ベジタリアンは本当に健康なのか

健康のために肉を食べない と 健康のために肉を食べる

双方どちらもよく聞くフレーズです。さて、健康に実際のところどちらのほうが健康にいいのでしょうか。ベジタリアンの研究は元来肉食の割合が大きかった欧米に置いて研究が進んでいます。現在のところで明らかになっているベジタリアンのメリットとデメリットをご紹介します。

メリット

1.大腸がんを減らす

日本人を対象とした研究では、肉類全体の摂取量が多いグループ(約100g/日以上の群)で男性の結腸がんリスクが高くなり、赤肉(牛肉・豚肉)の摂取量が多いグループ(約80g/日以上)で女性の結腸がんのリスクが高くなりました。この影響は、年齢、飲酒、肥満などのがんの別の要因を取り除いて解析しても確認されました。

赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて  

2.糖尿病のリスクを減らす

対象者の食事摂取状況を分析したところ、植物性食品を主に摂取している人ではそうでない人に比べて2型糖尿病のリスクが23%低いことがわかりました。 さらに、野菜や果物、豆類、ナッツ類、全粒穀物など、食物繊維やビタミン、ミネラル、抗酸化物質などを含む、いわゆる健康的な植物性食品を摂取している人ではその関連がより強く、糖尿病のリスクはなんと30%も低下していたのです。 今のところ糖尿病と菜食の直接的な関係は不明ですが、今のところ濃厚な説は食物繊維が豊富な食事が減量を促すとともにインスリンの効きをよくするためではと考えられています。

 Association Between Plant-Based Dietary Patterns and Risk of Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Meta-analysis. Frank Qian, et al. JAMA internal medicine. 2019 Jul 22

3.血圧を下げる

高血圧にも効果的です。過去の報告された観察研究32報(合計2万1,604人、平均年齢46.6歳)を解析した結果、ベジタリアンの食事パターン群は通常食群と比較し、平均収縮期血圧で6.9 mmHg、平均拡張期血圧で4.7 mmHg低く、ともに血圧降下と関連しています。

Vegetarian diets and blood pressure: a meta-analysis, JAMA internal medicine. 2014 Apr;174(4);577-87

4. コレステロールを下げる

ベジタリアン食は総コレステロール、およびLDLコレステロールを優位に下げます。コレステロールが上昇すると心疾患や脳卒中、悪性腫瘍の発生に寄与することがわかっており、この研究の中でも、これらの疾患のリスクも同等に下がったことが確認されました。

Vegetarian, vegan diets and multiple health outcomes: A systematic review with meta-analysis of observational studies. Critical Reviews in Food Science and Nutrition Volume 57, 2017

5. 心血管リスク

血圧、糖尿病、コレステロールはどれも心筋梗塞をはじめとする心臓・血管の病気を引き起こす原因です。ベジタリアン食はこれら3つとも数値を下げるため、結果心血管の病気になるリスクを減らすことに繋がります。 具体的には、動物性食品の摂取量が最も多い男性と比べて、摂取量が最も少ない男性では、心疾患リスクが25%低いことが分かっています。女性でも同様の傾向(11%リスク減)がみられたが、これらの関連は男性の方がより強い結果になりました。

Quality of plant-based diet may improve long-term CVD odds, especially in women 2020.3.18 HealthDayNews  


まとめると、以下の疾患においてベジタリアン食は肉食中心の食事よりもメリットがあることがわかっています。

1. 大腸癌を減らす
2. 糖尿病を減らす
3. 血圧をさげる
4.コレステロールを下げる
5. 心疾患を減らす

では、ベジタリアン食が完璧かと言うと、そうとも限りません。 いくつかのデメリットが報告されています。

デメリット

1.骨折しやすくなる

ビーガンは非ベジタリアンに比較して、総骨折のリスクが1.43倍、大腿骨近位部の骨折が2.31倍、その他の主要部位の骨折も1.59倍と、有意にハイリスクであることが分かりました。

考えられる一つの要因は、ビーガン、ベジタリアン、ペスクタリアンはいずれもBMIが低かったこと。BMIが高いことはエストロゲン分泌量が多いことや、骨の強度、転倒時の衝撃吸収性と関連することが報告されており、痩せ型が多いベジタリアンの人にとってはマイナスに作用したと考えられます。

別の要因は、肉を食べない人はカルシウムとタンパク質の摂取量が少なく、ビーガンはカルシウム摂取量が特に低いこと。ただし本研究において、食事中のカルシウム量やタンパク質量を調整因子に加えて解析しても、。そのため、未知の因子が骨の健康に影響を及ぼしている可能性もあります。

Vegetarian and vegan diets and risks of total and site-specific fractures: results from the prospective EPIC-Oxford study. Tammy Y N Tong, et al. BMC medicine. 2020 11 23;18(1);353.

2. 脳卒中

ベジタリアンの人は、肉食の人と比較し、脳出血の発生率が20%高いことが示されました。 予想される原因は、先ほど述べたコレステロール。上がりすぎると様々な病気の原因になりますが、下がりすぎると脳出血のリスクが上がることが最近明らかになってきました。菜食主義者はコレステロールが低い傾向にあり、それが脳出血の発症増加に繋がったのでは、と考えられています。

Risks of ischaemic heart disease and stroke in meat eaters, fish eaters, and vegetarians over 18 years of follow-up: results from the prospective EPIC-Oxford study Tammy Y N Tong et al. BMJ (Clinical research ed.). 2019 09 04;366;

3. 糖尿病(加工食品の食べ過ぎ)

ベジタリアン食は体重を落とし、糖尿病のリスクを下げる、と説明しました。しかし、肉食を避けようと、その食事内容が不健康な植物性食品に偏ると、逆に糖尿病のリスクが増加することもわかっています。具体的には、果汁飲料、加糖飲料、精製穀物(白パンやパスタなど)、菓子などです。ベジタリアンであればなんでも食べてよいわけではなく、植物性でも不健康な食品では糖尿病になる、という当たり前っちゃ当たり前の話です。

Healthy plant-based diet confers longer-lasting cardiometabolic benefits in obesity  2020.9.6 HealthDayNews  

わたしがかんがえるさいきょうのごはん

では結局どんな食事をとればいいのか。ここからは私の見解です。 基本的には菜食+魚+少量の肉が最強だと考えます。 野菜中心の食事は多くの生活習慣病を予防+改善します。一方で、菜食に偏るとタンパク質、脂質が不足し、炭水化物過多になる傾向になってしまいます。そこで不足しがちなタンパク質、脂質は魚から取ります。加えて不足しがちなヘム鉄を少量の肉から補っていきます。

あれ、この食事って......そう!和食です! 元来、和食はかなり菜食に近いスタイルです。塩分が多い、と言う点を除いて、とても優秀な食事と言えるでしょう。  

まとめ

・菜食は基本的に健康にいい
・ただし骨折/脳出血リスクは上がる
・菜食がなんでも健康的ってわけじゃない

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