【徹底解説】地方・中小病院がTikTokとInstagramを活用して人材採用&採用コスト削減に成功する方法(事例あり)
本記事では、多くの医療機関が抱える「人材採用の課題」を解決するために、TikTokやそのほかのSNSをどう活用して、どのような結果が得られるのか、実際の成功実例も交えて解説していきたいと思います。
マーケティング知識やSNSに関する知見がまだ無い方に向けて、出来るだけわかりやすく、基礎的な情報を記載しております。特に人材採用に悩む医療関係者の方々のご参考になれば幸いです。
長文ではありますが、最後まで読んで頂ければ、SNS採用はもちろん、病院が出来る広報活動についての理解が10倍以上深まることをお約束します。
1.はじめに(弊社について)
最初に弊社の自己紹介を簡単にさせて頂きます。弊社、合同会社ディーパスは主に中小・地方病院や調剤薬局といった医療機関を中心に、採用支援事業を展開しています。具体的には、採用戦略の立案、SNSの運用代行、Webサイト制作、合同説明会の主催と、Webからリアルなイベントに至るまで、総合的なサポートを提供しております。
弊社のSNS運用実績
※一部をご紹介します
■札幌徳洲会病院 様(北海道)
※運用期間:2023年12月~
運用1年目から100万再生越えの動画を4本出しており、動画1本あたり平均再生数も30万回以上と、国内全体の法人アカウントと比べても、非常に高い数値を出しています。運用開始後、数か月で複数名の看護師の中途採用にも成功。北海道ならではの方言コンテンツやバラエティ豊かな職員様たちが特徴です。北海道医療新聞にも、TikTok活用による成果が記事として掲載されました。
■古河総合病院 様(茨城県)
※運用期間:2023年5月~
平均再生数は15万回以上。子育て世代が7割以上在籍している強みを活かし、ベテラン看護師を中心に、パパママナースが共感するネタ、再現動画、制服紹介等を発信。現在はリハビリ科や薬剤部も参加しており、病院全体の広報媒体として伸び続けています。Instagramの運用も並行して行っており、TikTokとInstagram(リール)の合計リーチは1カ月で80~100万を維持し続けており、SNSからの自己応募による問合せも毎月発生しています。
いずれの病院様も、アカウントのコンセプト設計からはじまり、企画・撮影・編集・投稿・レポートまでを全てお任せ頂いております。
実際に中途採用にも成功しているため、次項からはそれらの事例も踏まえて、具体的に病院がどのようにSNSを活用していけば良いかを解説してまいります。
2.医療機関の採用課題とは?
採用コストが非常に高い
まず、多くの医療機関(病院、クリニック、調剤薬局、ドラッグストア等)は、人材採用において同様の課題を抱えています。それは、「人材採用にかけるコストが高すぎる」という点です。
医師、看護師、薬剤師をはじめとする医療人材の採用には、1人あたり数十万~数百万円の採用コストが発生しています。
これはいわゆる外部業者(人材紹介会社、派遣会社、求人広告、大手主催の合同説明会への出展費用等)へ支払っている費用になりますが、中には1年間の合計で数千万円~数億円の採用コストを支払っている法人もあります。これは一般業界と比べて非常に高いコストであり、年間の合計額で見た時の数字は目を見張るものがあります。
なぜ多くの医療機関は、こんなにも多額の採用コストを支払っているのか?
その理由は「年収が高い職種だから」というのもありますが、もっと根本的なところで言えば、「外部業者を頼らなければ人材採用が出来ない」ということが言えると思います。現状、医療機関が人材採用をするためには、一般的には下記の方法を選択します。
■新卒採用
・学生の実習、インターン受入
・大学や専門学校への出張ガイダンス
・大手主催の合同説明会への出展
・大手広告媒体への求人広告出稿
■既卒・経験者採用
・人材紹介会社(転職エージェント)
・人材派遣会社
・大手広告媒体への求人広告出稿
これら以外にも方法はあるのですが、基本的には選択できる手段が極端に限られてしまっているという状況です。さらに地方病院や中小の薬局は、ここに書かれている手段を使っていても、比較検討の土台に上がらなかったり、大手の中に埋もれてしまって、必要な人材を獲得出来ないというケースが多々あります。
なぜ、多くの医療機関は、これらの外部企業に頼るという選択しか出来ないのでしょうか?
