宗教法人が行う 社会貢献活動について
文化庁が、宗教法人の社会貢献活動に関する考え方を、公益財団法人日本宗教連盟および都道府県宗教法人事務担当課宛てに発出しました(令和3年1月25日)。
文化庁「宗教法人が行う社会貢献活動について(情報提供)」https://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/
https://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/pdf/92805001_01.pdf
日本宗教連盟からの働きかけへの応答です。本文書の冒頭に以下のように記載されています。
「近年、多くの宗教法人が、全国的に自然災害が発生する中で地域の防災・復興に協力をされるなど、災害対策や地域支援などの社会貢献活動を行われていると承知しています。
従来、このような活動の多くは、宗教法人法第6条に規定する公益事業として各法人で整理されてきたものと思われますが、このたび、日本宗教連盟から、このような活動と宗教活動の関係について問い合わせがあったため、宗教学に関する学識有識者の意見等も踏まえ、下記のとおり、考え方等を整理しましたので、情報提供させていただきます。」
ポイントは以下。
「公益事業として行われている社会貢献活動も各宗教法人の判断に基づき
宗教活動と整理することが可能と考えられる。」
「社会貢献活動が宗教活動に該当するか否かについては、教義または教義を
具体化した文書等(教憲等)に基づき、各宗教法人の判断によるものとされることから、各宗教法人におかれては、根拠等を確認しておくことが望まれる。」
「社会貢献活動を宗教活動と整理するにあたっては、地域社会の宗教活動へ
のニーズをはじめとした社会通念を踏まえることが重要と考えられる。」
さらに本文書の以下の部分も重要です。
「境内建物、境内地であって同時に公益事業を行うためにも用いられるも
のは、境内建物、境内地として処理してさしつかえないこと」
たとえば、境内に社会貢献として防災倉庫などを設置したとしても、その土地分から固定資産税を課税されることはないということが、本文書で明確になりました。社会貢献に取り組んだために、逆に本来非課税の土地に課税されるのではないかという心配がなくなりました。
本件は私も宗教者の方々からうかがっており、文化庁宗務課に呼ばれて以下で話すことがありました。
・稲場圭信(2019)「防災の取り組みと災害時における行政と宗教界の連携」、『文化庁 宗教法人と行政機関の連携に関する調査研究』、pp.57-70
少しずつ状況は変わってきています。東日本大震災の被災地、避難所となった寺院などはボーイスカウトなどの活動拠点になっているところもありました。境内を使用する場合もあり、それがどこまで宗教法人が行っているものであるか、共催ではなく、NPOが単独主催の場合には適当でないと判断される可能性は残ります。事例をもとに、この点は継続して検討する必要があると思います。
しかし、今回の文化庁の文書は、全体として宗教の社会貢献活動を後押しするものです。宗教者の皆様の継続した活動により、宗教法人が地域社会のニーズに応じて(対信者のみならず)社会的力になることが文書として明示されたことは大変意義あることです。宗教法人の宗教上の特性の尊重や不干渉(宗教法人法第84条・85条)を基本に、宗教法人と行政や社会福祉協議会、民間組織、市民との連携の輪がますます広がっていくと考えています。とりわけ、避難所不足の今、地域のニーズに対応しながら防災・災害支援において協力体制の構築、協働実践が進むことでしょう。大きな前進です。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?