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本の紹介・読書の記録

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#歴史

「14歳からのパレスチナ問題」でイスラエルとパレスチナの歴史を学ぶ

英仏がオスマントルコの領土を掠め取りたいために中東を勝手に切り裂いてイスラエル建国を認めたうえに,米が率先してイスラエルのやりたい放題を黙認しイスラエル非難の安保理決議はことごとく拒否権で潰して,国際社会はパレスチナの言い分や窮状を無視して今に至る,とすれば一体どうしろと.救いがない. 本書「14歳からのパレスチナ問題」では,14歳からのという枕詞に意味があるかは置いておくとして,副題「これだけは知っておきたいパレスチナ・イスラエルの120年」にあるように,パレスチナとイス

波瀾万丈な「物語 スコットランドの歴史」

イギリス(UK: The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)は,日本と同じ島国とは言え,民族が入り乱れての戦乱をずっと続けてきた国なので,随分と成り立ちが異なる.そのイギリスを構成する国々のひとつがスコットランドだ.本書はそのスコットランドの歴史,特にイングランドとの関係をコンパクトにまとめている. コンパクトにまとめているとは書いたが,人名を覚えるのが超苦手なので全然頭に入ってこない.王の名前も○○2

こんなときだから「物語 ウクライナの歴史」に学ぶ

偽情報が溢れる世界の中で何が正しいかを知りたければ,とりあえず歴史を知るくらいはしないといけない.プーチン大統領は2021年7月に発表した論文の中でロシアとウクライナ人は同じ民族だと主張したが,果たしてそうなのか.そもそもロシアとウクライナの関係はどのようなものなのか.これらを学ぶために,本書「物語 ウクライナの歴史」を読むことにした. 本書は,今回のロシアによるウクライナ侵攻の10年前に書かれたものだ.著者の黒川祐次氏は外務省にて駐ウクライナ大使と駐モルドバ大使を兼務した

「ローマ帝国衰亡史」が実に面白い

歴史から学ぶべきことは多い.しかし,面白くも何ともない歴史書を読むのは苦痛である.その点,歴史家エドワード・ギボンによる「ローマ帝国衰亡史」は,1776年に発売された古典でありながら,ウィンストン・チャーチル,ジャワハルラル・ネルー,アダム・スミスなどを魅了してきたと言われるだけだって,実に面白い. 本書の「はしがき」には次のように書かれている. その通りなのだが,既に手遅れになった感がある.もはや日本は先進国ではなく,発展終了国と成り果てた.凋落先進国と言えるかもしれな

「なぜ歴史を学ぶのか」に対する答えは?

「愚者は経験に学び,賢者は歴史に学ぶ」という言葉を聞くと,なるほどそうだなと思える.たとえ,ビスマルクはまったくそんなことを言っておらず,「自分の誤りを避けるため,他人の経験から学ぶのを好む」と言っただけだとしても... 嘘が拡散してしまうと手が付けられない.嘘が井戸端会議で閉じていた頃は良かったのかもしれないが,誰もがSNSで世界と繋がることができて,簡単に嘘を広められるようになった現代において,フェイクニュースは重大問題になっている. しかも,アメリカ合衆国大統領とい

137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史

楽しく読めた.実に面白い本だ.この本は小学校や中学校の副読本としてすべてのクラスに置いたらいいと思う.小学生だと漢字が読めないだろうけど,それでも置いたらいいと思う. 137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史 クリストファー・ロイド,文藝春秋,2012 本書の内容は歴史なので,ここで紹介するまでもないだろう.それよりも,著者であるクリストファー・ロイド氏がなぜこの本を書くことになったのかという経緯の方が興味深い.インタビュー記事「東京大空襲なんて初めて知りまし