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【怪異譚】足跡

 都内に住む味野さんに起こった話。

 ある日のこと、リビングで彼がくつろいでいると、スマホの着信音がいつもより大きな音で鳴った。
 スマホを見てみると、見知らぬ“荒井”なる者からLINEが送られてきていた。
 トーク画面を 開いてみてみると大きな足跡のイラストのスタンプが送られてきた。
 心当たりは無かったが、誰かの冗談だろうとその日はそのままにした。

 その次の日も“荒井”なるものからのLINE。
 開くと、やはり大きな足跡のスタンプ。
 それを見た味野さんは、「誰ですか?」と返信した。
 しかしすぐに既読になるも返信は帰ってこず。
 そのあと「迷惑です」と送ったがこれも返信なし。
 あきらめて、その日は終わり。

 次の日もやはり“荒井”なるものからメッセージ。
 前2日間とは違うのは味野さんは、そのメッセージを開けなかった
 すると2分後くらいに、また“荒井”なるものからメッセージ。
 それも無視すると、また2分後くらいに・・・
 あきらめて開くと、やはり大きな足跡のスタンプ。

 味野さんは、怖くなったというより、腹立たしい気分で”荒井”なるものをブロックした。
 ところが次の日も、やはり”荒井”なるものからメッセージ。
 無視すると、連続してメッセージが送られてくる。

 さすがに、これにはと怖くなり味野さんは、とうとうLINEのアプリを一端アンインストールすることにした。
 ところが、次の日も、いつの間にやらLINEが再インストールされ、”荒井”なるものからメッセージが。

 ホトホト困り果てた味野さんであったのだが、ある日を境に”荒井”なるもののメッセージが止まった。
 1日だけ、会社に自分のスマホを忘れた時があった。
 一晩、そのままにしておいたのだから、その着信数を想像するだけで、味野さんは身震いした。
 ところが、会社で確認してみると、他の者からのメールの着信はあったのだが、”荒井”なるものからは無し。
 その日を境に、”荒井”なるLINEのメッセージが止まったという。

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