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HAMILTON

“Founding father without a father” (実父不在の建国の父)アレクサンダー・ハミルトンの半生を描いたミュージカル。

絵本「小さなお家」状態になっているVictoria Palace Theater にて。

スコットランド人の父とフランス系の母の間で、カリブ海の島に生まれた非摘出子だが、才覚を表し、ニューヨークに渡り、後の初代アメリカ大統領ワシントンに見初められ、独立戦争を支援した後、ワシントン大統領の元で初代財務長官を務める。ワシントンに愛され、信頼され、その後ろ盾で現在のアメリカ経済と政治の基盤を次々と構築していった… 半生が、ヒップホップにのせて紐解かれていく。

“Immigrants get their work done.” (移民はきっちり仕事をするぜ)という表現が途中で出てくるが、彼自身が究極のアメリカ移民だったんじゃないかしら。裸一貫でニューヨークに到着し、そこからどんどんのし上がり、独立戦争で軍を率いて、戦後は弁護士にもなっちゃった。

他にも財務長官時代、貨幣局を開設したり、戦争で必要となった国債をほぼ全て償還し、若いアメリカを無借金状態にして諸外国の信用を得て、経済大国への道筋を作った。この人、絶対宇宙人にちがい無い。

能力はあるが、主張も激しく、政敵も多かったらしいが、物語で登場する主だった政敵(3代大統領トーマス・ジェファーソン等々)との舌戦がラップ対決とか、かっこよすぎてふるふるした。

イギリス王ジョージ3世が、「ワシントンが大統領を辞した」というニュースを聞いて、「国のリーダーって、やめられるん?はぁ?」と述べた後、次の大統領がジョン・アダムスと聞いて、「ボコボコにしてやる」とニヤリと笑ったシーンも印象的。アメリカ独立時のてんやわんやを、アメリカ内部の視点からだけではなく、元宗主国の視点もちょいちょい挟み込んで描かれる。しかも、ジョージ3世、えせエルトン・ジョン風w

振り付けも舞台装置も、ひたすら素晴らしく、マトリックスとバレエとジャズとデスティニーズ・チャイルドと、あれこれるつぼに放り込んで、ぐつぐつ煮込んだらこうなりました、ってところまで、アメリカっぽい。

難点は、ほぼ全編高速ラップなので、情報量が多いこと。聞き取れなかった部分、かなり多いんじゃないかしら。聞き取りに集中しすぎるとダンスを楽しめなくなるので、途中から全体を見る方に意識を切り替えた。

隣に座っていた男性が、幕間に話しかけてきてくれた。今はオランダで仕事をしているアメリカ人で、このためにアイルランドに住んでいるお嬢さんとロンドンで待ち合わせて観劇に来た、という。

「今の大統領に辟易しているものだから、アメリカ建国の思想を再確認できて、とても嬉しい。」とおっしゃっていた。

昨今の移民政策と重ねたら、アメリカ人なら余計に思うところがあるだろう。

それにしても、アメリカ建国の父の物語が、大敗を喫して植民地を失った元宗主国で上演される、って感慨深い。

来年もまた観たい!!!!!

https://www.youtube.com/watch?v=0ECzlMYRKLg

今年のオリヴィエ賞の授賞式でのパフォーマンス。この曲は、ゆっくりな方w


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