見出し画像

まつもととりんご音楽祭のこと。

画像1
画像2
画像3
画像4
画像5


「時間は何よりの資産だよ。大事に使いなさい。」


大学二年生の頃、よく行っていた飲み屋のカウンターにいた、くしゃくしゃ頭のおじさんに言われたことがある。


どこの誰かも知らずアルコールが回っていたのもあって、どうということもなく耳を通り過ぎていったはずの言葉が、後になってみると脳みそに居座り続けている事に気がつく。


時間を大事にする。なんとなく普遍的真理っぽくて、分かってはいるつもりだけど、それでもどうしたって僕たちは週末をNetflixで過ごしてしまう。そんな僕らはきっと人間らしくて最高なのだけど、たまには重い腰をあげて出かけて見ることも大切にしている。

画像6


 りんご音楽祭に行ってきた。もう1ヶ月も前の事になる。これまでいくつか音楽フェスには参加してきたけれど、初めて行くフェスと言うのはやはりワクワクするものでそれ用に服を新調してしまった。何にだって、言い訳が必要な時もある。


会場に入り、あまりの高さに足がすくむ橋を、手すりを掴みながら渡る。緑と屋台とステージと、お酒と空が広がっていて、今日が最高の1日になることを確信してしまう。チケットは完売らしくて、会場はとても賑やかだった。


画像7


 台湾やタイ、ベトナムなんかの東南アジアを旅行すれば必ず屋台に出会う。焼いているその匂いが目の前を通り過ぎていくのだから、これほどずるい商売はないと思う。屋台はきっと匂いを売っている。


 落とさないようにと首から下げた財布に手を伸ばして、香ばしく焼けたソーセージとビールを注文する。食べたいと地面に這いつくばって、お母さんにおねだりする事なく両手に最高を抱えることができるのだから、大人は最高だ。


画像8


 りんご音楽祭という名前のままに、りんごがたくさん売っていた。普段、りんごを持ってうろうろするなんてあまりしないから、歩きながらどう持てばいいのか分からない感じがして不思議で楽しい。


画像9
画像10
画像11


 会場には手をつながれた小さな子どもたちがたくさん来ていた。ある子は赤色のりんごみたいな帽子を被って、外でも動きやすいようにワンピースを来て芝生を駆け回っていた。ある子はお父さんの肩に乗って、ミツメを聞いていた。音楽を、空間を楽しむのに年齢制限はないのだ。


たくさんのアーティストを見て、移動して、カレーを食べて、りんごを食べて、芝生で休んでまた聴いて、まるで心をクリーニングに出したような、そんな感じだった。


夕日が落ちるのを見ながら聴いたミツメの「エスパー」や、夜の柔らかい風を感じながら聴いたKID FRESINOの「Fool me twice」を、僕はこれからもずっと聴き続けると思う。


飲み終えたビールのカップを持ちながら、音楽が好きで良かったと思った。
往復でチケットを買っていた駅までのバスに乗って松本駅まで帰る。なんて便利で快適なフェスなんだ。

画像12
画像13
画像14
画像15
画像16

 今回の旅は自宅から松本までの全行程を車で移動した(松本駅からりんご音楽祭まではバスを利用した)。


松本では右折が優先だとどこかで聞いたことがあって、いつもと違うルールに少し怯えていたけれど、その違いを特に意識することなく帰ってきてしまった。

画像17
画像18
画像19

 週末を使って松本にきて、土曜日はりんご音楽祭、日曜日は松本を観光することにした。日曜日のりんご音楽祭にも見たいアーティストはたくさんいたのだけど、人間どうしたって体が1つしかない。


パーマンみたいにもう1人の自分がいて、好きなことを2倍できたらいいななんて考えながら食べたホテルの朝食があまりにも美味しくて驚いた。マスカットが食べ放題だった。

画像20
画像21
画像22
画像23
画像24

 松本駅周辺はまちが整理されていて、空が広い。少し歩けばお城も見えるし、楽しそうなお店がたくさんある。


家族づれや、カップルや、カメラを持って歩き回っている僕のような人間にだって優しい街だった。うろうろ歩いていると寄ってみたいカレー屋さんがあったので、お店の名前をメモしておいた。 


もし自分が、暮らしやすい理想のまちを一から作ったとしたら、松本みたいになるのかもしれないなぁと思った。

画像25
画像26
画像27
画像28
画像29
画像30
画像31


 旅先でホテルにチェックインした後はいつも、この街をめいいっぱい楽しみたい気持ちと、ゆっくりしたい気持ちの戦いになる。


そんな時、ホテルから歩いてすぐの所に美味しいお店を見つけたりすると全部の問題が解決してしまう。


チェックインが終わったら、そのまま「美味しいお店を教えてください」なんて気軽に聞ければ、旅はまた少し最高になる。


画像32
画像33
画像34
画像35
画像36

 初めて行く街の美術館に行って、それがなぜか特別に自分の琴線に触れたりすることがある。草間彌生さんの作品をこんなに見ることができるなんて思っても見なかった。


自分の知っている誰かの事なんて、ただの側面でしかない事をひしひしと思い知った。そして、この旅のことを書き記すのが、1ヶ月も後になろうとは予想もしていなかった。


僕たちはいつだって、自分のことを誰よりも分かっている気になっているだけなのだ。今はただ、写真に映ったりんご色の水玉を見ながら、松本市の街並みを思い出している。

文:@dou_mura

執筆:2019/10/18


この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

いつもキレイにサポート頂きありがとうございます。