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お勧めする勉強方法2:人に教える

私自身が実践してきて,良いと確信している勉強方法の2つ目は,「人に教える」という勉強方法だ.

自分の言葉で解説を書く」と「人に教える」は,非常に良い勉強方法だと思って実践してきた.テキスト等を読んで頷いていても本当に理解しているかは怪しいが,解説したり教えたりすれば誤魔化しは効かない.自分が何を理解していないかがわかるようになる.これが大切だ.

高校での勉強

高校3年生だったとき,放課後にグループで勉強していた時期がある.誰かがわからないところがあれば,別の誰かが説明するというスタイルのグループ勉強会だ.私も何度か説明したが,そのときに身を以て実感したのが,中途半端にしか理解していないことは教えられないということだった.

先生からは自分の勉強に専念した方が良いのではないかと助言もいただいたが,教えることの効果を実感していたので,引き籠もりはしなかった.

何かを教えるためには,その内容を十分に理解した上で,言語化しなければならない.理解できた気になっても,言語化した気になっても,それだけでは決して人に教えられない.自分自身の理解レベルを把握する上で,人に教えることほど有効な方法はないと思っている.なにしろ,教え方がダメなら,「わからない」と返してもらえる.

研究室での実践

対象は製造プロセスや医療など様々ではあるが,研究室では主にデータ解析に関連する研究に取り組んでいる.4月に新しく研究室に配属された学生に必要な知識を身に付けてもらうために,毎年4〜5月にデータ解析ゼミを実施している.

このデータ解析ゼミでは,学生数名にテーマ(データ解析手法)を与えて,勉強してもらった上で,講師として研究室の教員や学生を相手に解説してもらう.例えば,重回帰分析,主成分分析,線形判別分析などだ.続いて,機械学習の使い勝手の良い手法へと進む.

もちろん,講師役を務める学生には担当した手法を理解して使えるようになってもらわなければならないし,他の学生にも少なくともゼミで取り上げるような基礎的な手法は理解しておいてもらう必要がある.

しかし,学生にとって,このゼミの目的はデータ解析手法を理解することだけではない.理解することに加えて,
・勉強の仕方
・説明の仕方
・質疑応答の仕方
を身に付けることが求められる.

テキストを読んで理解したつもりになるくらいなら,一人で簡単にできるだろう.わざわざゼミで講師として説明してもらい,「は?そんなの当然でしょう.そんなことも知らないの?」と思うような質問を教員や先輩がするのはなぜか.ほんの少しでも説明に飛躍があれば,すぐに「そこ,わかりません」と説明を求めるのはなぜか.それは,自分が何を理解していて何を理解していないのかを,自分で把握できるようになるためである.当然の(ように思える)ことを質問されて答えられないのは,誤魔化していた証拠だ.理解していないのに,理解しているつもりになっていたからだ.説明に飛躍があるのに本人が気付いていないのは,論理的に考えられていない証拠だ.勉強が雑だからだ.まず,そういう中途半端にしか理解できていない状態に違和感を抱かない自分に気付く必要がある.そして,自分が何を理解していて何を理解していないのかを自分で把握できるようになる必要がある.そのための切っ掛けを与えるために,ゼミを実施している.ゼミでは先輩や教員が質問してくれるが,自問自答できるようになってもらいたい.

研究室配属されるまでの大学での勉強は,高校までの勉強と大差なかったかもしれない.しかし,研究に取り組むからには,テストで60点取れれば良かったときの勉強方法を捨て去る必要がある.完璧に理解しないと,正しく使えないし,さらに発展させることなどとてもできない.

誰かに教えるというのは非常に効果的な勉強方法だ.本を読んでわかったつもりになっていても,いざ人に説明しようとすると説明できないという経験がある人は多いだろう.理解していないことは人に説明できない.だから,データ解析ゼミでは学生に講師役を務めてもらう.生徒役の教員や学生が納得するような説明ができたなら,その内容について講師役の学生は理解できているとみなしていいだろう.加えて,上手に説明できる能力そのものも大切である.自分の研究成果を説明できないなら,誰もその研究成果を評価しない.自分が伝えたいことを正しく伝えられることは,仕事だけでなく,普段の生活でも大切である.

多くの学生にとって,そして研究者にとっても,修羅場になる危険性が高いのが質疑応答である.卒業研究発表会で,修士論文発表会で,あるいは学会で,ボコボコにされたという人もいるだろう.私もそういう現場を何度も目撃してきた.質問者の意図を正確に読み取り,簡潔かつ的確に答えるのは簡単なことではない.すぐにできるようになるものでもない.場数を踏む(質疑応答に慣れる)必要もある.データ解析ゼミで飛んでくる先輩や教員からの質問に必死に答えることで,徐々にではあっても,質疑応答にうまく対応できるようになるだろう.もちろん,本人が理解していないことは答えようがないわけで,優先順位を間違えてはならない.口先だけの人間にはならないようにしたい.

こういう狙いを秘めたゼミであることを理解して,さあ,今日もゼミやりましょうか.

© 2020 Manabu KANO.

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