口増大 Part6

 「人口減少時代って悪いこと?」と疑問視し、日本は小さな島国の4分の3が山地で、残りの平野に殆どの人口が住み、特に大都市圏では過密だ、と触れました。

かつて高齢化は過疎地域の問題でしたが、その原因は少子化なので国策として少子化対策を重視していますが、カナダのような広大な国の人口が3千万人で、これは首都圏(1都3県)と同じ規模。介護保険や老老介護を考えた際、問題なのは割合ではなく、絶対人口なのです。

「高齢化」の定義は総人口に占める65歳以上人口の割合で、高齢化率は過疎地域では高くても人口が少ないから高齢者の絶対人口は少ない。これに対し割合は高く見えなくても、大都市圏は総人口が多いので、特に後期高齢者の絶対人口の多さが深刻。

 寝たきり老人が一つの家庭に1人居るのと2人居るのとでは、どの位大変か、想像に難くない、と触れました。しかも、大都市圏の中で更に深刻なのは、千代田区のような人口の少ない都心部よりも、郊外から40キロ圏なのです。

「庭付き一戸建てで犬が飼える」が憧れだった時代の70年代以降,山や高台を造成・開発された当時の「新興住宅街」が高級住宅街として、ファミリー世代には絶大な人気。しかし、今や、必然的に坂の多い住宅街の子供世代は既に50代以上であり、結婚と共に独立して、残された親世代が後期高齢者、しかも80代以上が殆どです。

彼らは当初、交通機関が至便でないことから「買物難民」と呼ばれました。若い頃は車でどこへでも買い物に行けても、今や80代がハンドルを握るのは危険で、運転免許証を返納する方が増えています。

 その結果、例えば小田急線沿線に玉川学園前という高級住宅街がバブル時には1億5千万円で売却できたのに、今はその3分の1の価格。そもそも、一戸建は、庭木剪定や草取り、ゴミ分別など面倒が多く、終のすみかはマンションで、という方が増加中。玉川学園にはその高級なイメージで、かつて医師、弁護士、大学教授、会社社長など富裕層かつ知的な方々が好んで住んだので、将来の坂の多いまちの住民の足をどうするか、ずっと議論し、町内会がコミュニティバスを運行させ、総務省から表彰!(注:私の査読付論文)。

 しかし、さすがに子世代が親を呼び寄せたり、高齢者自身が一戸建売却でマンションを購入する動きから、空き家も増えつつある。しかも、介護保険では、高齢者夫婦2人より単身が優先されるので、老夫婦2人では,どちらかが介護をしなければならず、プライドの高い方々は、デイケアやショートステイを好まないので、介護する側の心身共に疲弊していく傾向は強まる一方です。

最近は「終活」が盛んになり、いかに自分の人生を終わらせるか、が目標となりつつあります。子供の教育や仕事だけに掛けてきた世代は、これから自分が楽しむべきことを見つけられず、配偶者もしくは自身の介護が難題として山積しています。

子どもはいつか独立します。勿論、子世代が介護していた結果、婚期を逃して非婚の方々も増えています。公助だけに頼れない、互助・自助が、今こそ求められているのです。

健康寿命を伸ばすため、中高年になる前に考える時が来たと言えそうです。

注)田中美子(2014)「玉川学園地域のコミュニティバス導入を事例とした、市民と自治体の役割」『自治体学』Vol.27-2

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?