【怪異譚】大予言ガム
私が子供の頃、というから40年ほど前、1980年代になるだろうか。
もう少なくはなっていたが、駄菓子屋というものが地域に一店舗くらいはあった。
駄菓子屋とある通り、通常では見ることが出来ないような安価な菓子や、玩具などが売られていた。
今でいうところのコンビニのようなものだが、もっとそれより子供達向けに開かれており、学校が終わると、家に帰ってすぐに駄菓子屋で友達と合流というパターンが多かった。
先にも書いたように、駄菓子屋の商品は、他の店では見ることが無いものも売っていた。
よく知られるところでは、粉っぽくて喉につまる麩菓子や「ワタナベのジュースの素」などの粉末ジュース、なにがモロッコなのか、そもそもヨーグルトなのかすら怪しい「モロッコヨーグル」などがあるだろうか。
その中に「大予言ガム」というのがあった。
いや、これが正しい名前かどうかも、今となっては分からないのだが、とにかくそういう内容だ。
味は、普通のレモン味の板ガムなのだが、ガムの包み紙に、何やら予言めいたことが書かれていた。
当時は、まだノストラダムスの大予言の全盛期、超能力を特集した番組も多く、オカルト万歳の風潮が世間にあったから、そのような商品は少なくなかった。
また、ガムの包み紙に、一行知識や占いなどが書かれているのも多くあったと記憶している。
ただ、私の記憶にそのガムが残っているのは、あまりにも生々しい内容だったからだ。
店頭から、あっという間に無くなったので、3つくらいしか買わなかったが、その3つのうち一つがトラウマになるほど怖かった。これがあまりにも怖くて、買うのを止めたのだと思う。
「生首が学校の前に置かれる」
この語と共に、切断された生首が学校の校門の前に転がっているリアルな絵が描かれていた。
あとの二つが「電車が毒ガス部屋になる」と「芋虫を食べて元気になる」だったろうか。
どちらもリアルなイラスト付きだった。
そのガムの存在はしばらく忘れていたのだが、一つの事件がキッカケで思い出した。
それが1995年に起こったオウム真理教による地下鉄サリン事件だ。
「電車が毒ガス部屋になる」という書かれた内容、そのままのことが起こったのだ。
さらに2年後の1997年の神戸連続児童殺傷事件においては、殺された子供の頭部が学校前に置かれていたという。
「生首が学校の前に置かれる」
やはり同じことが起こっていた。
一つならまだしも二つとなると、偶然では無いだろう。
まだインターネットなるものが普及し始めたばかりではあったが、私は「大予言ガム」について調べたが、情報はまるで出てこなかった。
もちろん、現在でも手がかりすらない。
あのガムは、本当にあったのだろうか?
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