その根本的な原因はずばり、
「自分たちで発信力・影響力のあるメディア(媒体)を持てていないから」
これに尽きると思っています。
発信力のある媒体があれば、自力で認知度を高めて人材採用が出来るので、中間コストを抑え、コストダウンに繋げることが出来ます。
では、なぜこれだけ様々なメディアやSNSが発達した時代、未だに多くの医療機関が、発信力のある媒体を持てていないのでしょうか?
一般業界との考え方の違い
一つ目の理由としては、一般企業との考え方の違いがあります。具体的に言うとすれば、それは「広告宣伝に対する考え方」です。
一般的な企業であれば、企業規模や予算の大小に関わらず、あらゆるマーケティング活動を通して自社の売上UPや人材採用に繋げることが当たり前となっていますが、多くの医療機関ではマーケティングに対する意識があまり高くありません。
病院の年間販管費の内訳を見るとわかるのですが、例えば月に数億円以上も売上がある医療機関でも、広告宣伝費は年に数十万円程度、しかし人材採用にかけている費用は年間に数千万円以上、というケースが多くあります。
これは「そこに構えていれば人が来る」という医療機関の特性も関係しています。病気やケガが無くなることはないので、地域に医療機関があれば、基本的に患者さんは来ます。つまり、その地域に在るだけで人が集まるので、自ら積極的に世の中の人に知ってもらおうとする行動自体をとる必要がないというのがベースにあるのです。
※独立型の自費・保険診療クリニック等は除く
これが医療機関が広告宣伝に予算を割いていない理由の一つだと言えます。
広告宣伝よりも、まず医療機関として優先すべきは、人員体制を整えることです。病院であれば医師や看護師、コメディカルが、調剤薬局であれば主に薬剤師が、医療機関を運営していく上で優先度が非常に高い人材になります。
それらの働く人たちが不足していては、病床も増やせず、結果的に医療機関として経営が傾く結果にも成りかねません。「安定した地域医療を提供する」という本来の義務が果たせないことにも繋がってしまいます。
そのような理由から、医療機関としては最優先すべき項目が人材の確保になるため、そこに大きく予算を割く(広告宣伝費<人材採用費)という流れになっています。
組織としての特性
自分たちで発信力をつけるのが難しい2つ目の大きな理由として挙げられるのは、組織としての特性です。そしてそれは、2つに分ける事が出来ます。
①広報活動に労力を割けない or 割かない
これは職員の協力体制がない、リスク意識が強い、広報活動の優先度が低い等です。
例えば・・・
「通常業務が忙しくて広報活動なんてやってられない」
「あまり突飛なことをやって業界内で目立ちたくない、叩かれたくない」
「そもそも認知を増やす必要ある?」
これらは現場で働く医療従事者の皆さんの立場からすると非常にもっともな意見であり、医療業界のあるあるとも言えます。また、上層部の方々が広報活動に対する意識の優先度が低いというケースもあります。
②専門人材の不足
マーケティングの知識や実務スキルを持った人材が不足している
Webサイト、SNS、紙媒体からMEOまで、医療機関が集患と採用で活用できるツールは様々存在していますが、それらをどのように使いこなせば良いのか、どのように効果的に運用していけば成果が出るのか、という部分まで知識を持って実行できる人材が在籍していない、あるいは獲得出来ないということも一つの理由になっています。
【よくある例】
・現場の看護師や事務職の広報担当が兼任でSNSを運用しているが全く成果が出ていない
・Webサイトを制作したはいいが、作っただけで終わってしまい、運用できていない
・広報部を設けて様々な発信をしてはいるが、課題解決できるほどの成果は出せていない ・・・etc.
