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新卒で入った会社を2週間で辞めた。#2

あらすじ
「そうだ、ドイツに行こう。」ふと思い立って、内定を辞退し、新卒でドイツ就職を目指すことになった私。無事にドイツの日系企業から内定をもらい、もろもろ手続きを済ませ、いざドイツへ。待ちに待ったドイツ就職、そこで私を待ち受けていたものとは......?

前回のエピソードはこちらから。

ドキドキの入社1日目、突きつけられた現実

ドイツに到着してからわずか2日後、入社日はやってきた。

家からオフィスまでは電車で30分。ドイツの電車は本当によく遅延するので、早め早めに家を出た。

オフィスに着いて、ロビーでしばらく待っていると、面接してくれたおじさんに声をかけられた。
この人が直属の上司になるらしい。

そこからまずは同僚へのご挨拶。準備してきた日本語とドイツ語の自己紹介を披露した。ぐだぐだだったけど、しょうがない。

その後、会議室に通され、オリエンテーションが始まった。

開始早々、上司が言った。
「申し訳ないんだけど、少し前に2人辞めちゃって、来週もう1人辞めるみたいなんだよね。大変だけど、頑張ろうねー。」

もともと経理・総務チームは5人でまわしていたらしい。そこから少し前に2人辞めて、来週にはもう1人辞める予定とのこと。
つまり、これからは上司のおじさん、未経験の私、ベテランお局さまの3人でやっていくと。
「え?それって大丈夫なの......?」と一瞬不安に思ったけど、その時はとりあえず笑顔で頷いておいた。

お昼はベテランお局さまからランチに誘ってもらい、近くのパン屋へ。
ベテランお局さまというと、一般的に「意地悪なお局さま」のイメージだが、とても親切なおばさまだった。

店内はとても混雑しており、注文する時に店員さんや後ろの人から「早くしろ」の視線がすごかった。
見た目が一番美味しそうなパンを選んだら、まさかの苦手なレーズンパン......(レーズン入りとは書いてなかったので、油断した)

午後からは上司のおじさん、前任者、私で引き継ぎミーティング。
前任者から引き継ぎ資料が渡され、業務の説明が始まった。

業務内容は細かく難しそうだったけど、前任者の方が丁寧に教えてくれたおかげで、ざっくりと内容は理解できた。
ただ、ところどころでおじさん上司が、

「あのさ、さっきから質問とか全然してないけど、ちゃんと理解できてる?来週からここら辺全部君の担当になるんだから、分からないところがないようにね。」

「俺語学は苦手だから、外部とのコミュニケーションはまるっとお願いねー。」

などと言ってきた。

なんだろう、この「俺しーらね!」と雑なパスをもらった感じ。
そもそも未経験可の求人だったのに、引き継ぎ資料を読み上げられただけで、全てを理解することなんてできない。
来週には前任者の方がいなくなって、1人でこの膨大な業務量をこなしていかなければならない、考えただけで鬱だ。

さらに、私の担当範囲には「会計監査」も含まれていた。

会計監査とは?と聞かれて分かりやすく説明できるほどの知識を持ち合わせていないため、
とりあえずやれと言われたことをまとめておく。

まず外部の監査法人とコミュニケーションをとりながら、必要書類(決算書はもちろん、会社の組織図や株主名簿、銀行の取引明細書など)を作成。
その後、年に2回、監査法人の担当者が来社し、作成した書類をチェック、書類の内容について都度質問されるので、その対応もすると。

これらを全て私1人でやれと言われた。

書類は全てドイツ語または英語だし、内容について聞かれても、入社間もない私が答えられるわけがない。しかもその担当者の訪問は5月末にあると......

うーん、完全におわった。

それでも、この時はポジティブマインドで「未経験なんだし、始めのうちは分からなくて当然。たくさん質問して、早く仕事できるようになろう!」と思えていた。

帰宅後、早速今日学んだことを復習して、初日を終えた。

辞めると決意するまで

月曜日、オフィスへの足取りは重かった。
週末一人で家で過ごしていたら、どんどん悪い方向に考えてしまって、ポジティブマインドもすっかり消滅した。

その日は午前中に前任者と実務を行い、午後からまた新しいことを詰め込まれた。次の日もその繰り返し。

徐々に作業に慣れてきた、と思っても、午後になればその倍以上の新しいことを教わり、追いつくのに必死だった。
毎朝毎晩、メモアプリに自分なりに業務の手順をまとめて、分からないところは次の日に質問し、すぐ解消するようにした。

しかし、ここで問題が発生。
なんと前任者の方が病気で寝込んでしまったのだ。水曜日からはほぼ連絡がとれず、仕事にならないほどだった。

前任者がいない間、分からないところを隣の席に座っているおじさん上司に質問してみた。
すると、

「え?言ってることが全く理解できない。ここはこうなんじゃないの?どうなの?じゃあここはこうでしょ?ちがうの?」

突然大声で詰められたので、思考が停止した。
私の質問の仕方が悪かったのかなと反省したけど、他の人にも同じように詰めるような言い方をしていた。

このおじさん上司、面接の時や普段の会話では愉快なおじさんだったのに、
仕事のことになると正論を振りかざし相手を追い詰める「ロジハラ上司」だったのだ。

また時に、おじさん上司から質問されることもあった。

おじ「(私の担当範囲について)ここってこういうこと?」

私「えと、そこはまだ実務でやったことがなくて......引き継ぎ資料だとこうなってますね。」

おじ「え?自分の担当範囲なのに分からないの?引き継ぎシートには引き継ぎ完了ってなってるけど?もういいや、じゃあ前任者に聞いておいて。」

私「......はい。」

ここら辺からおじさん上司と会話することが怖くなった。

会話しなくても、おじさん上司は「くそ、こいつ」だの「全然分かんねえな、ちっ」だの文句系ひとりごとが多く、その度に職場がピリついた。

もうおじさん上司が横に座っているだけで息が詰まる。
徐々にお腹も痛くなってきて、食欲もなくなってきた。

一応、自分でもネットやYouTubeで「ロジハラ上司 対処法」と検索したり、
おじさん上司と距離を取り、分からないことはやさしいベテランお局さまに聞いたり、
できることはやった。

ただ、どの対処法も結局おじさん上司を目の前にすると効かなくなってしまう。
やさしいベテランお局さまも元経理といえど今は総務の人なので、聞いても分からないことも多い。

常にビクビクしている私を見て、おじさん上司の私への当たりも強くなっていった。


......


もう限界だった。
一日に一回はトイレで泣いて、帰宅後親や彼氏に愚痴る毎日。

ついに前任者もいなくなり、状況はどんどん悪化した。

働き始めて1週間ちょっと。
帰りの駅のプラットフォームで考えた。

「もう辞めようか。でもただでさえ人手不足なのに、今辞めたら職場に迷惑かけるよな。親も、失望するだろうな。次の職場だって、こんな即辞めしたやつ、とってくれる人なんていないだろうし......」

「もう全てを投げ出して、死にたい。」と思った。
でも、死ぬほどの勇気は持ち合わせていなかった。

電車がきて、乗って、窓の外からドイツの街を眺める。
もはや何の感情もなくし、ズーンとしていると、なんだか一周回って全部どうでもよくなってきた。

変に楽観的になって、「人間いつか死ぬのに、わざわざ自分から死ぬ必要もないか」と思った。

職場に迷惑かけても、親に失望されても、転職できなくても、生きていれば意外となんとかなるものだ。

「よし、こんな会社とっとと辞めて、私は私の人生を生きる!」

そう思い、私はついに会社を辞める決意をした。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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