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がっつりとカロリー収支のお話

『ざっくり編』では基礎代謝・総消費カロリーの求め方、そして、メンテナンスカロリーの考え方と減量の始め方をざっくりとお話ししました。まだお読みになっていない方は、まず『ざっくり編』からお読みいただけたらと思います。

今回は『ざっくり編』で紹介した「食事誘発性熱産生(DIT:Diet Induced Thermogenesis)」「生活活動代謝」についてと、最後に実践的な「減量の計画と実行」をお話ししたいと思います。

予備知識として、3つの消費カロリーが占める割合はだいたいこんな感じです。

1. 基礎代謝        ⇒ 60%
2. 食事誘発性熱産生(DIT) ⇒ 10%
3. 生活活動代謝      ⇒ 30%

この通りであれば、「 基礎代謝 ÷ 0.6 = 総消費カロリー 」となるはずだが、実際のところ、2.と3.の消費カロリーは食事の内容や活動量など生活のスタイルによる不確定要素が多いため、その計算では総消費カロリーを十分に反映することができません。活動量が低い人の消費カロリーを過大評価し、逆に活動量が高い人の消費カロリーを過小評価することとなります。活動量の差を補正するため、基礎代謝に活動レベル係数をかける方法のほうがより真の総消費カロリーに近い数値が得られます。

2.と3.については「不確定要素」が多いと先ほど述べたが、「不確定」ということは工夫次第で上げることも可能ということです。(逆に工夫を怠れば下がることもありえます)
本編では2.と3.の消費カロリーを上げるための工夫と注意するポイントを解説し、最後に目標体重を達成するための計画と実行について例を挙げて説明していきたいと思います。よかったらご購読下さい。

食事誘発性熱産生(DIT:Diet Induced Thermogenesis)

文字通り、食事することによって熱が産生される現象です。食事を摂ると体が温まるのもDITが関係しています。

一般的に、食事の摂取カロリーの約10%はDITで消費されるといわれているが、栄養素別でみると、それぞれDITで消費されるカロリーの割合が異なります。糖質では約6%、脂質では約4%、タンパク質ではなんと約30%のカロリーがDITによって消費されます。(だからプロテインを飲めばやせるとトンチンカンなことを言った某名物塾講師もいたが、もちろんそんな訳はありません)
同じ摂取カロリーでもタンパク質の割合が多い方がDITも高く、正味のカロリーが少ないということになります。ほかにも、食事のときによく嚼む人、そして、筋肉量が多い人の方がよりDITが高いと言われています。

ダイエットの話になると決まって「タンパク質を摂れ!」「筋トレをしろ!」なんて言われるが、「マッチョになりたいわけじゃないからいいです」と毛嫌いせず、れっきとした理論に基づいたメリットがあります。減量の時にはカロリー制限だけでなく、積極的にタンパク質を摂り、平行して筋トレも行うとより効果的だと思います。

だって、あとは食べるだけで勝手にカロリーを燃やしてくれるんですよ〜

いずれPFCバランスのお話も予定しているが、減量時にはタンパク質の割合を少々高めに設定した方がよいと個人的に思っています。

生活活動代謝

人の体は糖質(炭水化物)と脂質を動力源として生きるためのエネルギーを生み出します。自動車で例えるとまさにハイブリッドカーです。糖質を燃やして瞬時に爆発的なパワーを生み出す糖質代謝エンジンと、脂質を燃やして長時間にパワーを供給し続けられる脂質代謝エンジンの両方を積んだ高性能車です。

二機のエンジンの関係は on と off で切り替わるのではなく、メインとサブというように、それぞれの得意とする活動環境に応じて、出力のバランスを自動的に調整できる素晴らしい機能を備えています。しかも、糖質代謝エンジンで使えきれないエネルギーは脂肪に変えられ、脂質代謝エンジンのために蓄えられます。イヤになるほどの高性能です。

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ダイエットの目的は、言うまでもなく身体に貯まっている余分な脂肪を落とす作業です。(あえて筋肉を落としたいというマニアックな人もいるかもしれないが…)いかに脂質代謝エンジンの回転数が上がる環境を整えることが大事です。

糖質代謝エンジンをメインで使うのが無酸素運動で、逆に脂質代謝エンジンをメインで使うのが有酸素運動です。ここですぐに脂肪を燃やすために、ランニングやウォーキング、HIIT(高強度インターバルトレーニング:High-Intensity Interval Training)など名だたる有酸素運動の面々に飛び付くのは早合点です。確かに有酸素運動は脂肪燃焼に有効だが、HIITを除けばみなさんが想像するほど負荷が強くないし、時間がかかる割に消費カロリーが少ない。(“長時間続けられる運動⇒負荷が弱い”と考えていいと思います。負荷の強い運動を長時間に続けられたら、体を壊します。)