しかし、これらの理由があったとしても、現状のやり方のままでは高いコストをかけ続けなくてはならず、根本的な課題解決には至りません。場合によっては今よりも状態が悪くなる可能性の方が高いと言えます。つまり、どこかで新しいチャレンジをしなくてはならないのです。
3.課題解決の考え方
これらの課題を解決するにはやはり「自ら発信力をつけること」しか方法はありません。
発信力のある媒体を持つことで、自ら不特定多数の人々に認知を広めることができ、かつ自力で求職者に直接アプローチも出来るようになれば、中間コストを払う必要もなくなります。つまり、コスト削減に繋げることが出来るのです。
中には「うちは立地も地方だし、都会と比べると給与や労働条件が…」という物理的な理由で、情報発信をしても直接採用が難しいのでは?と思われる医療機関もあるかもしれません。
しかし、これまで何も知名度を上げるための施策をしていなかったのであれば、少なくとも発信力を持つことで認知を広げ、"選択肢の中に入る"ことは出来ます。いきなり成果が出なかったとしても、求職者の方々が一度でも「見たことがある」という状態を作れれば、間接的な成果として、求人媒体や説明会に出た時に、目に留まらせる(=着席率を上げる)ということも出来るのです。
そのためには専門知識を持った人材を登用する、または外部の協力者を頼るというように、まずは体制づくりに力を入れる必要があります。その地固めが出来た上で初めて、外に向けた情報発信がスタート出来ると言っても過言ではありません。
4.病院が出来る情報発信の方法
ここからは実際にどんな方法を用いて発信力をつけるのかを説明していきます。(※今回はあくまで保険診療の病院の場合に限ります)
まず病院が出来る情報発信の方法・ツールはいくつかありますが、これらを考える上で大事なのは、それが「何のために・どこの誰に・どんな情報を・どんな手段で届けるのか?」という点がしっかりと定まっていることです。
※前談が長くて恐縮ですが、先にこの話を聞いて頂くことで、よりSNSについての理解が深まりますので、宜しければ一読ください。
情報発信をする前に考えること
Q.何のために?
そもそも病院が情報発信をする目的とは何でしょうか?
それは結論、病院経営を安定させるためです。
病院の経営を安定させるには、患者数の増加と、それに対応できるだけの人材を充分に確保することが重要です。つまり、「集患」と「採用」こそが根幹になります。
集患も採用も、最初は「知ってもらう」ことからスタートします。
つまり、病院が「何のために情報発信をするのか=集患と採用」ということになります。
Q.どこの誰に?
次に考えるべきなのはどこの誰に情報を届けるのか?です。それは集患であれば患者であり、採用であれば医師や看護師、コメディカルの資格を持つ新卒・既卒者になります。さらに言えば、その中でも病院近隣の地域の方々なのか、はたまた全国に発信するのかで手段は変わってきます。
自分たちが発信する内容は一体誰に見てほしいのか、誰のための情報なのかを決めることから情報発信はスタートしていきます。
Q.どんな情報を?
集患であれば、病院としての様々な取り組み(新情報、地域イベント、新しい職員の情報、感染症や季節性アレルギー対策、医療機器の紹介、栄養レシピ等、新規開設の診療科等)について発信します。主に患者向けの情報を取扱います。
採用であれば、労働条件や経験出来る職務、キャリアプラン、職員インタビュー、研修会や見学会の様子、職員イベント等の様子等、が発信できます。
ここで言いたいことは、この内容は集患のために発信しているのか、採用のために発信しているのか?ということを常に考えて(立ち返って)発信していく必要があるということです。
ここを混在してしまうと、発信する情報にブレが出てきてしまい、思ったような効果に結びつかないということが起きます。
Q.どんな手段で?
ではここで具体的に病院が出来る情報発信の方法・ツールについて解説していきます。(※広告手法は省きます)
①ホームページ
・概要 :病院に関する情報が網羅されているプラットフォーム
・何のために? :集患・採用・業者対応
・どこの誰に? :患者、求職者、提携医療機関、業者等
・どんな情報を?:病院に関するあらゆる情報
②広報誌
・概要 :医療機関の様々な取り組みを発信する紙媒体
・何のために? :集患
・どこの誰に? :来院患者、提携医療機関・施設の利用者とその家族
・どんな情報を?:新情報、地域イベント、新しい職員の情報、感染症や季節性アレルギー対策、医療機器の紹介、栄養レシピ等、新規開設の診療科等
③Google MAP
・概要 :Googleの地図検索結果に病院を表示させるツール
・何のために? :新規集患
・どこの誰に? :近隣地域の患者
・どんな情報を?:新情報、口コミへの返信(姿勢)
④採用HP/LP(ランディングページ)
・概要 :自院の採用情報が網羅されている専用Webサイト
・なんのために?:人材採用(リストの獲得)
・どこの誰に? :求職者
・どんな情報を?:働く職員の人柄、職場の雰囲気が魅力的に伝わる内容、職務内容、条件面(給与、待遇、労働条件等)、その他数字で語れる情報
⑤SNS/動画メディア
