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文学論・文芸論・サブカルチャー論

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記事一覧

堀啓子『日本近代文学入門 12人の文豪と名作の真実』(中央公論新社、2019年)

主題…近代の文豪たちはどのように生き、何を考え、それをいかに文学作品に反映させたのか。日本文学の成立に影響を与えた文豪たちの生涯とその作品への理解を深める。

 1章では、「言文一致体」を大成させた三遊亭円朝と二葉亭四迷の生涯と作品についてまとめられている。
 「言文一致体」の着想を取り入れた表現をはじめて行ったのが、落語家の三遊亭円朝であるとされている。三遊亭円朝は近代落語を成立させた落語家とし

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佐々木敦『ニッポンの文学』(講談社、2016年)

主題…「文学」と呼ばれるものと、「小説」と呼ばれるもの、それらの具体的な相違は何なのか。また、SFやミステリー、ラノベなど多様なジャンル小説がある中で、それらと「文学」はいかなる関係にあるのか。これまで「小説」と呼ばれてきたものを「文学」と扱うことで、小説を含めた日本の文学の展開を辿る。

プロローグでは、「文学とは何か」という問いへの答えの検討がなされている。
佐々木氏は、「文学とは何か」

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『文学の読み方』/さやわか

主題…年に二度、芥川賞と直木賞が発表されるが、その評価基準は明確にされていない。そもそも「文学」を評価する基準自体が明確ではなく、そのことは文学が近寄りがたいものとして認識される原因にもなっている。「文学」を評価する基準とは何なのか、そして、いかなる心構えで文学に触れればよいのか考える。

1章では、村上春樹の作品をめぐる評価を通して、文学におけるものの見方についての説明がなされている。
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『日本がバカだから戦争に負けた 角川書店と教養の運命』/大塚英志

主題…角川書店の創業者角川源義氏は、角川文庫の創刊の際に、日本の敗戦を「教養」の乏しさに見出していた。こうした理念の下にある角川は、その後、「教養」をどのように捉え、出版を始めとする経営を展開してきたのか。歴代角川社長はいかに「教養」を変化させてきたのかを辿り、「教養」の現在を考察する。

第1部では、角川書店の創業開始から、三代目の角川歴彦に至るまでの、角川書店の経営と「教養」の変遷の流れに

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『ウルトラマンが泣いている 円谷プロの失敗』/円谷英明

主題…ウルトラマンシリーズを世に生み出した円谷プロ。ウルトラマンを生み出した円谷プロは、これまでいかなる経営をしてきたのか。また、なぜ「ウルトラマンが泣いている」なのか。円谷プロの栄華と失敗を辿る。

1章では、円谷プロの特撮技術へのこだわりや、「ウルトラマン」がヒットした経緯などが述べられている。
円谷氏によれば、円谷プロの原点は特撮技術への徹底的なこだわりにあったのだという。そうした特撮

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『お姫様とジェンダー アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』/若桑みどり

主題…シンデレラ・白雪姫・眠り姫など、世に広く知れ渡っている数多くの童話がある。これらの童話は、人々に夢を与えてきたとされているが、果たして本当にそうなのか。輝かしい物語をジェンダーの視点から紐解くことで、「お姫様」の物語の異なる側面を浮き彫りにする。

1章では、「ジェンダー」とは何か、そしてジェンダーを学ぶことはいかなる意義があるかについて論じられている。
若桑氏は、ここで「ジェンダー」

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『戦闘美少女の精神分析』/斎藤環

主題…セーラームーンやナウシカなど、日本のアニメやマンガには多くの「戦闘美少女」が登場する。海外の作品にも戦闘する女性は登場するが、海外の作品の女性は、日本のような可憐な少女ではなく、力強い女性として描かれている。ここで問題になるのが、なぜ日本においてのみ、可憐な少女としての「戦闘美少女」が描かれ、支持を集めているのかという点である。日本において「戦闘美少女」が形成され、消費されるようになった精神

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『日本文化の論点』/宇野常寛

主題…近年、「日本文化」としてとりわけ注目されるのアニメ、マンガ、アイドルなどのサブカルチャーである。日本のサブカルチャーはどうしてここまで注目され、期待が込められているのか。「日本文化」をめぐる論点に触れ、そこからの社会構想の可能性を検討する。

序章では日本文化が置かれている現状について論じられている。
宇野氏は、政治や経済など社会において表面的に現れる次元のことを「<昼の世界>」と名付け、他

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『教養としての<まんが・アニメ>』/大塚英志、ササキバラ・ゴウ


主題…日本のまんがやアニメは海外からも高い評価を受けており、一つの文化として確立している。そうしたまんがやアニメは、日本の戦後の社会の進展とともに成長してきたことになるが、まんがやアニメは戦後の日本社会に何を訴えかけ、そして読み手は何を受け取ってきたのか。戦後のまんが・アニメの展開を「教養」として紐解くことで、まんが・アニメが何に向き合ってきたかを考察する。

1章では戦後まんが史の原点になった

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『永遠のドストエフスキー 病いという才能』/中村健之介

主題…ロシア文学の巨塔として知られるドストエフスキー。彼の作品は、人間の「病い」を表現し、その「病い」という観点から人間の本質を巧みに描いたとされている。ドストエフスキーにおける「病い」に着目し、彼の著作の作風や理念に触れる。

1章ではドストエフスキーの作品に見られる「病い」の位置付けとその意図について論じられている。
中村氏によれば、ドストエフスキーは自身の作品の中で「病い」を丹念に描いてきた

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『キャラクター小説の作り方』/大塚英志

主題…近代文学などとは相反したジャンルとして取り上げられる「キャラクター小説」 しかし「キャラクター小説」と近代文学は連続的な関係にあり、かつ「キャラクター小説」の書き方や手法には可能性が秘められているのだという。「キャラクター小説」の書き方や「物語」が社会に対して持つ影響力など考察する。

1講では本書で扱う「キャラクター小説」とは何かについて説明がなされている。
大塚氏によれば、「キャラ

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『ストーリーメーカー 創作のための物語論』/大塚英志

主題…「物語」は「構造」において成り立つとされる。そのため、その「構造」に忠実に則ることで自動的に「物語」は生成されるということになる。本書では「物語」の「構造」をめぐる議論を踏まえ、自由な創作のための「物語」の生成過程を追体験する。

1章では物語の基本的な文法の1つである「行って帰る」というパターンについて説明がなされている。
大塚氏によれば、物語の基本文法として、主人公がこちら側から「

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