HIITは高強度運動のため、体力的にもせいぜい10分程度しか出来ません。短時間でしか行えないため、実際の消費カロリーはさほど多くない。(いや、私は20分も30分もHIITができますっていう人は、それはHIITじゃないと自覚すべきです。現在の体力に対して強度が不十分だと判断してください。)もちろん、HIITのあとのアフターバーン効果(高強度運動のあとに暫く代謝の上昇が維持される現象)も入れるとトータルの消費カロリーは数倍ほど高くなるが、時間が経てば代謝は元のレベルに戻ってしまいます。

現実的に有酸素運動を毎日しつづけることは時間的にも体力的にも難しく、また、長期間つづけることによって体に“慣れ”が生じ、同じ運動量でもカロリー消費が減少する現象が起きます。(人類の適応能力を馬鹿にしてはいけません)

誤解しないで頂きたいのは、ダイエットおける有酸素運動の効果を否定するわけではありません。メインの戦略としてではなく、ここぞという時に使えるカードとして取っておくといいと思います。

では、何をメインの戦略としてやるべきかというと、ご想像の通り「筋トレ」です。

筋トレの主な目的は筋肉量を増やすことです。そのためには高強度の筋トレが必要です。何十回も出来るような弱い負荷で筋肉はつきません。ただの「日常生活」とさほど変わらず、体が筋肉量を増やす必要がないからです。過酷な環境、つまり、「このままの筋肉量じゃ生きていけない」というシグナルを体に与えなければ、筋肉量は増加しません。

初めて筋トレに挑戦するのであれば、10 回前後で限界を迎えるような負荷をかけることができれば、筋肉は成長してくれると思います。(ほかにもいろんな理論や方法があるが、別の機会にお話しできればと思います)

筋トレのときは無酸素運動でカロリーが消費され、しっかりと高強度で行えばアフターバーン効果も得られます。筋肉量が増加すれば、基礎代謝とDITも増加します。また、通勤通学や階段の登り降り・家事など、ごく一般の日常生活(すべて立派な有酸素運動)での活動代謝も増加します。わざわざトレーニングをしなくても1日24時間のカロリー消費が上昇します。外見的にカッコいい引き締まった体作りのためだけでなく、生活活動代謝を上げるためにも、筋トレはいかに大事なのかをご理解頂けたかと思います。

減量の計画と実行

ここまでで『ざっくり編』から続いたカロリー収支についての基礎知識はほぼ網羅できたかと思います。では、具体的にどうのようにして実行に移せばいいのか?
例を挙げて説明してみましょう。

今から3ヶ月後、夏休みなど肌の露出が多くなる季節の到来に向けて、6kg ほどやせたいとしよう。
体脂肪 1kg あたり 7200kcal として計算します。(単純に脂質のみなら 9000kcal となるが、脂肪組織に含まれる脂質量は約 80% であるため、1kg の体脂肪は 7200kcal として計算します)
3ヶ月で 6kg の減量するためには、月に 2kg、週 0.5kg の減量が必要です。
つまり、日割りで計算すると 7200kcal × 0.5 ÷ 7 = 514kcal となり、1日約 500kcal のアンダーカロリーが維持できれば、理論的に3ヶ月で -6kg を達成できる計算です。

-100kcal/日 ⇒ -0.1kg/週

と概算として覚えておくと便利です。

ここで注意点

1. 月に体重 5% 以上の減量計画を立てない。
2. 摂取カロリー設定は基礎代謝を下回らない。

無理な減量計画は筋肉量の減少を招き、健康状態に影響を及ぼすためお勧めできません。お仕事または競技者など、期限までに目標体重を達成しなければならない特別な事情がある場合以外は、減量よりも健康を大事にしましょう。
計画を立てたのはいいが、実生活ではなかなか計画通りにいかない場面も多々あるかと思います。今週はあと 400kcal を落としたいけどこれ以上食事を我慢できないとか、昨日は付き合いで 500kcal ほど余分に食べちゃったからなんとかしたいとか、こういう場面でポイント的に有酸素運動を取り入れると非常に効果的です。このような有酸素運動の使い方は身体にとっても新鮮な刺激で“慣れ”がなく、効率よく反応してくれると思います。

以上、『ざっくり編』『がっつり編』と2回にわたって、カロリー収支・メンテナンスカロリー・有酸素運動と無酸素運動・消費カロリーの増やし方、そして減量の計画と実行についてお話ししました。いかがでしたか?
ダイエットが上手くいかなくて悩んだ時に、立ち戻ってやるべきことを再確認できる場所としてお役に立てれば幸いです。

では、次回もお楽しみに。
“ 一時の減量より一生の健康 “

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