・概要 :幅広い世代が情報を取得するための交流ツール
・なんのために?:採用(新卒・中途)
・どこの誰に? :地域ないしは全国の求職者
・どんな情報を?:労働条件や経験出来る職務、キャリアプラン、職員インタビュー、研修会や見学会の様子、職員イベント等の様子、エンタメ等
⑥メディアプロモート
・概要 :TV、新聞、雑誌、専門紙、Webメディアの取材獲得
・何のために? :集患・採用・病院の権威付け
・どこの誰に? :TVディレクター、制作会社、記者、編集者、ライター等
・どんな情報を?:世の中の注目事との関連情報
※メディア知識、報道機関のキーパーソンとのパイプ作り、プレスリリース作成等の専門知識が必要なため、ハードルは高い
これらを組み合わせた全体像は、下記になります。
(今回は⑥のメディアプロモートは除きます)
各情報発信ツールの役割を理解し、総合的に組み合わせて病院へのアクセスを増やすことが必要です。
ここで気を付けなくてはならないことは、患者向けの情報に適する媒体と、適さない媒体があることです。要するに、集患向けに適した媒体で採用のことを発信する、あるいは採用に適した媒体で集患のことを発信するのはNGということです。これを間違えると、非常に効果が出しづらく、労力に見合った成果が出ずに、担当者が苦しむこととなってしまいます。
よくある例として、SNS(特にInstagram)やYouTubeを「集患」目的に更新している病院がとても多いように感じます。特にSNSはプライベートな時間や移動時間等、気軽に見れるシチュエーションで使われることが多いため、症例紹介や怪我や病気対策といった「悩み」に対してダイレクトに答える内容等は、そもそも求められていません。悩みがある方はそれこそ検索エンジンやGoogle MAP等で病名や症状を検索して、ダイレクトに解決方法を探しています。
反対に採用面では、様々な企業や団体がSNSを使っていることが認知されてきており、SNSの中で企業検索をしたり、SNSで知った企業のファンになった人たちが応募してきたり、といったことが当たり前に起きています。
つまり、ターゲットとなる人たちが、どんな用途でそのメディアを使っているのかを理解することが重要になります。
そのため、この考え方で言えば、図の上部のツール(広報誌、ホームページ、Google MAP)は「集患」のために、SNSや採用サイトは「採用」のためにというように、ハッキリと用途を使い分けることができます。
5.SNSは2種類に分かれる
病院がSNSを活用する場合は「採用用途」に特化する、ということを踏まえた上で、それぞれのサービスの特性を理解しておくことも重要です。
まず現状、国内で著名なSNSサービスを整理すると、下記になると思います。
・Instagram
・TikTok
・YouTube
・Facebook
・LINE
・X(旧Twitter)
これらを使う際に注意したいのは、何となく知っているから、他の病院がやっているからという理由だけで手をつけないことです。SNSの中でも各サービスごとに特徴・特性が分かれており、それらを理解して使い分ける必要があります。
※以下はあくまで病院が「採用目的」で運用する場合のロジックになります
①教育のためのSNS
・Instagram(フィード投稿のみの場合)
・YouTube
・Facebook
・LINE
これらはプラットフォームの特性上、自力運用のみでは拡散のハードルが高いという特徴を持っているため、まだ病院を知らない、または興味を持っていない人に向けたコンテンツを発信するというよりは、"既に病院を知ってくれている人"に対してより深い情報を発信するツールとなります。
ここでは病院の内部のこと(院内トピック、研修内容、働く人たちのインタビュー、病院のイベント事、採用イベントの告知)等、求職者からの理解を深めるための情報を発信します。
②拡散のためのSNS
・TikTok
・Instagram(リールも活用する場合)
・X(旧Twitter)
これらはプラットフォームの特性上、拡散しやすいという特徴を持っているため、"まだ病院を知らない人たち"に対して最初の認知をとることに適しているツールとなります。(CMや看板と同義)
ここでは、病院主体の真面目な内容を発信するというよりは、一般の人たちが興味を持つネタやエンタメ寄りの情報、またはお役立ち情報等、まず最初に興味を持ってもらうための情報を発信します。
ここで言えることはつまり、どれか一つに手を付けることが正解なのではなく、それぞれの目的や用途に合わせて、各SNSを上手く組み合わせて使うことで、最大限の効果を発揮するということです。
非常に前置きが長くなりましたが、次項から各SNSについて説明します。
6.TikTokについて
「医療機関の採用課題を解決する方法=発信力をつけること」と説明してきました。発信力をつけると認知度が上がります。認知度が上がると、自力で採用が出来たり、説明会や求人媒体で求職者の目に留まり、応募率のUPにも繋がります。つまり、まず取り組むべきは、「この病院を見たことがある」という状態を作ることです。その「見たことがある」を作るのに最適なツールが、TikTokとInstagramのリールです。
TikTokとは?
