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「14歳からのパレスチナ問題」でイスラエルとパレスチナの歴史を学ぶ

英仏がオスマントルコの領土を掠め取りたいために中東を勝手に切り裂いてイスラエル建国を認めたうえに,米が率先してイスラエルのやりたい放題を黙認しイスラエル非難の安保理決議はことごとく拒否権で潰して,国際社会はパレスチナの言い分や窮状を無視して今に至る,とすれば一体どうしろと.救いがない.

14歳からのパレスチナ問題: これだけは知っておきたいパレスチナ・イスラエルの120年
奈良本英佑,合同出版,2017

本書「14歳からのパレスチナ問題」では,14歳からのという枕詞に意味があるかは置いておくとして,副題「これだけは知っておきたいパレスチナ・イスラエルの120年」にあるように,パレスチナとイスラエルの歴史を知る上で重要な出来事に的を絞って解説している.読みやすく,全体像を把握するのに適した本だと思う.

本書で主に何を取り上げているかは「この本を読むみなさんへ」に書かれている.ザッとまとめると以下のようになる.

  1. オスマン帝国がパレスチナを征服したのが1517年.オスマン帝国による支配はその後400年にわたって続いた.

  2. 第1回シオニスト会議(バーゼル会議)が開催されたのが1897年.ユダヤ人がパレスチナに「ユダヤ人の民族郷土」を建設すると決めた.パレスチナ問題の発端と言える.

  3. 「バルフォア宣言」が出されたのが1917年.イギリスは「ユダヤ人の民族郷土」建設を支援すると宣言した.イギリスは,その裏でパレスチナにも支援を約束するなど,非倫理的な外交を展開した.

  4. 「ピール・コミッション報告」が出されたのが1937年.イギリス政府が任命した調査団による報告で,パレスチナ分割を提案した.パレスチナ人の大規模な反乱が発生し,この報告書によりイギリスはそれまでの政策の失敗を認めざるを得なくなった.

  5. 国連総会でパレスチナ分割決議案が可決されたのが1947年.この決議を受けてイスラエルが建国されると,イスラエルはパレスチナ人とアラブ諸国に対して武力行使して,パレスチナの3/4以上を支配下に置いた.これ以降,国連による批判や勧告はすべて無視して,イスラエルはパレスチナに対する占領政策を続ける.

  6. イスラエルが戦争を仕掛けてパレスチナ全土を占領したのが1967年.

  7. イスラエルに右翼政権が誕生したのが1977年.武力によるパレスチナ占領推進を政策にかかげ,これ以降,強奪したパレスチナの土地にユダヤ人の住宅や農場,軍の駐屯地などの建設を進めた.

  8. 虐げられていたパレスチナ人が反旗を翻し,パレスチナ人による抗議運動「インティファーダ」が起こったのが1987年.翌1988年には,パレスチナ国民評議会が「パレスチナ国家独立宣言」を出した.

この地域に平和が訪れることを願うばかりだが,途方もなく難しそうだ.

© 2023 Manabu KANO.

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