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2021年11月の記事一覧

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「だからさ、このままここにいてもいいんじゃない?って思って」
 ぼくはそうは思えない。
 彼女を前にしてぼくは熟考する。そして口を開いた。
「……君も、夢を見るよね」
「見るけど?」
「ぼくはね、夢が何層も重なることがあるんだ。どうしても起きなきゃいけない朝、夢を抜けてベッドから出る。けれども体が妙に重いし現実感がない。そこで再びこれが夢だって気づくんだ。そしてまた起きようとする。けれどもそれもま

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アイアンフィスト

アイアンフィスト

 やはり人体というのは破壊するに限る。
 それが闘争の結果なら尚更だ。
 そこは一見、コンクリートで塗り固められた、地上に剥き出しのモノリスを思わせる建築物であった。窓一つとしてなく、出入り口は分厚い鋼鉄の扉のみ。目出し窓が設けられたそれを叩き、門番を呼び出して人の目による認証の後、門扉が開かれる。中に踏み入れば誰でも、そこはおおよそ健全な活動が行われている場所ではないことを肌で察する。同時に膚を

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うっかり殺害!貴族転生!!

うっかり殺害!貴族転生!!

 生意気な貴族を殺したら遺族に恨まれ、司法局の執殺官に追われてネロウの都を散々に逃げ回った挙句、密航行者に依頼してドゥリムン川を渡って国境を抜けようと試みたところで裏切りに遭い、遂に命運尽きて年貢の納め時と相成った。
「つっても悪いのはあいつだろ」
 逮捕時に愚痴ったのはそんなセリフである。当然聞く耳を持たない執殺官は紫苑を司法局の暗い石牢に鎖で縛りつけた。
 そして遺族の意向いかんによっては拷問

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太陽神

太陽神

 超高高度。
 地球軌道上から落下した巨人──“巖武羅”〈太陽神〉は陽光のさざめく蒼天の中、積層する雲海に突入しようとしていた。
 巨人の腹の裡、コクピット内に風の音は響かない。硬い外甲に守られ、さんざめく日照炉の音以外は奇妙な静けさを保っていた。
 外気と相違ない景色が三百六十度広がる球体に一人の少年がいた。
 茶色の頭髪がその反抗心を表すように棘をもって上に突き出し、額は賢げに広く、口元には意

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シットメン

シットメン

「うんこマン参上!」
 うんこマンは叫びながらガラス窓を破壊し、ビルの内側に突入した。
 内部では黒服に機関銃を装備したテロリストたちが社員を人質にしていた。
「死ね!」
 うんこスプラッシュ!
 次元の裂け目より吐き出された茶色の粘体がテロリストの体に降り注ぐ。否、そのような生やさしいものではない。それは千本の針にも似た強烈な勢いで彼らの身体をズタズタに引き裂き、破壊し尽くしたのである。
「くっ

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