15秒~1分ほどの短い動画を作成・投稿できる短尺動画のプラットフォーム。日本国内のユーザー数は2,000万人以上で、SNSの中でも最も拡散性が高く、個人・法人含めて知名度を上げるのに最適なサービスです。
①幅広い年齢層が利用(平均年齢34歳)
Z世代がメインユーザーとして始まったTikTokも、今では10代~50代以上の方々も日々アクティブに利用するSNSに成長しており、ユーザーの平均年齢も34歳と言われる程、様々な世代に見られるプラットフォームになっています。つまり、新卒採用だけでなく、既卒・経験者採用にも充分に活用できるツールということになります。
参考
②企業の人材採用とも相性抜群
写真と文字だけのホームページと違い、ショート動画では働く職員の雰囲気や、職場の映像、実際に働いた時のイメージがしやすいという利点があります。また、企業風土や考え方についても事前に分かった上で応募に繋げることができるので、ミスマッチが起こりにくくなるというメリットもあります。実際にいくつもの企業がアンケートを集計した結果、TikTokで知った企業に応募した、印象が良かった、検討に寄与したという声も多く上がっています。企業側からの観点でも、実際にTikTokを始めてから応募数が上がった、採用単価が下がったという結果が出ています。
参考
③ありとあらゆる業種が参入中
医療、製造、建設、運送、学校、一次産業(農業、林業、漁業)等、一般企業~専門業種・職種に至るまで、非常に多くの企業が参入してきています。集客目的のところもあれば、採用目的のところもあり、今ではTikTokをやっていない企業は遅れていると言わざるを得ない状況になっています。
Instagramとの違い
現在、Instagramをやっているという病院は多いと思いますが、その上でさらにTikTokに取り組むためには、Instagramと何が違うのかを理解する必要があります。
SNSには教育のためのSNSと拡散のためのSNSがあると説明しました。
もう少し具体的な違いを言えば、プラットフォームとしての特性(アルゴリズム)ということになります。
上図の通り、Instagramはアカウント自体が評価の対象になります。投稿やストーリーズ、フォロワー数を積み上げ、その中で高いエンゲージメント(コメントやいいね等)を得られていることが重要になります。加えて、専門性の高いジャンルとしてアカウント自体の投稿内容を尖らせる続けることで、Instagramからの評価が上がり、おススメ欄(検索結果の上位)に表示されるようになるのです。
つまり、フォロワーとのコミュニケーションが重要視されるので、そういう意味ではより深くファンになってもらうことに適したツールであると言えます。反対に言えば、フォロワー外の人を集めるためには、非常に労力と時間がかかるという特徴も持っています。
専門性のある(学びになる、ファンが多い)情報を発信し続けることでInstagram内でもフォロワーを伸ばしていくことは出来ますが、いち病院の採用目的として運用するには少しハードルが高いと言わざるを得ないでしょう。
※今回はわかりやすくするためフィード投稿のみで運用した場合で説明しています。
ではTikTokはどのようなアルゴリズムなのか?
TikTokは、アカウントの評価自体はもちろんあるのですが、それよりも「動画単体」で評価されるという特徴を持っています。わかりやすく言えば、フォロワー0人でも1つ1つの動画が面白ければ、100万再生以上も見込めるということです。
TikTokはアカウントの運用歴に関わらず、1つの動画を投稿するとまず最低200~300名には動画が見られます。そこで再生維持率や視聴完了率が高かったり、コメント数が多い動画になると、TikTok側がその動画を有益な情報として評価し、おススメ欄に表示します。そこからさらに数百人、数千人、数万人に対して動画が拡散されていくことで、結果的に大きなバズが起きるのです。
これが「昨日まで無名の人間が、1日で有名人になれる」と言われるTikTokの拡散力であり、魅力と言える部分になります。逆に言えば、良くも悪くも評価軸がフラットなので、極端な話、例え10万人フォロワーがいたとしても、動画が面白くなければ再生数は伸びず、拡散されないというのもTikTokの面白いところになります。
【実際の事例】
このTikTokの特徴をわかりやすく体現している例として、弊社が実際に運用代行をさせて頂いている病院様のアカウントを一部、ご紹介します。
①古河総合病院様(茨城県)
23年5月にアカウント開設後、1つ目に投稿した動画が公開1日で30万再生を突破(24.7 現在は100万再生以上に到達)
→当時のフォロワーは0名
23年12月にアカウント開設後、2つ目に投稿した動画が公開1週間で100万再生を突破(24.7 現在は 140万再生以上に到達)
→当時のフォロワーは300名程度
上記の事例からもわかるように、これまで知名度の低かった病院でもTikTokをうまく活用することで、一気に認知を広げられることがお分かりになると思います。
どんな内容を発信すれば良いのか?
