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小説

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2022年3月の記事一覧

金剛

 男は死にかけていたが、その目には強い光があった。
 襤褸を身に纏い、骨に皮が乗っているだけのような四肢が隙間から覗いている。強い紫外線に曝されて肌は焼かれ、目の下には深い隈があった。
 生きているのが不思議なほどだった。死者が墓から蘇ったのか、そう思わせるほど色濃い死の影が男を縁取っている。
 周囲には目を刺す銀色が陽光を受けて煌めいていた。鉄錆、砂、そして銀色といった、赤茶の地面に突き立った無

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ゐ変

ゐ変

 眠気も飛ぶような妙な夜であった。
 私はふと目を覚ますと窓の外で猫が鳴く声がしたので床から抜け出し、肌寒さに毛をそそけ立てながら寝床の緞帳をめくり、窓を開いて宙に白い息を吐いた。
 満月の夜である。
 はるか先に超高層の楼閣を拝みながら窓枠に肘を置き、腕でその身体を抱え込んだ。
 ここに居を構えてからもう数年になる。始めは違和感を生じさせた天井と地を繋ぐ卒塔婆の群れや、赫色に明滅する遊乱燈も見慣

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