TikTokが認知度を上げることに寄与することはわかったけど、実際「どんな内容を発信すればいいの?」と思われる方も多いかと思います。
TikTokでは企業主体の真面目な内容では全く再生数が回らないため、一般の人たちや業界の人が興味を持つ or 共感するエンタメ寄りのネタを中心に発信していく必要があります。
ここで避けなくてはならないのは、「自分たちが発信したい内容を発信する」ことです。「うちはこんな研修制度がある」「うちにはこんな福利厚生がある」「うちはこんな素晴らしい環境がある」というような、自分たちがアピールしたい(自分たち主語の)内容をそのまま出すことは、TikTokではあまり好ましくありません。なぜならば、これらの情報は既に病院に興味を持ってくれている人や、病院を知っている人たちにとっては有益な情報かもしれませんが、まだ病院を知らない・興味を持っていないという方々にとっては、ノイズにしかならないからです。(すぐに画面をスワイプされてしまい、目に留まらない状況になってしまいます)
TikTokは他のSNSとくらべて、「能動的な検索」で使われるというよりは、家でリラックスしている時や移動の合間の暇つぶしの際に、おススメに出てきた動画を「受動的に見るメディア」なので、気軽なテンションで最後まで見れる動画が良いのです。そういう観点で言えば、やはりTikTokではエンタメ性が求められると言えます。
■TikTokで再生数が回りやすい内容
①役立つ情報
②ビジュアルの良い演者
③笑える系
④感動系
⑤恐怖系
⑥珍しい光景
→これらに共通することは、まず冒頭で惹きを作り、続きが気になって気づいたら最後まで見てしまっていた、という動画にすることです。本当に極端な話をすると、TikTokでやることはそれだけとも言えます。
目的は認知の獲得なので、まず目に留まること、そして継続して発信を続け、たくさんの人に覚えてもらうことを目指します。
TikTokと医療機関との相性は抜群!
実は医療機関はTikTokやInstagramのリール等、ショート動画との相性が非常に良いことがわかっています。TikTokで再生数が回りやすい内容(①~⑥)は前述しましたが、特に「⑥珍しい光景」の要素が強いのが医療現場なのです。
【TikTokと医療機関の相性が良い理由】
①一般人が見慣れない光景で珍しさがある
→病室、手術室、救急センター、各種医療機器、働く人たちの会話、そこで働く人たちのストーリー等
②白衣、ナース服、制服等が目を惹く
→同じことをやったとしても一般企業よりも印象に残りやすい
③マスクをするのが必然な環境
→素顔で出る時と比べて、演者のプライバシーが守れる
一般の人は、怪我や病気にならない限り医療機関に行くことはありません。
それはつまり、一般人からすると医療現場は「非日常」の場所であり、だからこそ表からは中々見れない光景に目を惹かれるのです。
動画に出たい人がいない場合は…?
しかしここで必ず出てくるのが、"演者をどうするか問題"です。
「TikTokをやってみたいけど、うちの病院は出たいという子がいない。」
「マスクをしているとはいえ、演者のプライバシーが心配。」
「職務の時間をあまり圧迫できない。」
このような問題がある場合はどうすれば良いのでしょうか?
結論から言えば…最初は「出れる人が出る。」
これに尽きます。
撮影現場の温度感は実際に編集した後の動画にも如実に表れます。
やらされている感やモチベーションが低い状態で撮影した映像は、どうしてもコンテンツとしての完成度は低くなり、見栄えも良くありません。
視聴者側もすぐにそれを感じとり、再生数が上がらない要因の一つになりますし、下手をすれば「無理やりやらされている」と捉えられ、炎上するリスクもあり得ます。そのため、まずは最低1人からでも良いので、積極的に取り組んで頂ける方をご用意頂くことが必要です。
極端な話、登場人物が0でも動画自体を作り上げることは可能なのですが、「採用」という結果に繋げるハードルは上がってしまいます。求職者側の気持ちになった時に、その病院の雰囲気や働く同僚、先輩、後輩たちのリアルな顔が見えれば、それだけでも安心材料になりますし、逆に見えなければ不安になります。せっかく文字・写真の何百倍もの情報量を伝えられる「動画」メディアを運用するのであれば、それを活用して、積極的に取り組むべきではないでしょうか。
もちろん、プライバシーの流出や職務時間の圧迫といった事態を回避するために、十二分に配慮した運用を行うことは必須になります。ただ、演者が1人でもいれば、出来る企画は無数にありますし、出来るだけ短い時間で撮影を終わらせるようにすることも出来ます。
※プライバシー保護についてはこの後の「8.リスクヘッジの方法」にて後述します。
7.出来るならInstagramも同時運用すべき!
ここまでTikTokについて話してきましたが、出来ればInstagramも同時に運用することが望ましいという点についても言及します。
前述の通り、プラットフォームとしての違いはあるものの、2024年夏頃より、リール動画のアルゴリズムがTikTokと近しくなったこともあり、Instagramでも充分に新規認知を獲得することが可能になりました。
そのため、TikTokで制作した動画を、Instagramのリールでも活用する*ことで、Instagram単体でも新規リーチやフォロワー増加を狙っていくことが出来ます。その上で、TikTokには無い「フィード投稿」を上手に活用し、病院主体の本当に伝えたい内容をしっかりと揃えることで、「認知→検討→応募」までの導線をつくることが出来るようになります。
*編集ソフトの利用規約や音楽の版権の違いがあるため、留意が必要です
フィード投稿に関しては既に取り組んでいらっしゃる病院も多いと思うので、どのような内容を投稿すべきかまでは今回は割愛させて頂きます。現在はCanva等の無料で使える編集サービス等も多いため、デザインの技術やセンスがそこまでなくても、クオリティの高い画像を作ることが可能なので、ここに関しては内製で取り組むことも可能だと思います。
ただ、前述した通り、何のために、誰に向けての情報なのか?だけはブらさず、求職者が欲しいと思う内容で統一して発信するという点だけ、押さえておくのが重要です。
8.内製で運用?外注すべき?
ここまでの話で、何をどうすれば良いのかについてはお分かりになれたかと思います。その上で考えなくてはいけないのは、これを内製でやるのか、専門業者に外注するのかという点です。
SNSアカウントの基本的な運用工程
➊リサーチ…常に流行のコンテンツをキャッチしていく
➋企画 …流行を捉えた上で企画を考える(×本数分)
➌撮影 …協力者を募る、実際に演じる・踊る・しゃべる
➍編集 …ユーザーの目を惹く・離脱を防ぐ動画のつくりで編集する
➎投稿 …アカウントにアップ
➏改善 …ユーザーの反応やコメントへの対応、改善策の策定・実行
上記はTikTok、Instagramでも同様の運用工程ですが、いざこれを病院の職員たちだけで行おうとすると、普段の職務がある中では、かなりハードルが高いと言わざるをえないかと思います。
トレンドのリサーチには時間がかかり、企画を考える時間、そして院内で演者を調整し、画角を考えた撮影、離脱(スワイプ)されないテクニックで編集する作業、データを見て改善する作業・・・と考えると、中々の工数になります。さらにその上でアカウントを大きく成長させ、採用に繋げるということまでを考えると、アルゴリズムの理解や他の媒体も組み合わせたマーケティング視点が必須であり、これらを踏まえた場合、未経験からいきなり成功することは難しいと思われます。
外注を行えば、少なくとも上記の作業のほとんどは丸投げ出来ますし、少なくとも立ち上げフェーズである最初の半年~1年は専門業者と共に並走し、アカウントを成長させるところまで任せることを推奨しています。
外注のメリット・デメリット
以下に外注するメリットとデメリットを整理します。
【メリット】
①常にトレンドを捉えた動画を企画できる
・普段から常にリサーチしており、トレンドを理解している
・これまでの運用実績を踏まえた成功パターンの知見がある
・自社でリサーチする手間が省ける(時間の省略)
②業務負担が少なくて済む
依頼主が協力するのは月1回の企画MTGと撮影のみ(内部調整含む)
※基本は全て丸投げでOKですが、企画の精査と内部調整だけ負担が発生します。
③フィルター機能
・運用会社が第三者の立場で炎上リスクのある企画・映像をフィルター
・変なコメントや誹謗中傷コメントは即削除対応
【デメリット】
①外注コストがかかる
自分たちで賄わない分、費用が発生する
②外注してもバズらない可能性もある
外注するからといって必ずバズるわけではない
※依頼主の協力体制や現場の理解があるだけで、出来る企画の幅・量・質が大きく変わるため、出せるクオリティや成果は何倍にも変動します。逆に言えば、良くも悪くも完全に丸投げにしてしまうと、的外れな企画や、現場感(リアルさ)のないネタになる可能性もあるため、一概にプロに任せているから上手くいく、とは言えないことはご理解頂く必要があります。
③業者の当たり外れがある
・汎用性のあるノウハウを保持していない業者もいる
・業界への理解・知見がない(的外れな提案や現場負担を度外視した進行)
・相場とかけ離れた費用感、または質に見合わない費用感
・安いだけでクオリティが低い、マーケティングの知識がない
外注する業者の見極め方(医療機関ver.)
特に医療機関が外注業者を選ぶ際の見極め方としては、医療業界のことを理解しているか?が最も重要になります。
医療広告規制への理解、医療現場への理解(職員の負担、関係性、職種ごとの特徴等)、求職者が就職先に求める条件、業界の暗黙の了解、NG発言や項目、触れてはいけない話題、病院の見え方を意識した内容を考えられるか等、一般業界との常識の違いを理解しているかです。これらを理解していない業者に頼んでしまった場合、院内での反発や、下手をすると業界内での反感をくらう可能性も考えられます。
そのため、料金や制作本数といった定量的な情報だけで業者を選ぶのではなく、医療業界のことを理解している、またはそこで実績のある会社かどうかを見極めることが最初のフィルターであり、最も大事なポイントになります。
9.リスクヘッジの方法
ここまでの話を踏まえた上で、やはり医療機関として気になるのはリスクの部分だと思われます。リスク項目に関しては様々なありますが、主には以下が考えられます。
①動画の内容が炎上してしまうリスク
②演者のプライバシーのリスク
③情報漏洩のリスク
④肖像権・版権のリスク
⑤プラットフォーム自体のリスク
これらについては、リスク項目に対する対策を運用開始前に準備しておくことで、事前にリスク回避を行うことが可能です。
具体的にはNG項目の設定、動画内容の確認フローの明確化、問題発生時のホウレンソウ→対応までのフロー確立、アカウントの管理体制等の内容を記した運用ガイドラインを作成したり、演者の方に書いて頂く同意書を用意する等で対策を行います。
※弊社では法人様ごとに異なる内容で作成しています
SNSは簡単に知名度を上げることができる分、それと同じくらい簡単に炎上する可能性もあるため、心配になる部分や不安に感じる部分は出来るだけ事前に話し合いを行い、取り決めておく必要があります。
10.最後に
最後までご覧頂きありがとうございました。
非常に長文かつ細かい内容でしたので、お疲れになった方も多いかと思いますが、ぜひブックマークをして頂き、何度も見直せるように保存、または院内や社内でシェア頂けると嬉しいです。
医療業界の採用課題は本当に長い間、何も変わっていません。
現状も人が採用できず困っていたり、余計なコストが発生し続けて、経営に打撃を受けている病院も多いかと思います。
ただ今の時代、SNSが普及し、世の中に対して自分たちを知ってもらうことは昔よりも容易になりました。正しい知識や運用方法を知り、実績のあるパートナーと組んで、病院全体で積極的に取り組むことが出来れば、現状を変えることは充分に可能です。
弊社がサポートさせて頂いているのは主に地方病院や中小規模の薬局経営会社です。人が採用できないことで地域医療に貢献できなくなってしまう、働く方々の労働環境が改善できずにいる、そんな悩みを抱えているところが多く見受けられます。
そんな状況の中で、医療業界で知見・経験のある弊社だからこそできることがあると思っていますし、実際に良い未来を実現するためのサポートをさせて頂きたいと思っています。
もし、少しでも興味を持って頂けた医療機関の関係者様、広報担当者様、人事担当者様、事務長様、看護部長様、院長様がいらっしゃれば、ぜひ一度、現状をお聞かせ頂ければと思います。無料でご相談・ご提案をさせて頂きますので、どうぞ遠慮なくお問合せください。
再度になりますが、ここまでご覧になって頂き、本当にありがとうございました。この記事が少しでも多く、医療業界の関係者様に届けば嬉しく思います。
合同会社ディーパス(https://d-pass.jp/)
代表社員 淺石大輝
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